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森山裕元農相に聞く 「農政のど真ん中に食料安保位置づけ」 基本法検証で多様な担い手、関連法も視野に2022年10月3日

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食料・農業・農村基本法の検証・見直し論議が本格化する中で、森山裕元農相(自民党選挙対策委員長)に今後の対応をインタビューした。食料安保と基本法見直しは〈表裏一体〉と強調。「食料安保を農政のど真ん中に位置付ける」とする一方、基本法見直しの視点では多様な担い手の役割明記も言明した。(聞き手 農政ジャーナリスト・伊本克宜)

地元・JA鹿児島県経済連の自給肥料のサンプルについて説明する森山裕元農相地元・JA鹿児島県経済連の自給肥料のサンプルについて説明する森山裕元農相

■岸田政権1年の課題

――岸田政権発足から10月4日で1年。3日からは臨時国会も始まりました。党4役の一人として、支持率低迷の課題と農業分野への政権対応をどう評価しますか。

新型コロナ禍、ウクライナ問題という異常事態の中での政策運営となっていることに留意しなければならない。とにかく、ぶれずにやり抜くことだ。農業関連は党、農水省と連携を取りながら臨機応変に対応しているのではないか。

■野村農相に「運命的なものを感じる」

――「食料安保シフト」へ同郷で盟友でもある野村哲郎農相への期待は。

2004年、地元鹿児島の山中貞則代議士の急逝に伴い、私が参院から衆院補選に転出し、野村氏はそのあとの参院選で当選する。系統組織で活躍した後、参院で18年間、一貫して農政、食料安全保障問題を追求してきた。その意味では、農相就任、そして基本法見直し、食料安保議論を牽引するというのは、何か運命的なものを感じる。

■補正で食料安保予算枠

――自民党としても基本法見直し論議が本格化します。政府は総合経済対策実施を急ぎ、JA全中は今月中旬に食料安保構築へ基本農政確立で全国大会を開きます。臨時国会の第2次補正予算では食料安保予算枠も重要ですね。

基本法見直しは、私が委員長を兼ねる自民党食料安保委でやるのか、別の委員会を立ち上げるのかは検討中だ。重要なことは基本法見直しと食料安保は「表裏一体」ということだ。農政の「ど真ん中」に食料安保を位置づけたい。政治家としての集大成でもある。補正予算では生産基盤構築、持続可能な農業へ食料安保予算枠を位置づけなければならない。TPP関連対策予算枠も参考にしたい。総合的TPP等関連政策大綱のように、恒常的な予算確保の大綱制定も検討課題だ。経済安全保障は各産業分野にわたるが、食料は命の糧だ。「半導体で腹はふくれるのか」と主張したい。

■基本法見直しの視点

――基本法見直しの視点は何ですか。この間、論議となってきた大規模経営を念頭に置いた21条、22条のいわゆる「担い手条項」、38条の農業団体などの記述「効率的な再編整備」は新たな農協改革の素地になりかねません。

現行基本法制定から四半世紀近くたち、食と農の状況は大きく様変わりした。国内生産、自給を加速し、備蓄もこれまでとは全く違う重要な位置づけとなる。国内需給調整という意味では輸出も大事だ。
極端に輸入依存度の高い小麦、大豆、飼料用トウモロコシなどの自給、安定確保をどうするのか。肥料、飼料の自給度を高め、環境調和型農業も推進していかねばならない。地元のJA鹿児島県経済連では家畜ふん尿から有機質肥料をつくり自給肥料の利用を拡大している。担い手問題は、大規模農家が中心となるにしても、農業者の減少や高齢化を踏まえると地域農業はそれだけでは支えきれない、JAの作業受託組織、中山間地の農業支援組織を含め、「多様な担い手」は重要だ。22条は競争力ばかりを前面に出したとも読め、その意味では〈新自由主義的〉とも言える。JAは地域社会のインフラ的な存在だ。土地改良組合なども含め、関連団体は農業生産の役割、位置づけを明確にしたほうがいいだろう。

■米対策と畜酪に課題

――当面の農政課題では、米需給問題、畜産・酪農では飼料高騰対策と生乳需給緩和をどう見ますか。改正畜産経営安定法がかえって生乳需給緩和を助長しかねません。

水田農業では、水田活用の直接支払交付金見直し、いわゆる「5年間水張りルール」で地域実態に応じた対応が必要だ。飼料用米の専用種に手厚く支援するのは現場の理解を得たい。生乳過剰問題は深刻だ。基本法見直しと関連し、指定生乳生産者団体の位置づけ、需給調整機能の強化などで改正畜安法の見直しが必要なら急がねばならない。ただ、一部から指摘のある、物財費上昇時に生産費を補填する牛・豚マルキンのような「酪農版マルキン」制定は、生乳用途別販売や北海道と都府県の構造の違いなどを踏まえ、慎重な検討が必要だろう。

■再生産視点で農産物価格の決定を

――国民理解が前提ですが、経営安定対策では農業者の再生産確保の視点が問われます。

資材コストなどの変動に対応した再生産確保を前提とした適切な価格形成の在り方が問われる。産地側に比べ流通サイドの力が強くバランスを欠いている。物財費が高騰する中で再生産を償う仕組みでないと、作り手はいなくなってしまい自給率低下に結び付く。資材コスト高騰の今でも、生産者価格に転嫁できたケースはわずかしかない実態を直視したい。

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