すべての給食に有機米 先進地・千葉県いすみ市で現地視察 オーガニック給食協議会2023年7月24日
未来のある子どもたちにオーガニック(有機)給食を、という取り組みが広がりつつある。その先端を行くのは千葉県いすみ市で、市内の小中学校の給食に使う米のすべてをオーガニックガニックに切り替えた。国は2050年までに、有機栽培の面積を25%、100万haにする方針を「みどりの食料システム戦略」で示すが、いすみ市の取り組みはその先を行く。学校給食にオーガニックを取り入れようという全国オーガニック給食協議会は7月13日、同市で視察研修会を開いた。
オーガニック農業の視察研修(いすみ市で)
研修会には約80人が参加し、いすみ市のオーガニック農業への取り組みを聞くとともに、実際に有機農業を実践し、米を供給している農事組合法人を視察した。高知や長野、福島県の市町村など、地方自治体の関係者が全国から参加しており、オーガニック給食への関心の高さを示している。
同市における有機農業推進は、兵庫県豊岡市の「コウノトリと共生するまちづくり」に感銘を受けた同市の太田洋市長が、環境保全型農業を推進する組織体制を整えようと呼びかけたのがきっかけ。
2012年に「自然と共生する里づくり連絡協議会」を発足させた。副市長を会長にJAいすみの組合長を副会長に、生産者で構成する「環境保全型農業」と環境NPOによる「環境保全」の2つの部会を設け、有機稲作と生物多様性に挑戦した。
手探りで挑戦した有機稲作は、雑草との戦いに敗れ、見事に失敗。14年から当時、有機完全無農薬・無化学肥料の稲作で知られた民間稲作研究所の稲葉光國氏(故人)の指導を得て雑草の抑制ができるようになった。
2015年、収穫できた有機米4トンを学校給食に導入したのが最初で、17年には市内のすべての小中学校の給食をオーガニック米に切り替えた。18年には協議会に有機野菜部門を設け、今では給食に使うキャベツやニンジンなど8品目で、その2割が有機野菜になっている。週1回の「パンの日」以外は、年間必要量の42トンすべてオーガニック米となっている。
視察研修では、全国オーガニック給食協議会の代表理事を務める太田市長が、「子どもたちのため、いすみ市の取り組みを全国に広げよう」と呼びかけた。またいすみ市農林課有機農業推進班の鮫田晋班長が、オーガニック米にして給食の食べ残しが減ったことなどの成果を報告した。
一方で、栽培面で有機農業の難しさを指摘。「やせ我慢の無農薬栽培では続かない。最初から100%を求めるのではなく、コストを重視して広げる必要がある」と話した。現在、同市の水稲作付面積約1800haのうち、有機栽培は38ha(うち有機JAS16ha)。有機稲作には28名(19経営体)が取り組んでいる。
有機稲作は慎重に
水田の抑草方法を説明する矢澤さん
実際に米を栽培している農事組合法人「みねやの里」代表の矢澤喜久雄さんは、2013年から取り組んでいる有機栽培のほ場を案内し、特に雑草抑制の難しさを説明した。矢澤さんは3月から4月にかけて2回の代かきを行う。1回目はハロー(代かきの刃)の深さ10センチ、その後常時浅水で湛水管理し、1か月後にハローの深さ5センチ、水深7センチで2回目の代掻きを実施するなど、綿密な作業手順が求められる。
有機稲作について矢澤さんは、「クログアイなどの防除が難しい雑草の少ないほ場を選び、リスクや負担の少ない面積から始める。まず、作り方のポイントを習得してから、面積を増やしていくようにしてください」と、栽培の拡大には慎重さを求めた。
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