【クローズアップ:外国人労働者】日本農業の一翼~制度と現状 技能実習生は強力な戦力(3)堀口健治・日本農業経営大学校校長(早稲田大学名誉教授)2021年7月6日
少子高齢化が進む日本で農業にとって外国人労働者は大きな存在になりつつある。労働力不足に苦しむ産地で規模拡大の頼もしい助っ人になる例も出ている。このようななか、「日本農業と外国人労働者」をテーマに早稲田大学名誉教授で日本農業経営大学校校長の堀口健治氏に制度や現状を解説してもらった。
昨日に引き続き掲載する。
団体管理型導入 待遇改善も進む
3.93年以降から今に至る仕組みとその成果
93年の団体管理型の仕組みは、来日後1年間は研修期間だが、これに1年間の実習期間(最賃以上)が加わる。これが97年に2年間の実習が認められ計3年間の滞在が可能になった。団体管理型は来日前に雇用契約を結び、来日する人は単身・雇用先決定済み・滞在期間内の雇用先の変更は原則不可で、技能実習ビザによる来日は1回限りである。単身、雇用先の固定、3年雇用は、基本的に米国のH2-Aの農業ビザ、H2-Bの非農業ビザ、韓国の雇用許可制の仕組みと同様である。もっとも米国は家族帯同を認めている。ただし家族に就労ビザは与えられていない。
中国語を学ばないでもすぐに就業できる台湾、現地で行われる公的機関による韓国語試験をパスした希望者を雇用する農家が写真などで選び仁川空港で初めて雇用者と会う韓国、これらとは日本は大いに異なる。日本は、日本人雇用の面接と同じ仕組みを、技能実習にも使っていることはすでに述べた。
また採用後に親を訪問し懇談する経営者が多い。こうした経過があると、雇用条件がより正確に希望者に伝わり、契約と異なることを理由にした失踪はみられない。また事前の日本語合宿研修や出国などの送り出し団体に払う本人負担が、ベトナムで高額であるような事例は、ブローカーなどが間に入ってのケースが多い。実際は借り入れて払うにしても通常は日本での3カ月前後の所得で返せるレベルであり、今やそうした方向に全体は動いている。
また、日本側も送り出し団体を選別し、多額の借金を負って来日することがない状況を作り出そうとしている。
農業は技能実習制度に00年加わった(表参照)。それまで外国人を受け入れていた農家・法人は農業研修生として1年限りで受け入れてきたが、00年以降は団体管理型として受け入れ監理団体に参加し3年間受け入れるようになった。技能実習1号(初年度)は農業で採用され来日するが農業内の職種は問われない。しかし2号(2、3年目)以降は指定職種のみで変更は不可である。
表 外国人受け入れ制度の展開
長野県や北海道などに多い高冷地野菜地帯(3,4~10、11月の期間雇用)、指定職種にない肉牛や稲、茶業、選果場等では1号のみで受け入れ、1年以内に帰国する。農業の指定職種は00年施設園芸、養鶏、養豚が認められ、02年畑作・野菜,酪農、15年果樹が加わった。
10年に、初年度が最賃の半分程度の研修手当のみで残業も禁じられていた状態を改め、初年度から、来日直後の座学講習期間は研修手当だが、その1カ月を経た以降は2、3年目と同じ雇用契約の労働者に位置付けられた。研修しながら雇用者の指揮・命令に従う労働者という、日本独特の制度が形を整えたことになる。
初年度の少ない研修手当は技能実習生の不満を呼び、研修と所得獲得の両方の目的を持つ実習生と多くのトラブルになったので修正したのである。この改革にあわせ在留資格「技能実習」が創設された。
そして16年の技能実習法制定を受け翌年に外国人技能実習機構が設立され、政府自ら制度の趣旨を徹底し、技能実習生との雇用契約などを確実に守らせるよう誘導することになった。他方、優良企業には3年の限定を、技能実習3号として4、5年目も認め、人数枠も倍増した。
熟練をある程度獲得した実習生にさらに研修しながら、雇用先を変えることも認め、後輩の実習生を指導しつつより高い報酬を得る機会を提供したのである。
次節では技能実習生を受け入れている代表的な経営タイプを紹介しておこう。
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