【気候危機】猛暑でサトイモの葉が枯れる 埼玉の農家「作柄心配」 豪雨被害の九州では花など被害も2023年8月9日
異常といえる猛暑が続くこの夏。気象庁によると、7月は月平均気温平年差は北日本でプラス2.8度と1946年の統計開始以来、1位の高温となった。8月に入っても高温が続き、さらに「40日間、雨が降っていない」との声が生産現場から聞かれる。各地の声をまとめた。
埼玉県狭山市のサトイモ畑。水不足で枯れる葉も目立つ
8月8日午前、埼玉県狭山市堀兼のサトイモ畑で散水していた奥富晴之さんは「もう40日間も雨が降っていません」と話す。散水組合に加入しているが設備が回ってくるのは週に1回。雨が降らないこの夏は、週に一度の散水でうまく育つのか心配だという。散水器を使っても作物すべてに水がかかるわけではなく「水がかからない場所は枯れてしまうかもしれない」と話す。奥富さんは狭山市では年々、雨が少なくなっていると感じている。近くの別の畑では葉が変色し枯れ始めていた。
サトイモ畑で小まめに散水する奥富さん
元全青協会長の川越市の飯野芳彦さんも「作柄がどうなるか、みな心配している」と話す。いつもなら週に1回の散水でも10日に一度雨が降れば十分に育つという。ところが今年は散水設備のあるほ場では3日、4日ごとに水をまいているといい、「こんな光景は初めて」とのことだ。秋に出荷する葉物野菜の種まきが始まっているが発芽にばらつきがあり、生育を心配する。
埼玉県北部のJAふかやによると露地野菜ではキュウリの変形とナスの色が抜けるなどの影響が出ているという。品質への打撃以前に、そもそもあまりの暑さで花が落ちてしまい収量が低下している。
今は秋の出荷に向け葉物野菜の種を育苗トレーに蒔いているが高温でトレーが蒸れてしまい発芽率が50%となるなど被害も出ているという。
生産者の労力も増えている。露地栽培で水利施設のない畑では「畑に水を運んでかけるしか対策はありません」(同JA販売課)。特産の深谷ネギでも高温で害虫の発生が多く通常よりも防除に手間がかかっているという。
豪雨被害の九州北部では果樹や花に被害
7月に豪雨に見舞われた九州北部。JAにじ(本店・福岡県うきは市)管内の久留米市の元JA全青協会長の田中圭介さんは、大雨で野菜畑は全部流され「今は種の蒔き直しに向け、猛暑のなか土壌消毒をしています」と話す。周囲では大雨の後、高温が続き果樹や花で被害が出ているという。
JAにじによると、切り花のバラ、カーネーション、クルクマでそれぞれに生育に影響が出ている。園芸指導販売課は「7月の豪雨でハウス内の環境が変わってしまった」と話す。
バラではハウス内の温度が上昇し、クーラーで冷やすべきところだが、電気料金の高騰で生産者はとてもクーラーをかけられない。そのため花のボリュームが小さくなっているという。フラワーショップなどからは、花束づくりにいつもより本数が必要なってしまう、との声も聞かれるが、単価は上がらず農家の所得減をJAは心配する。
カーネーションも暑熱対策でスプリンクラーを動かす必要があるが、今年は湿度が上がる心配からスプリンクラーを使えていない。同課によると「暑さで成長が止まるだけでなく、株が弱く病気になりやすい状態で農家は注意が必要。7月の豪雨によって、本来はかけなくてもいい手間をかけなければならなくなっている」と、思わぬかたちで豪雨後の影響が長引いていると話す。
冒頭の埼玉県狭山市付近では8日午前中に久しぶりに1時間ほどまとまった降雨があった。ただ、止んだ後には強い日差しが照り付け、農作業中の農家は農地を指差し「もう乾いている」と話した。同地域ではかつて夏のホウレンソウ産地だったが、年々猛暑になるにつれて手間がかかると栽培が下火になり、今、夏の品目は枝豆とネギへが中心になっている。気候変化への適応もすでに課題になっている。
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