「全農の株式会社化は認めない」-「令和ピボット」が政策で-2019年6月12日
いまネット上で静かに広がっている新しい政策プロジェクトがある。それは「平成政治からの決別を!」を掲げ、「反・緊縮財政」「反・グローバリズム」「反・構造改革」を基本方針とする「令和の政策ピボット」(令和ピボット)だ。その令和ピボットは、「全農の株式会社化は認めない」など「農協・漁協を守る」ことをその政策の一つとして提案している。
◆豊かさと安全を取り戻し繁栄する国へ
「令和ピボット」は、三橋貴明・経世論研究所長(※1)、藤井聡・京都大学教授(表現者クライテリオン編集長)(※2)、堤未果氏・国際ジャーナリスト(※3)の3人が20数人の呼びかけ人(※4)代表となり、このプロジェクトへの参加をネット上で呼び掛けている新しい形の政策集団(プロジェクト)だといえる。
呼びかけ文でもある「『令和ピボット』宣言」では、「振り返ってみれば、平成時代の日本国民は、長期のデフレーションに苦しめられ...歴代政権は、『国民が豊かに、安全に生きることを実現する』経世済民の精神を放棄し、緊縮財政と『小さな政府』という大方針に固執。特定ビジネスの利益拡大を目的とした構造改革やグローバリズム政策ばかり繰り返され、結果、国民の貧困化と格差の拡大を招き、国家の著しい衰退」へ進んだとの認識を示している。
そして新たな時代は「政府が経世済民の精神に立ち返り、『豊かさ』と『安全』を国民が取り戻し、繁栄する国家を将来世代に残さなくてはならない」。現在、「世界では、こうした認識が急速に各国で共有され、...それぞれの国民の事情に沿った『国民のための政策』への大転換が始まって」おり、日本でも「こうした世界の新しい潮流と連携しながら、平成政治から決別し、新しい政策への大転換を図る必要」がある。「新しい令和の時代が始まるこの機に、過剰な緊縮・グ口ーバリズム・改革が大きな弊害をもたらしている」ので、「反・緊縮財政」「反・グローバリズム」「反・構造改革」の三つの基本方針への政策転換を促す国民的な運動、「令和ピボット」を、「幅広く日本国民のあらゆる皆様に呼びかける」ことにとしたという。
ピボット(pivot) とは、回転の「軸」、あるいは「転換するJという意味。「令和ピボット」は、平成の緊縮・グローバル化・改革の政策体系からの大きな転換(ピボット)を目指す国民プロジヱクトだと位置づけている。
◆全農の株式会社化認めず、農協金融事業の代理店化禁止
「令和ピボット」は、上記のような基本目標に沿った具体的政策として、
1)財政・金融政策
2)経済政策
3)真・地方創生
4)食料安全保障
5)エネルギー安全保障
6)科学技術
7)外交・領土問題
を示し、「今後の国民的な議論を経て、一つ一つ実践的に改善していく」としている。
各政策はいずれも、非常に興味深い内容となっているが、ここでぜひとも取り上げたいのが「4)食料安全保障」だ。その全文は次の通り。
(1) 農協・漁協を守る:
日本の食料安全保障の根幹を担う全国農業協同組合連合会(全農)の株式会社化は認めません。また、農協の正組合員、准組合員の割合については各農協が地域の事情を踏まえた上で、決定するものとし、農林中金、JA共済という農協の金融事業については、代理店化を禁止し、総合農協の制度を維持するものとします。また、2018年の臨時国会で成立した漁業法の一部を改正する法律を廃止し、外資等の手から地域の漁業を守ります。
(2)食の安全:
種子法を復活させると同時に、種苗生産に関する都道府県の知見を外国企業も含めた民間事業者に提供させる農業競争力強化法の規定を削除します。さらには種子を含む生物特許制度を廃止し遺伝子組み換え食品やポストハーベスト、プレハーベストに関する表示義務を厳格化します。特に、外国からの輸入食品、農産物については、世界で最も厳しい安全基準を適用するものとします。
ここでは明確に、国の根幹であり国民の生命の糧である農業・漁業そして食品について、規制改革推進会議や政府が進めている「農協改革」や食料の安全性を軽視する諸施策と対峙する政策・姿勢が示されており、JAグループとしても無視できないものではないだろうか。
他の政策についても、今回は紹介できないが、いずれ機会を改めて検証していきたいと考えている。
「令和ピボット」の詳細は令和の政策ピボット 平成政治からの決別を!からアクセスできるので、他の政策も含めてぜひご自分でご確認いただきたい。
※1:三橋貴明氏は、 『亡国の農協改革』など著書が多数あり、全て統計データや歴史的事実、海外の事例等に基づく鋭い指摘で問題提起されている。また、経済部門のブログ閲覧数でも長年国内トップクラスの実績をもち、多くの人から信頼されている
※2:藤井聡氏は京都大学の都市工学専門の教授。災害対策等の観点から安倍政権の内閣官房参与をしていたが、安倍政権の新自由主義的施策を批判して昨年12月末で辞退した侍。
※3:堤未果氏は、『ルポ 貧困大国アメリカ』や『日本が売られる』などのベストセラーがある気鋭の国際ジャーナリストで、JAcom・農業協同組合新聞にもたびたびご登場いただいている。北海道や長野の厚生連病院の運営が協同組合的で世界に誇れるものであると絶賛。全国各地の農協からの講演依頼も多数あり、農協陣営にとって頼もしい味方だ。。
三氏ともそれぞれの立場から新自由主義やグローバリズムを鋭く批判し続けてきており、農業や食料、協同組合の重要性も訴え続けており、わが国の閉塞感に不満・批判をもつ多くの国民に根強い支持と大きな影響力をもった令和時代のキー・オピニオンリーダーである。そのため、与野党を問わず、国会議員の中にも信奉者が多数いる。
※4:呼びかけ人は現在、上記3氏のほかに20名余おり、農業・農協・食料にも詳しい東京大学大学院の鈴木宣弘教授も呼び掛け人に名を連ねている。
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