【クローズアップ:Jミルク国際委始動】持続的酪農へ業界挙げ対応 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年6月21日
Jミルクは4月に設置した国際委員会の第1回会合を開き、酪農乳業の国際対応を始動した。業界挙げた一元的な国際連携は前例がない。気候変動の中で、持続可能な酪農への具体策が問われる。
初の横断的な国際対応
第1回会合後の18日の会見で、川村和夫Jミルク会長(明治HD社長)は「業界挙げた国際対応ネットワーク形成は全国でも初めてではないか。酪農乳業界の国際事業強化の重要な一歩を踏み出した」と、委員会の意義を強調した。
同委員会は、Jミルクの国際対応と国際酪農連盟(IDF)の日本組織・JIDFが一体となり4月に立ち上がった。これまでの縦割りの仕組みをやめ、酪農乳業関連の国際的情報の一元収集と、国内への一元的な提供が可能となる。
日本農業は国際化の波に揺れるが、中でも酪農乳業界は自由化の影響が大きい。一方でIDFなど国際組織が活発に活動し、一元的な対応が課題となっていた。
メンバーに国連FAOも
Jミルク国際委のメンバーは業界挙げた構成で、委員長にはヨーグルトなど機能性乳酸菌の権威・東北大学の齋藤忠夫名誉教授、副委員長には中央酪農会議と明治の酪農団体とメーカー出身者が就いた。さらに特別委員には国連食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所長など国際機関のメンバーを加え、国際対応の強化を目指す。
食料サミットとSDGs
会見で国際委の齋藤委員長は、当面する5つの重要課題を挙げた。まず取り上げたのは、地球温暖化、気候変動と持続可能な開発目標(SDGs)などをテーマに9月開催の国連食料システムサミット(FSS)と、これを踏まえた農水省「みどりの食料システム戦略」への対応だ。
さらに、健康維持への牛乳・乳製品の栄養実証、二酸化炭素削減へ環境問題、雇用など酪農乳業の社会経済貢献、動物福祉(アニマルウエルフェア)を掲げた。これら五つは、具体的な国際的対応が迫られている。
同床異夢
SDGs実践やFSSに向けた「みどりの食料戦略」は、各業界の代表は「総論賛成、各論慎重」といったところだ。それぞれが〈同床異夢〉と言ってもいい。雑草や病害虫が多発するアジアモンスーン地帯と欧米では、農業環境が大きく異なる。
いくら政府が2050年までに有機農業100万ヘクタールと旗を振ったところで、具体的にどう進めるかはこれからだ。生産者の対応とともに、有機農畜産物について価値を認める消費者理解も欠かせない。コスト増大を補う政策支援も必要となる。
課題は生産者対応
既にJミルクでは、2019年秋に10年後の2030年を念頭にした戦略ビジョン「提言」をまとめ、持続的な成長を目指す酪農乳業の姿を描いている。「提言」を着実に実践する戦略ビジョン推進特別委員会の下に「SDGs推進ワーキングチーム」を設け、具体的な論議を始めている。今回始動した国際委との連携も進める。
SDGsやFSS対応で、ESG投資も踏まえ各乳業メーカーは環境重視の戦略を始めつつある。これは企業生き残り戦略の一環だ。
「加工型畜産」どう脱皮
問題は生産者段階の意思統一と具体化の手法だ。日本の畜産は、「加工型畜産」で大量の輸入飼料で成り立つ側面も強い。
畜種の中で酪農は飼料自給率が比較的高いものの、粗飼料生産基盤を有す大規模な北海道と、中小、家族経営が大半な都府県の酪農は、成り立ちが大きく異なる。さらに、現在、生乳増産を牽引しているのがメガ・ギガファームと称される乳肉大規模経営なのも課題だ。
循環酪農見直しの契機に
すぐに環境重視へ経営転換と言っても現実的ではない。ただ、地球環境や気候変動を踏まえた持続可能な酪農乳業のためには、自給飼料や耕畜連携を通じた循環型酪農の本格展開は、消費者理解の面からも避けて通れない。
Jミルク国際委の本格始動も契機に、SDGsやFSSを踏まえた日本型の循環酪農確率への機運を高める具体策が急務だ。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ホウレンソウにクロテンコナカイガラムシ 県内で初めて確認 神奈川県2024年12月23日
-
【注意報】カンキツ類にミカンナガタマムシ 県内全域で多発 神奈川県2024年12月23日
-
24年産新米、手堅い売れ行き 中食・外食も好調 スーパーは売り場づくりに苦労も2024年12月23日
-
「両正条植え」、「アイガモロボ」 2024農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ①2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ②2024年12月23日
-
香港向け家きん由来製品 島根県、新潟県、香川県からの輸出再開 農水省2024年12月23日
-
農泊 食文化海外発信地域「SAVOR JAPAN」長野、山梨の2地域を認定 農水省2024年12月23日
-
鳥インフル 米アイダホ州、ネブラスカ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月23日
-
農林中金 当座預金口座規定を改正2024年12月23日
-
農林中金 変動金利定期預金と譲渡性預金の取り扱い終了2024年12月23日
-
「JA全農チビリンピック2024」小学生カーリング日本一は「札幌CA」2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」栃木県で三ツ星いちご「スカイベリー」を収穫 JAタウン2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」大分県で「地獄めぐり」満喫 JAタウン2024年12月23日
-
「全農親子料理教室」横浜で開催 国産農畜産物で冬の料理作り JA全農2024年12月23日
-
「愛知のうずら」食べて応援「あいちゴコロ」で販売中 JAタウン2024年12月23日
-
Dow Jones Sustainability Asia Pacific Indexの構成銘柄7年連続で選定 日産化学2024年12月23日
-
「東北地域タマネギ栽培セミナー2025」1月に開催 農研機構2024年12月23日
-
NTTグループの開発した農業用国産ドローンの取り扱い開始 井関農機2024年12月23日
-
北海道立北の森づくり専門学院 令和7年度の生徒を募集2024年12月23日