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【JA長野中央会・雨宮勇代表理事会長に聞く】営農継続の意欲支援を 泥の堆積50センチ2019年11月8日

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 政府は11月7日、台風19号など農林水産関係被害への支援対策を決めた。同日、決めたのは19号台風被害への追加対策で果樹農家への支援策や、水に浸かってしまった米への支援対策など(別掲記事参照)。今回の台風で千曲川の決壊によりリンゴ園などが大きな被害を受けたJA長野中央会の雨宮勇代表理事会長にインタビュー。雨宮会長は被害で農家が廃業しないような支援策の重要性を強調した。

泥に埋まった長野県の果樹園長野市内の泥で埋まった果樹園(写真はJA長野中央会提供)

◆未曾有の水害

雨宮会長 今回の災害は経験のない大変な被害です。過去に雪害などいろいろ災害がありましたが、水害では近年、未曾有の被害で100年に一度来るか来ないかという災害だと捉えています。
 長野県が10月末時点でまとめた被害額は総額1526億円で、農業関係では207億円、うち農産物の被害は15億円となっています。ただ、農道にも土砂が入っていてまだ圃場に行けない地域もたくさんありますから、これから調査に入れば増加する可能性も極めて高いということです。
 現状は、農家組合員のみなさんは家屋も相当被害を受けているため、まだまだ片付けなどが必要で、まずは生活インフラを改善していくことが中心になっており、樹園地で復旧作業に取りかかったという人たちはごくわずかです。本格的な農道整備もまだできませんから、農業の復旧はこれからということです。ただ、長野県は寒冷地で雪が降ったり凍ったりしますから、できれば早く取り掛かりたいところですが、なかなか農業復旧に着手できないというのが実態で、JAグループとしてはまず生活インフラを立て直せるのかどうかということを農家が判断することが最優先だということです。

(写真)雨宮会長

◆生活再建を最優先

 私も10月15日にJAグリーン長野とJAながのに災害見舞に行くとともに現地調査をしましたが、まずはJA共済の査定をいち早く対応する必要性を感じました。自宅が再建できるのかどうか、建て直しの費用があるのかどうかということを組合員がきちんと判断できるようにすることがJAグループとして最初の仕事だろうと考えたからです。そこで10月15日から県内JAの協力を得て25~30班を編成して査定に入りました。
 もう調査は最終段階に入っています。JA共済加入者の被害棟数は3796棟で、そのうち調査済みは3727棟となっています。さらにすでに共済金を支払った件数は11月5日現在で2532件、76億3000万円になっています。また、自動車共済も自分自身の車を保障する車両条項に加入していた被害台数は516台あり、そのうち288件、3億3000万円の共済金を支払っています。
 今回は本当にJAの共済査定員のみなさんが大変精力的に動いていただき、JA共済連長野県本部を中心に敏速な対応をしていただきました。このように敏速な対応によって100%ではなくても将来設計が見通せる安心感を組合員に届けることができたのではないかと思っています。

◆営農意欲維持へ支援

 これから農業の復旧・復興が課題ですが、土砂が50センチ以上、堆積をしたというのは過去の災害で経験がないとのことです。県にも土砂への技術的な対応をどうすればいいのか、要請しているところですが、県としても経験がないことです。農地から土砂を取り除いたとしても適当なところに置いておくわけにもいきませんし、土砂に何が入っているかも分かりません。
 こういう状況ですから、果樹の樹体維持をしていくために、少なくともどの程度の土砂を取り除けばいいのか、どの程度の期間で実施しなければならないのか、どういう範囲で取り除けばいいのかといったことが今は未定です。早急にどういうやり方で対応するか決めるために、技術的な問題の検討を県にお願いしています。
 それからここまで被害が大きいとなると、今の樹体を維持するだけではない復旧方法の選択もあります。たとえば新わい化栽培という方法もありますから、この際、こうした新たな取り組みを選択するという農家も出てくる可能性もあります。
 そういう意味で多くの農家の意見を聞きながら、地元のJAが中心となり営農再開を支援していくことになりますが、国や県など行政にはできる限り支援をいただき廃業に追い込まれないような取り組みをしてほしいということも要請しています。
 その点、今回は新わい化栽培などへの改植支援の特別対策も含めて国が復旧対策を決めたので、そうした対策をしっかり農家に情報伝達し、土砂を排除して来年以降も樹体を維持し再生産をめざすのか、あるいはこの際、改植をするのか、その場合、未収期間の支援策はどうなっているのかなど、生活の見通しも含めて農家に選択肢が理解されればいいと考えています。
 そうした農家の選択によって復旧・復興のやり方が変わるわけですし、それによってJAグループとしてたとえばボランティアで圃場の土砂の片付けに入るといった支援のスケジュールややり方も変わってきます。そういう状況にするために、早いうちに農家と地元のJAが話し合ったうえで、JAグループとして人的支援なり経営再建に向けた支援をしていきたいと考えています。
 長野県にはJAの経営を支援する経営共済の仕組みがありますが、今回は組合員の営農再建のために農協が直接支援をした支援金について、農協に対して経営共済の発動を考えております。
 また、JAの共同利用施設も相当被害を受けていますから、そこへの支援にも取り組んでいます。
 農家や被害に遭ったJAのみなさんの要請を聞きながら県中央会が事務局を務めて県下のJAに支援体制をどう広げていくかを考えていきたいと思います。

◆将来が見通せる復興へ

長野市内のライスセンター。水に浸かった米が発酵していたという。(写真はJA長野中央会提供) やはり地球温暖化のなかで海水温が上昇して気象が変化しており、これまでと台風の進路も変わってきていると思います。それで今まであまり自然災害の起きなかった地域で災害が発生しています。

 今回は水害で大きな被害が出ましたが、リンゴ産地の長野は風でも被害を受けます。昨年も風で被害が出ました。
 産地では、高齢者ががんばって産地を維持している地域と若手が将来に希望を持って生業としての果樹経営をするという農家と二極化しています。そのどちらも思いを持ってやってきました。
 しかし、今回の災害で高齢者にはもうこれ以上負担してまで復旧はできないという気持ちになっている人もいるでしょうし、若い人たちはこの地帯で将来、リンゴ作りを本当に継続していけるのかという非常に不安な気持ちでいると思います。
 将来的に営農が継続できるということが大事で、今回の災害で営農をやめるということがないようにできる限りのことをグループ全体として支援活動もしていこうと考えています。
 今回の被災に対しては全国連と各県の中央会を中心にお見舞いも含めてただちに対応をいただきJAグループとしての相互扶助の精神を本当にありがたく感じています。

(写真)長野市内のライスセンター。水に浸かった米が発酵していたという。(JA長野中央会提供)


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果樹改植や米浸水で支援営農再開を後押し-政府(19.11.08)

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