【緊急特集】気候変動で迫る食料危機(1)異常気象の引き金 世界で「記録的」連発2021年11月11日
10月末から11月12日まで英国・グラスゴーで気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されている。各国から首脳が出席しCO2排出削減対策を議論している。今回は気候危機が世界の食料生産にどんな影響をもたらすと予測されているかを紹介するとともに、気候変動のなかで日本はどんな農業生産をしていくべきかを改めて考えてみたい。 (野沢聡)
COP26とは、地球温暖化対策の枠組みを決める国際会議だ。1995年からほぼ毎年開かれ、数字は26回目であることを示す。現在、197の国と地域が加盟する。
2015年のCOP21ではパリ協定を採択し世界共通の長期目標として、工業化以前(1850~1900年)とくらべた世界全体の平均気温の上昇を2度を目標とし、1・5度に抑える努力を追求することにした。途上国を含むすべての締約国は自国が決定する温室効果ガス排出削減目標を提出し、実施状況を報告する。
対策を先行している先進国は途上国に追加の排出削減を求め、途上国は対策のための資金支援を充実するよう先進国に求めている。温暖化はツバルやトンガといった国に海面上昇による水没の恐れをも顕在化させている。
富める国が加害者であり貧しい国が被害者でもあるという構図だ。
一方で、気候変動は今年も世界各地で異常気象を引き起こしている。そのうち気象庁は顕著な世界の異常気象を速報としてまとめている。
今年7月のドイツ大洪水のニュースは記憶に新しい。9月に実施されたドイツの総選挙ではこれをきっかけに気候変動が一大争点になった。欧州委員会によるとドイツやベルギーで190人以上が死亡した。ドイツ西部では7月14日の1日で、7月の平年月降水量の約1・5倍の143ミリが降った。
一方、8月にはスペイン、イタリア、トルコなど地中海周辺海域では異常な高温が続いた。シチリア島のカターニアでは8月11日に44・4度、シラクサで48・8度とヨーロッパ大陸の記録(48・0度)を更新したといわれている。トルコやアルジェリアでも高温が続き大規模な山火事が発生した。
ヨーロッパだけではない。カナダ西部のリットンでは6月29日に49・6度とカナダ最高記録を更新。モスクワでは6月23日に34・8度、ロシア東部のビリュイスクでは6月22日に36・5度、米国のオレゴン州ポートランドでは6月28日に46・7度を観測した。
米国南西部では記録的な少雨が続いた。2020年5月~2021年4月までの1年間の降水量は1895年以降、記録的な少なさで乾燥の程度を示す指標は「50年に1回以下」との極端な乾燥となっている地点が多発した。この1年の雨量はサンフランシスコは平年の約38%の191ミリ、フェニックスでは同34%の64ミリだった。
これらの現象には偏西風の蛇行や、低気圧や高気圧の停滞などの要因はあるものの、気象庁は「地球温暖化にともなう全球的な気温の上昇傾向も影響した」などと解説している。
日本では今年8月は記録的な大雨だった。前線の活動が非常に活発となったため、西日本から東日本の広い範囲で大雨となり総降水量は多いところで1400ミリを超えた。8月13日から15日には九州と中国地方で特別警報が発表された。
気象庁の異常気象分析検討会は、8月の大雨に地球温暖化の影響を指摘している。
8月の大雨について、地球温暖化にともなう気温上昇がなかったとの仮定と現在の気候状態を反映した再現実験では、明らかに現在の気候条件を反映したほうが降水量が多くなった。理論上は気温が1度上昇すると水蒸気が7%程度増える。この実験はこの夏の一連の大雨が「地球温暖化による長期的な水蒸気量の増加が降水量を増やした可能性を示唆する」と報告している。
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