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【クローズアップ:生乳生産第1四半期】続く増産ペース 一方で乳製品在庫拡大 農政ジャーナリスト 伊本克宜2021年7月26日

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真夏を迎え生乳需給が難しい局面を迎えている。中央酪農会議がまとめた直近の生産動向は第1四半期(4~6月期)で全国ベース前年同期比1.7%増、北海道は2.2%増。生乳廃棄は回避できたが、コロナ禍で乳製品在庫が積み上がっている状況だ。半面で夏場の牛乳最需要期に入った。

北海道は既に100万トン超

中酪まとめの各指定生乳生産者団体の第1四半期の生乳生産は183万3000トン、前年同期比101.7%、全国の6割近い生産シェアを持つ北海道は104万トン、102.2%と高水準で推移している。北海道は6月上旬が年間のピークとなる。6月単月で見ると34万7000トン、前年比102.6%と3%近い増産率を示した。

◎第1四半期指定団体別生乳動向(単位トン、%)
・北海道 104万0616  102.2
・東北   13万0053  99.0
・関東   27万5903  101.9
・北陸   19万0311  101.2
・東海    8万5419  100.3
・近畿    3万9280  104.1
・中国    7万6974  102.7
・四国    2万8045  100.7
・九州   15万7488  100.9
※都府県  81万2471  101.2

既に北海道は100万トンの大台を超した。都府県も東北を除き前年同期比でプラスに転じ、都府県全体でも同1.2%増と順調な生産を続けている。

都府県底上げで飲用担保

この間の大きな酪農課題は、北海道の増産基調の一方で都府県の生産基盤弱体化だ。生産面から見ると一定程度解消してきた証しでもある。

都府県の増産体制は、用途別から見ると首都圏をはじめ大都市圏の飲用牛乳供給を「担保」するものだ。

ただ内実を精査しなければならない。もともと県単位の生産が少ないケースでは、大型経営の動向次第で増減産を繰り返す。搾乳牛1000頭規模のメガ、1万頭以上のギガなど巨大酪農経営ファームの動向次第で大きな変動を示す。

道産生乳の行き場縮小

一方で、北海道、都府県の増産並進構図は、コロナ禍で新たな課題も生じている。道産生乳の行き場だ。

首都圏、関西圏、中京圏の3大都市圏を抱える都府県は、周辺の飲用牛乳不足を大量の道産生乳の移出で賄ってきた。その割合が縮小することを意味する。問題は具体的な数量だ。通常なら都府県の増産といっても、旺盛な大都市圏の需要には全く追いつかない。そこで道産生乳で不足分を賄う。

その基本構図に変わりはないが、コロナ禍で用途別の生乳需給全体が様変わりした。増産ペースを高める北海道の生乳はどこに向かうのかという、次の課題が深刻化しつつある。

道内工場で乳製品在庫の山

結果的に道内工場で、保存の利くバターや脱脂粉乳の乳製品に処理せざるを得ない。都府県の飲用市場が地元産牛乳のシェアが高まることは、半面で北海道産の牛乳割合が狭まるというジレンマが生じている。

当面の根本問題は、コロナ禍で外食、ホテル需要など業務用需要が低迷を続ける乳製品需要をどうするかだ。

Jミルクの再三にわたりコロナ禍の巣ごもり需要、家庭内での牛乳・乳製品消費拡大の呼びかけも、背景はそこにある。逆に言えば家庭内需要の盛り上げ以外に、今のところ打つ手はないと言うのが現状だ。

真夏日と消費動向

好天は牛乳需要増加に結び付く。だが暑過ぎは逆に減少を招く。喉を潤すため炭酸飲料などさっぱり系が増えるためだ。生クリーム、脱脂粉乳などの需要と重なるアイスクリームも暑過ぎはマイナスとなる。かき氷など氷菓消費が伸びるためだ。

今秋の農政課題はコメと牛乳

今秋の農政課題の筆頭は、コメ需給問題だ。主食用米から他用途米への転換が思ったように進まず、作柄次第で米価下落は避けられない。既に西日本の今年産の早期米概算金の引き下げとなって需給反映されつつある。

もう一つの農政課題は酪農問題だ。乳製品在庫が積み上がる中での輸入飼料高騰は、今後の酪農経営に生産面と乳価水準両方でマイナスに働きかねない。稲作農家は、豊作を手放しで喜べない状況が長く続く。酪農家にも同様の事態が起きかねない。国をはじめ関係者挙げて対応が急務だ。

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