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【2021正念場 水田農業】需給状況 危機感共有を――米在庫削減が最大の課題に JA全中 馬場利彦専務に聞く(1)2021年2月22日

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農水省の2021(令和3)年産米の主食用米の「需給見通し」(2020年11月5日)では全国の生産量は693万tだが、昨年12月時点の各県の生産の目安の合算では、昨年比▲5%以上が必要なところ、▲2%と削減目標を未達となっている。このままでは米価の大幅な下落が懸念され、関係者は危機感をもって作付け転換に取り組む必要がある。JA全中の馬場利彦専務理事はJAが現場の生産者に米の需給状況をしっかりと伝えるとともに、生産者の手取り向上のために交付金を含めた作付けのモデルを示すことなどが重要だと強調する。(聞き手:野沢聡)

JA全中 馬場利彦専務JA全中 馬場利彦専務

過剰なら自分が困る 在庫ふまえ目安設定

―-2021(令和3)年産では過去最大規模の作付け転換が求められています。こうした需給状況となった経過と現状について聞かせてください。

2020(令和2)年産米は、生産数量の目安作成の段階で、すでに適正とされた生産数量を達成しないものとなっていました。つまり、需要減に対して作付けを減らすということが目安を設定した段階から主産県中心にできていなかったということです。20年産米はそうした状況からスタートしたということです。

なぜこうなったのか。結局、みな売れると思って作っているわけですが、売れたかどうかの結果は常に在庫の増減として出てくるわけです。売れると思って作っても在庫が増えたということは売れ残ったということです。ですから、そもそも在庫を見ながら生産の目安を設定しているのか? ということが産地に問われると思います。

在庫が増加した分は新米で減らさない限り過剰になってしまう。ここ数年、目安を考えるときに、在庫を考えて設定するという作業になっていなかったということです。

たしかに2018(平成30)年産からは国による生産数量目標の配分はなくなりましたが、過剰になれば結局、自分たちが困る。在庫が積み上がっているのであれば、それを減らすための目標として目安を各県がそれぞれ設定すべきものであるし、そういう仕組みのはずです。

「目安」というものは法律からも行政の要領からもすでになくなっています。それでも各県が取り組んでいます。しかし、設定するのであれば通常よりも在庫が増えたか、減ったかということを見て、そのうえで需要を見極めて生産の目安を設定しなければならないと思います。売れ残る米は作らないという感度で作成しなければ意味がないと思います。

結局、在庫が積み上がるのは自己責任だという仕組みになっており、野上浩太郎農相が国会で「需給状況に応じて買い入れ数量を増減させるなど、国による需給操作や価格の下支えにつながるような運用は制度の趣旨に沿わない」と明言しています。

まさに売れる量だけ自己責任で作るということであり、高い価格で売ろうというような問題ではなくて、売れ残らない米づくりを本気で考えなければならないということです。

売れ残らぬ米作り

こう考えれば品種構成も違ってくると思います。事前契約を積み上げつつ家庭向けに高く売れるものもあるでしょうが、それだけではなく4割程度にまでなっている中食・外食向けの業務用にどれだけ作るか、あるいは飼料用米にどれだけ仕向けるかなど、いろいろなかたちで売れ残らない県産銘柄の米づくりということをやっていかなければならないのが、今の「配分」のない新たな対策のです。

20年産米の取り組みを振り返ると、このように最初からずれていたということに加えて、主産地は結果として豊作だったということになります。さらに需要はコロナ禍で減退しました。1年間に22万tも需要が減少したということになりましたが、そのうち9万tはコロナ禍の影響とされています。いずれにしても予期せぬ需要減です。つまり、主産地の作付け過剰と豊作、そしてコロナ禍による予期せぬ需要減というトリプルパンチに見舞われ、米は過剰状態になっているということです。

コロナ禍の影響や豊作について生産者の責任に帰するわけにはいきませんが、少なくとも作付けの目標は在庫減となるような計画と、作付けのあり方を稲作農業者全体で考えてもらう必要があると思います。

需給状況の共有を

―-2021(令和3)年産に向けた全体の取り組みはどのような状況でしょうか。

昨年末に各県で積み上げた目安をみると20万t減にしかなっていません。目標は36万t減、面積で6万7000haの作付け転換です。いずれも前年比5%減(平年作ベース)が目標ですが、今年も目安段階ですでにそれを達成できておらず、3%減にしかなっていないのが現状です。ただし、平均で考えても意味はなく、在庫が増えた産地がその分を減らすという取り組みをしなければ過剰は解消しないということです。

具体的な数字を見ると2020年12月末の在庫は2019年比で26万tほど増えています。この在庫を減らし、さらに毎年の需要減の分も上乗せして削減する必要があるということです。近年の毎年の需要減のトレンドは10万tですから、在庫の26万tプラス10万t、だから36万t減が必要だということになるわけです。

しかし、ここには再発令された緊急事態宣言などコロナ禍の今後の影響は入っていないということも考えておかなければければなりません。コロナ禍の影響があるにしても、供給がオーバーフローすれば在庫と価格に跳ね返るわけです。そのことを主産県を中心に生産者がどう考えるかが大事です。

JA全中 馬場利彦専務に聞く(2)へづづく

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