人を呼び込むからむし織とカスミソウ 自然に誘われて若者転入 福島県昭和村レポート(2)2022年11月29日
人を呼び込むからむし織とカスミソウ 自然に誘われて若者転入 福島県昭和村レポート(1)から続く
昭和村村長・舟木幸一氏
からむし織で奥会津全体を博物館に
「風の人」と「土の人」の交流で新しいむらづくりをめざす昭和村村長の舟木幸一さんに話を聞いた。
――昭和村ってどんな村ですか。
周囲を1000メートル級の山々に囲まれた山村。面積は東京23区の3分の1くらい。ほとんどが山林です。人口は今から66年前の4分の1の1246人。高齢化率が55%になっています。
セールスポイントは、からむし織とカスミソウの二つです。からむしは青苧(あおそ)ともいいますが、かつては越後、最上、会津が全国の3大産地でした。中でも昭和村の会津苧(からむし)は品質が良く、非常に高価で流通したんです。
村のからむし生産と繊維に加工する技術は国の選定保存技術に、会津のからむし生産用具および製品は国の重要有形民俗文化財に、からむしを用いた地機織は国の伝統的工芸品に指定されています。かつて、原料の苧麻(まお)は越後の商人が買い付けに来ましたが、今は村が出資した奥会津昭和村振興公社が全量買い上げて、新潟にはそれを買ってもらっています。
大事な文化が消えたら大変と、村は29年前に、後継者を育てるために「からむし織体験事業」を始めました。「日本経済新聞」などが取り上げてくれて、反響が大きかったですね。10人の募集に64人の応募があって、東大に入るよりも難しかったかもしれない。
織姫として1年実習し、半分の方が村に残りたいと言ってくれた。彼女らの幸せの尺度はカネではない。そのことに私どもがカルチャーショックを受けました。村人も、自分の足元を見つめ直す契機となり、みんなで彼女たちを応援しようという機運が盛り上がって、その後のむらづくりのいいきっかけになりました。これまでに122人が1年間の研修を終え、3割の方が村に定住し、村民としての生活をしています。
風土というのは、「風の人」と「土の人」の交流。両者の攪拌(こうはん)から新しいものが生まれ、新しいむらづくりにつながっていくということです。
からむし織で奥会津全体を博物館に
――からむし織の次は、カスミソウですね。
あれは2005年からです。織姫の実例があったので、宿根カスミソウの新規就農者も好意的に受け入れるようになったんだと思います。空き家を見つけてそこに入る。地域の一員として集落の務めもやる。「あ、若い人が村に入ることは、自分たちのくらしに直結するんだ」という気持ちが村の人たちに醸成されていった。
――昭和村役場のホームページは、他の市町村とまったく違う個性的なもので、面白いんですが、広報のキーワードは何ですか。
あれは役場の職員が作っているんです。外部委託はしていない。私は、これからのキーワードは広域連携だと思っています。私は只見川流域の7町村で作っている電源流域振興協議会の会長をしているんですが、この地域全体を博物館に見立てて、そこに住んでいる人が学芸員。奥会津らしさを地域の人々と一緒に次世代につなぎ、生活文化を発信しようと、9月2日に「奥会津ミュージアム」をスタートさせました。施設を持たずに、デジタル技術で現実と仮想空間をつないでいきます。
(客員編集委員 先崎千尋)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2024年7月16日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年7月16日
-
30年目を迎えたパルシステムの予約登録米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月16日
-
JA全農、ジェトロ、JFOODOが連携協定 日本産農畜産物の輸出拡大を推進2024年7月16日
-
「雨にも負けず塩にも負けず」環境変動に強いイネを開発 島根大学・赤間一仁教授インタビュー2024年7月16日
-
藤原紀香がMC 新番組「紀香とゆる飲み」YouTubeで配信開始 JAタウン2024年7月16日
-
身の回りの国産大豆商品に注目「国産大豆商品発見コンクール」開催 JA全農2024年7月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で黒酢料理を堪能 JAタウン2024年7月16日
-
【役員人事】ジェイエイフーズおおいた(6月25日付)2024年7月16日
-
【人事異動】ジェイエイフーズおおいた(4月1日付)2024年7月16日
-
日清食品とJA全農「サプライチェーンイノベーション大賞」で優秀賞2024年7月16日
-
自然派Style ミルクの味わいがひろがる「にくきゅうアイスバー」新登場 コープ自然派2024年7月16日
-
熊本県にコメリパワー「山鹿店」28日に新規開店2024年7月16日
-
「いわて農業未来プロジェクト」岩手県産ブランドキャベツ「いわて春みどり」を支援開始2024年7月16日
-
北海道で農業×アルバイト×観光「農WORK(ノウワク)トリップ」開設2024年7月16日
-
水田用除草ロボット「SV01-2025」受注開始 ソルトフラッツ2024年7月16日
-
元気な地域づくりを目指す団体を資金面で応援 助成総額400万円 パルシステム神奈川2024年7月16日
-
環境と未来を学べる体験型イベント 小平と池袋で開催 生活クラブ2024年7月16日
-
ポーランドからの家きん肉等の一時輸入停止を解除 農水省2024年7月16日
-
JAタウンのショップ「ホクレン」北海道産メロンが当たる「野菜BOX」発売2024年7月16日