子会社通じ循環型の畜産リサイクルに挑戦 JA鹿児島きもつき・下小野田寛組合長【農協研究会報告から】2022年4月28日
4月23日に開かれた農業協同組合研究会主催の研究大会「熱く語ろう JAは『みどりの食料システム戦略』にどう向き合うかー都市農業地域から遠隔地大規模畜産・畑作地域までー」。鹿児島県の「JA鹿児島きもつき」の下小野田寛組合長は、「有数の畜産・畑作地帯はみどりの食料システムにどう向き合うか」をテーマに、子会社を活用した循環型の畜産リサイクルや、地元の農産物を加工して食としてアピールする「地工」への挑戦について報告した。
JA鹿児島きもつき組合長 下小野田寛氏
JA鹿児島きもつきは、鹿児島県の大隅半島をエリアとし、平成5年に6つのJAが合併して誕生した。まもなく30年を迎え、1万4000人弱の組合員がいる。私は7年前に2回目の組合長に就いた際、1回目は経営改革に目が向いてそれを支える人づくりに目が向いていなかったとの反省から人に目を向けようと取り組んでいる。
まず、農家の所得という面で販売額は非常に重視している。平成26年は246億円だったが、昨年は初めて300億円を超えて311億円に達した。7割は牛や豚、鶏の畜産だ。事業の柱としては、信用、共済、購買、販売があるが、これに農業経営を加えた5つの柱を掲げ、子会社を通した農業生産に取り組んでいる。
JAとして平成30年に「ネクスト10」という10年構想を掲げた。中期3年計画のさらに先を見据えたいと総代会で承認してもらった。この指標として「貯金」と「販売高」を掲げている。貯金は現在の1000億円から2000億円とした。販売額は300億円から400億円に増やしたいと考えている。この「ネクスト10」構想ですでに実現したものもある。今年10月に鹿児島県で開かれる、和牛オリンピックといわれる全共(全国和牛能力共進会)での日本一連覇も掲げている。
われわれの目標として、子会社を活用した循環型の畜産リサイクルを目指している。子会社として「アグリーン鹿屋」「きもつき大地ファーム」「きもつき豚豚ファーム」の3つがある。例えばでんぷん工場で発生するでんぷんかすは、これまでお金をかけて処理してきたが、今は牧草を組み合わせて牛の飼料とし、子牛を生産している「きもつき大地ファーム」で活用している。この会社は農家の高齢化で扱い頭数が年々減っているのをカバーしたいとの思いで設立したが、繁殖雌牛1600頭を持ち、年間10億円の売り上げがある。
さらにこれからの挑戦として、「地産地消そして地工」を掲げている。地工とは地元で食品加工をするという意味。直売所をつくり、農家レストランをつくり、ラーメン店もつくった。とにかく地元で取れたものを食としてアピールしたい。最近、キリンビールとのコラボで「辺塚だいだい」を使ったリキュール「氷結」を生み出した。「辺塚だいだい」は過疎地に自生しただいだいを改良して46戸の農家が取り組み、G1登録している。この「氷結」は全国販売されて大好評だった。最も良かったのは、農家のみなさんに元気が出てきたことで、地域を挙げてもっとつくろうと取り組んでいる。やはり生鮮だけでなく加工して販売、輸出することが必要と考えている。食品加工会社とのさらなるコラボや、アジアに近い地の利を生かして輸出にも取り組んでいきたい。
一方、鹿児島はサツマイモの大産地だが、昨年はサツマイモ基腐病の被害が畑一面に広がって収穫できないところもあった。国を挙げて調査したところ、1つは有機質肥料が足りないことが原因ともいわれている。耕畜連携という意味でこういった課題にも取り組みたい。
人手不足対策も子会社を活用して担い手育成やスマート農業に取り組んでいる。国の補助を受けてドローンや無人トラクターを導入してサツマイモ生産体系の確立に取り組んでいる。3つの子会社の取り組みとしては、「アグリーン鹿屋」では外国人技能研修性を受け入れ選果場や収穫作業に取り組んでもらっており、もうすぐ農家に派遣できる見通しだ。また、「きもつき大地ファーム」には農業大学校の卒業生を社員として受け入れ、いずれ独立してもらうことも視野に入れている。「きもつき豚豚ファーム」では、離農した養豚農場の施設を購入して改修し、就農希望者に貸し出すことに取り組んでいる。こうした子会社を通じて生産基盤を維持しながら担い手育成に取り組んでいきたい。
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