勝負の2月が始まった 緊急事態宣言1カ月延長【検証:菅政権10】2021年2月2日
政権にとって勝負の2月が始まった。首相の菅義偉にとって、新型コロナウイルス感染の行方は政権の浮沈そのものに直結する。きょう2日、緊急事態宣言の首都圏、関西圏の1カ月延長を決める。来年度予算案審議、五輪開催有無の決断も迫る。(敬称略)
発言する菅総理(写真:首相官邸HPより)
ミャンマー反乱の深刻度
国政の前に、国際情勢で今後深刻となりそうな緊急ニュースを読み解きたい。東南アジアの親日国・ミャンマーで軍クーデターが起き、国内民主化の旗手アウン・サン・スーチー国家顧問や与党幹部を拘束した。同国は旧名ビルマといえば親しみもわくだろう。
アジアの片隅の出来事にとどまらない。米中対立による国際構図の変化の間隙を突いた動きだからだ。米国バイデン政権はまだ移行中で迅速な対応が出来ない。軍は中国との関係も強い。国連安保理緊急会合も開かれたが、中国の主張で非公開となった。このまま軍事政権が居座れば、中国の影響力が強まる。国際社会で民主主義vs独裁の選択が問われる中での軍の暴発だ。
実は1月、笹川陽平・日本財団会長にインタビューし、同氏と親交が深いスーチー女史の話をしたばかりだった。笹川氏は現在、ミャンマー国家和解担当日本政府代表。つまり、直接同国と対話できる唯一の人物でもある。
菅政権と絡めれば、今回の軍クーデターへの反応の遅さだ。米国は軍政復活直後に経済制裁再開も示唆した。日本は遅れて「重大な懸念」との外相談話を出した。今後、軍と民衆との大規模衝突など同国の治安不安定化。さらには中国の影響力の強まりも予想される。アジアの大国として政権の具体的な外交力も問われる。
如月の政治の風はどうか
さて内政に戻ろう。旧暦2月に当たる如月。〈きさらぎ〉と読むが、初花月や仲春、雪消月の異名もある。古来日本の花鳥風月を愛でる風雅の中でも、特に重要な梅花と絡め重要な季節でもある。
冒頭、「勝負の2月が始まった」と書いた。年度末となる3月の前の月で、2月の国会論議の進展具合やコロナ感染動向で、3月の政治情勢がある程度見通せるからだ。切りのいい1日が月曜で始まる今週は、菅にとっても気を抜けない1週間となる。
〈こんなはずではなかった〉。菅のそんなぼやきが聞こえてくるようだ。ほんの4カ月半前の政権発足時9月16日のロケットスタート。支持率が高い中での早期解散・総選挙に打って出る。そんな党内の声を押し切り「政策の結果を出した上で国民の信を問う」と腰を据えた。2021年10月21日の衆院議員任期までまだ1年以上ある。解散の機会はいくつもある。じっきりチャンスを伺う。最短シナリオは3次補正予算案可決直後の解散、2月総選挙。コロナ感染拡大でそれどころでなくなった。
さて、如月の政治の風は政権にどう吹くのか。菅は2日、首都圏を中心とした緊急事態宣言の3月7日まで1カ月延長を決めて夜、国民向けの会見を行う。説得力ある説明が出来るのか。国会論議では、菅が言明した「2月7日までに感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせる」の責任問題も浮上する。
「寒の戻り」は「菅の戻り」か
勝負の2月は寒暖差も大きくなる時期だ。寒の戻りが〈菅の戻り〉ともなるのかどうか。むろんこの場合の〈戻り〉は世論調査の内閣支持率を指す。
この間の世論調査で、不支持が支持を軒並み上回ったのだ。政治の法則で不支持が支持率を10ポイント、二桁になると政権に〈黄色信号〉が灯るとされる。朝日は支持33%、不支持45%と12ポイントも上回った。
読者層が野党寄りの朝日は厳しめに出る傾向が強い。だが自民支持層が多い読売も二桁となった。コロナ対策への不満が不支持につながっている。今後、支持率の〈菅の戻り〉はあるのか。
政府・与党辞任ドミノ
菅にとって「勝負の2月」だが、出だしの1日から、政治不信を招きかねないつまずく結果となった。緊急事態宣言最中の「銀座の夜」問題で、与党議員で辞任ドミノに発展した。菅は怒り政権の一員、「夜の銀座」で同席した文科副大臣を更迭した。関連した自民議員3人は自民党を離党した。同じ問題で公明党は議員辞職という最も厳しい処分を行った。
菅は2日、緊急事態宣言延期の説明と共に、この辞任ドミノの関しても言及する。国会審議への影響を最小限にとどめるため離党などとなったが、政治不信は消えず政権の体力をさらに弱めかねない。山形県知事選をはじめ一連の地方選で自公の苦戦が目立ってきた。与党内では、衆院選への悪影響を懸念する声が一段と強まる可能性がある。
あす特措法改正
3日には特措法改正などコロナ関連法改正を迅速に対応する。そして今週後半以降はいよいよ2021年度予算案審議、「政治とカネ」など与野党激突の状況が激しさを増す。菅にとって「勝負の2月」は「政権弱体化の2月」にもなりかねない。綱渡りの政権運営が続く。
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