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【22年度農業予算概算要求】みどり戦略『始動』水田活用、農村整備も2021年10月12日

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農林水産省は2022年度予算概算要求として総額2兆6842億円を財務省に提出した。需給均衡が課題となっている米では転作助成金は2021年度の補正予算と合わせた同額を当初予算で要求した。脱炭素化など今後の新たな農政の方向を示した「みどりの食料システム戦略」実現のための新予算や地域農業の将来像の実現に向けた人と農地政策なども柱となっている。今回は主要な新規予算と事業を中心に解説する。

2022年度農林水産関係予算概算要求のポイント2022年度農林水産関係予算概算要求のポイント

新たに低コスト稲作支援

「水田活用の直接支払交付金」は、水田フル活用に向け麦、大豆、飼料用米など戦略作物の本作化を支援する交付金で、飼料用米では収量に応じて最大で10a当たり10・5万円が交付される。また、台風など収穫直前の自然災害で収量が落ちた場合も、標準単収が確実だった農業者には標準単価(10a8万円)が特例として交付される。

21年度の補正予算では産地と実需者が結びついて販売契約をし、輸出用米などの低コスト生産に取り組む場合を支援する水田リノベーション事業を実施したが、来年度予算では当初予算にその事業分の270億円を加えて3320億円を要求した。

水田リノベーション助成額は今後検討されるが、補正予算で実施された事業では戦略作物助成よりも高い10a4万円が交付された。

また、都道府県連携型助成も盛り込んだ。都道府県が飼料用米などへの支援を独自に行う場合、その支援単価と同額(上限は10a5000円)を国が支援する仕組みだ。

麦や大豆の需要に合わせた生産推進を支援する「麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクト」は団地化の推進と、保管施設の整備に向けた支援など40億円を要求した。主食用米の需給環境を整備するため、産地の判断で長期計画的に販売する取り組みを行う場合に保管経費などを支援する「米穀周年供給・需要拡大支援事業」は今年度予算と同額の50億円を要求した。

来年度は「稲作農業の体質強化に向けた超低コスト産地育成事業」を新設する。要求額は10億円。米の輸出拡大に向けて大幅なコスト削減をめざす産地に対して生産コストの現状分析、課題抽出と低減対策の検討や実証、普及などの取り組みを支援する。

稲作農業の体質強化に向けた超低コスト産地育成事業

米の輸出に向けて、都道府県、市町村、JA、担い手、外部有識者がコンソーシアム(協議会)をつくると1団体あたり上限1000万円を補助する。農業コンサルタントを活用して地域の稲作の課題を「見える化」したり、直は栽培等の低コスト技術や、スマート農業技術のサービス事業の実証、農機メンテナンスなどの人材育成など、産地の実態をふまえた取り組みを支援する。

事業実施期間は最長3年間。1年目と2年目の年度末に取り組み状況や成果について中間評価を行い、翌年度の支援対象産地を決定、支援を重点化するという仕組みとする。

みどり戦略 現場を後押し

今年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」は、農業の生産力の向上と持続性の両立をめざす。来年度予算ではみどり戦略実現に向けたスマート農業の実装化を加速するための技術開発と実証や、小麦の減肥・減農薬栽培、深水管理による雑草の抑制技術といった生産現場のニーズをふまえた研究など技術開発・実証事業に新たに65億円を要求した。

また、気候変動緩和と持続的農業を実現するため、既存の研究成果と最新の研究情報を収集・分析する「みどりの食料システム国際情報センター」を国際農研機構内に設置し、アジアモンスーン地域で共有できる基盤技術を確立するアジアモンスーン地域応用促進事業(2億円)も要求している。

気候変動への対応策として脱炭素が世界的な農政の目標となるなかで、アジアモンスーン地域として国際的なルールづくりに資する情報発信を行うことも狙いだ。

一方、国内の現場でみどり戦略を実践するため、交付金など「みどりの食料システム戦略推進総合対策」として30億円を要求した。

交付金では▽土づくり、総合的病害虫管理、栽培暦の見直しなどグリーンな栽培体系への転換▽有機農業の団地化や学校給食での利用、販路拡大▽地域循環型エネルギーシステムの構築などのメニューを農林水産省は作成している。これらに即した取り組みに対して交付金を支払う仕組みを検討している。

たとえば、グリーンな栽培体系への転換への取り組みは、産地内のJA、農業者、生産資材メーカーと実需者などで協議会を組織し、総合的病害虫管理、生分解性マルチの利用など環境にやさしい栽培技術などの検証と5年後の産地戦略の策定、情報発信などでグリーンな栽培体系への転換と定着を支援する。

グリーンな栽培体系への転換サポート

地域循環型エネルギーシステムの構築の取り組みは、営農型太陽光発電の取り組み支援と稲わら、もみ殻、竹、廃菌床など未利用資源のエネルギー利用を促進する取り組みを支援する。

営農型太陽光発電は、発電パネルの下でも収益性確保が可能な作目や栽培体系、地域でもっとも効果的な設備設計と設置場所などの検討を支援する。

有機農業産地づくり推進では、市町村主導での取り組みを推進する方向で有機農業の生産から消費まで一貫した取り組みを支援。先進地区を創出するため、事業者や地域住民を巻き込んだ取り組みで生産から集出荷体制、学校給食での利用、量販店での有機コーナーの設置などの試行的な実施と計画づくりを支援する。

有機農業産地づくり推進

農林水産省は地方自治体でみどり戦略実現に向けたビジョンや計画の策定も支援するが「ビジョン策定が必須要件ではない」(環境バイオマス政策課)として、グリーンな栽培体系への転換など地域の個々の取り組みにも交付金で支援する考えを示している。

集落営農活性化を支援

地域がめざすべき将来の農地利用の姿や、農地を将来にわたって持続的に利用すると見込まれる農業者を位置づけた「人・農地プラン」の策定を支援する事業も新規予算で11億円要求した。集落での将来の地域農業の姿を話し合い、地域がめざすべき将来像を作成する。

その策定にかかる費用などを支援するとともに、プランに位置づけられた経営体が生産に効率的に取り組む場合に必要な農業機械や施設の導入を支援する。

それを持続的経営体支援交付金として120億円を要求。補助上限額は300万円だが、ロボット技術やICT機器の導入、みどり戦略に配慮した営農に必要な機械の導入など先進的農業経営確立支援タイプには個人1000万円、法人1500万円等とする。
集落営農の活性化に向けたビジョンづくりや人材の確保、新たな作物の導入を支援する集落営農活性化プロジェクト促進事業も新設する。予算額は30億円を要求。

集落営農活性化プロジェクト促進事業

集落営農組織では高齢化が進んでおり、将来にわたって農地を維持できるようなビジョンづくりと、その取り組みの中核となる若者を雇用する経費などを支援する。

ビジョン策定のための会議などの経費のほか、農作業のオペレーターや販売、経理などで働き、将来は組織の役員となる若者の賃金や社会保険料を年間100万円を上限に最長で3年間支援する。

また、収益力の向上に向けた高収益作物の試験栽培、加工品の試作、販路開拓に取り組む経費や、信用力向上や、雇用環境の整備などのために法人化する場合、定款の作成や登記などの経費を支援する。これらの取り組みをJAや市町村が集中的にサポートするための必要経費も支援する。

農林水産省によると複数の集落営農が広域連携を考える場合の「中核となる若い人材確保などにもこの事業を活用してもらいたい」(経営政策課)としている。

新規就農と労働力確保

新規就農者への支援策は中身を大きく見直す。236億円を要求した「新規就農者育成総合対策」では、親元就農を含む経営開始資金として、最大1000万円を支援する。仕組みは1000万円を無利子融資として、その償還金を国と地方が支援することが検討されている。

また、一部は毎月の定額助成として月に最大13万円を最長3年間まで受け取ることも可能とする。

雇用就農への支援策は雇用元の農業法人に対して1年目は1カ月あたり10万円、2年目は同8万円など最長で5年目に同4万円を助成する。研修生に対しては、研修期間中、1カ月最大13万円を最長2年間助成する。

JAなど伴走機関が行う研修農場の整備の支援や、先輩農業者による新規就農者への技術や販路での支援もサポートする。農業大学校や農業高校などにおける農業機械・設備の導入、スマート農業や環境配慮型農業などのカリキュラムの強化も行う。新規就農者の確保は、令和5(2023)年までに40代以下の農業従事者を40万人に拡大することを目標としている。

農業労働力確保総合対策も新設する。25億円を要求している。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で人手不足となっている経営体が代替人材を雇用する際のかかり増しの労賃、交通費、宿泊費などを支援する。

また、繁閑期の異なる産地間の調整による労働力確保の取り組みを支援する。複数産地が共同で労働力を募集するなどの取り組みを交通費、宿泊費を支援する。

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