【2021 正念場 水田農業】インタビュー・農林水産省・平形雄策農産部長 主食用以外の定着を支援(下)2021年2月9日
主食用以外を水田に定着
--麦と大豆、高収益作物の取り組みでは何が求められますか。
各品目なりの流通に配慮しなければならない部分はありますが、麦も大豆も実需先がなく作りやすいものを作るというのが供給過剰になる典型的な例ですから、それは避けなければなりません。ですから、やはり実需と結びついて、よく相談して、そこで要求される品種の産地化に取り組んでいくというのが、いちばん肝の部分です。
やはり補正予算の「麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクト」事業では、作付けの団地化を進めます。農地の集積・集約は大きな政策課題ですが、利用権設定となるとすぐには進みません。そこで、作付けの団地化から取り組んでいただきたいと考えました。以前取り組んでいたブロックローテーションの復活などを視野に進めていただくのがポイントだと思っています。
団地の面積については、規模要件を一律に課すつもりはありません。土地の制約から小規模であっても、何年後までにこの程度の面積にまで団地化するという取り組みを評価したいと考えています。ですから、中山間地域でも今後、作付けの団地化やブロックローテーションを進めていこうというのであれば、活用を検討していただきたいと考えています。
このように、水田リノベーション事業や麦・大豆プロジェクト事業は、主食用米の需要減に対して、今後は主食用以外の作物を定着させていこうという産地を支援する対策です。需要が減少している主食用米以外の作物を定着化させていき、水田農業全体での経営の安定を実現していただくための対策として用意しているつもりです。
その点は、令和2年度から開始した水田活用交付金「水田農業高収益化推進助成」も同じ考え方です。今後、水田の畑地化も含め輸入野菜に対抗するような産地づくりを進めるため、県に高収益作物の推進計画を策定してもらい、基盤整備や機械・施設整備などの関連施策を集中して、産地化を支援するものです。来年度に向けて水田活用直接支払交付金の単価も引上げます。とにかく主食用米以外を定着させて産地化をしていく地域を支援したいという考えです。
飼料用米支援も見直し
--主食用以外の取り組みとして飼料用米がありますが、今回はどう支援策が見直されましたか。
飼料用米への支援は、収量により10a当たり5.5万円から10.5万円までの数量払いですが、たとえば台風や病害虫で収量がほとんどなかった場合、5.5万円は支払われますが、それだけではコスト割れを起こし、飼料用米を継続して生産することが難しいという指摘がありました。農業共済に加入して共済金が支払われたとしても、品代はキロ20円、30円ですから補てんされる水準ではありません。
そこで今回は、自然災害等で収量がとれなかった場合でも、それまで平年単収以上を収穫するなど、標準単収以上が確実だった人については10a当たり8万円の支払いをすることにしました。実績を見てきちんと取り組まれた方には交付水準を確保するということです。
また、産地で交付金をどう積むかも今回のポイントです。今回の見直しでは都道府県の役割をとても重視しています。産地交付金の県枠は令和元年度で1割、令和2年度で1.5割にしましたが、令和3年度は基本的には2割に拡大していただきます。
さらに、県の単独事業で作付け転換の拡大分に対して支援する場合には、国も10a5000円を上限に支払うという仕組みも創設しました。飼料用米の生産拡大が進まない理由のひとつに、自分の県の主食用米は取引価格の高い銘柄が多いから、国が示すような平均的な単価では十分でないという声があります。そこで、県が単独事業を用意して、主食用米と飼料用米等の所得差の補填をする取り組みをするのであれば、国も後押しするという趣旨です。
刻々と変わる需給
--今後の需給見通しはどのように考えていますか。
昨年の経験から、今回の対策見直し議論に反映したことがあります。昨今の米の需給というのは一度見通しをつくっても、特にこのコロナ禍のなかでは売り先も需要量も大きく変わるということでした。1年1作の米であっても、需要は刻々変わっていくものであって、それに生産や仕向けは合わせていかなければならないという現実に向き合いました。
ですから農水省が作成する需給見通しも早めに検討に着手し、需給状況が変わってきたら随時、指針の見直しをやっていくつもりです。それを国だけではなく、目安を作っている道府県であれば、目安自体の見直しも躊躇なく行っていただく必要があります。それが昨年から今年にかけての教訓だと思っています。
需給はどんどん変わるものであり、とくに今まで経験したことのない状況のなかでは誰も見通しが持てないということです。米であっても需給は刻々変わるものだという認識を持たなければなりませんし、それに合わせた作付けと販売対応が重要になるということです。
特に、今回の対策では、生産者団体等が水田活用交付金を生産者に代わって円滑に「代理受領」できるよう手続きを改正しました。生産者団体等が生産者と結ぶ出荷契約書の見直しと併せれば、主食用米から飼料用米、加工用米等への用途変更が容易になります。この仕組みをぜひ活用して刻々と変わる需給状況に応じた仕向けを進めていただきたいと考えています。
JAの経営アドバイスに期待
--正念場となる今年の取り組みでJAにどう期待しますか。
JAグループに期待していることは、2つあります。まず、農家の経営上の判断へのアドバイスです。これができるのはやはりJAのみなさんだと思います。経営分析できる生産者もおられますが、多くは米価水準で経営を考えがちです。10aあたりの所得を確保するために何を作るかが大事で、その点でJAは資材の調達から農産物の販路まで計算して提示できるという強みを持っていると思います。
もうひとつのJAのとても大切な機能は、やはり、集荷をした農産物をいかに実需先に売り込むかだと思っています。多くのチャネルを駆使し、実需との結び付くという点が、もっとも力が発揮される部分だと思っています。地元の農産物が最終的にどこに届いて、どう評価されているか、見届けてください。地域をまとめて結び付きのあるところに供給していく、まさにJAの本領が発揮されることを期待します。
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