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【処理水放出・緊急インタビュー】廃炉見通せない問題の本質俯瞰を 福島に向き合う責任 ジャーナリスト 青木理氏2023年8月30日

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福島第一原発の処理水の海への放出が8月24日から始まった。政府や東京電力が地元漁業者に「関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」と約束しながら、根強い反発が残る中で始まった海洋放出をどう受け止めるべきか。この問題の取材を続けるジャーナリストの青木理氏に緊急インタビューした。

ジャーナリスト 青木理氏ジャーナリスト 青木理氏

「大きな一歩」どころではない

――地元漁業者が依然として反発する中で処理水が海洋放出されました。こうした動きをどう見ていますか。

今回の放出強行はたしかに重大事であり、漁業者らが反発するのは当然ですが、一方で僕たちはさらに全体状況を俯瞰し、問題の本質が何かに目を凝らす必要があると思います。西村経産相は今回、ALPSで処理した汚染水の放出は「廃炉への大きな一歩」と強調し、敷地内に大量保管するそれを30年ほどかけて放出完了する見通しを示してます。政府や東電がいう「廃炉」工程に合わせた試算であり、それでも気の遠くなるような歳月ですが、果たして30年程度ですべてが終わるのか。

ご存知の通り、メルトダウンを起こした複数の原子炉の底には計880トンもの「燃料デブリ」、つまりは溶け落ちて固まった核燃料が大量に残され、それをすべて除去して回収しない限り廃炉には至らず、今後も高濃度の汚染水は発生し続けます。しかし、事故からすでに12年も経ったというのに、現実はどうかといえば、デブリは1グラムたりとも取り出せていません。いや、デブリの全体状況さえもきちんと把握できておらず、除去・回収の技術や方法すら見通せていないのです。とすれば、廃炉など本当に可能なのか、という疑問さえ湧きます。誤解を恐れずに言えば、チェルノブイリのように石棺みたいな形になりかねない恐れだってある。そう考えると、今回の汚染水・処理水の放出は大きな一歩どころか、乗り越えなければいけない課題の巨大さに足がすくみます。

傷の甚大さと深刻さ 改めて深く考えるべき

――処理水の放出がクローズアップされていますが、その先の廃炉は全く見通せないことをきちんと受け止めるべきということですね。

むしろ今回の放出強行であらためて深く考えるべきは、人類史でも最悪クラスとされる福島第一原発事故の、それを起こしてしまった僕たちの痛切な失敗と、原発事故というものがひとたび起きた際に残される傷の甚大さと深刻さでしょう。繰り返しますが、内外の猛反発を受けて放出を強行しても、今後何十年も汚染水は発生し続け、廃炉が可能なのかさえ見通せない。こうした状況にもかかわらず、政府と電力会社は事故後の原発政策を平然と翻し、新増設やら老朽原発の60年超運転やらに乗り出すと公言しています。言葉は悪いですが、正気の沙汰とは思えません。

最近、山口県上関町が「使用済み核燃料の中間貯蔵施設」の調査受け入れを表明しましたが、その根幹たる核燃サイクルなどとうの昔に破綻しているのに、破綻の矛盾を糊塗しながら札ビラを切って過疎地に関連施設を押しつける、そんな旧態依然としたやり方を繰り返していていいのか。また、「トイレなきマンション」と揶揄される原発政策をめぐっては、いずれ核廃棄物の最終処分場を作らざるをえませんが、文献調査を受ける自治体がいくつかはあっても、現実的にそれを完成させられるかもまったく見通せません。

原発に拘泥し遅れをとる一方の再エネ技術

――原発事故の反省が生かされていないとのご指摘ですね。こうした原発政策にどう向き合うべきとお考えですか。

愚かな政策を撤回させるべきですし、撤回しないならば政治を変えるしかありません。先日、エネルギー政策の専門家と長時間対談しましたが、欧米はもちろん中国なども太陽光や風力といった再生可能エネルギーへと急速に舵を切るなか、日本はあいかわらず原発という旧来型の巨大発電装置に拘泥し、再エネをめぐる技術は遅れをとる一方です。政府や電力会社はその大義に「エネルギーの安定供給」を唱えていますが、そんなものは建前であって、実態はまったく別でしょう。まず、すでに膨大な資金を投入してきた原発という発電装置を利用したい電力会社の経営的打算。また、それがもたらす巨大な利権や既得権益にしがみつく政治家、官僚、そして原発ムラと称されたような連中の思惑もある。

社会学者の宮台真司さんは、日本のこうした現状を「沈みかけた船のなかでの座席争い」と指摘しています。政官業の既得権益者が古い既得権益にしがみつき、醜い座席争いを続けているから産業構造の本格的転換もできず、新たなイノベーションも起きず、日本は長きにわたる低迷の底に沈み、なかなかそこから抜け出せないんだと。しかもこのままでは、取り返しのつかない原発事故の惨禍がふたたび起きかねません。

"風評"含む被害生み出した真の原因は何か

――処理水の放出をめぐる一連の動きの中で、福島大学の研究者らでつくる円卓会議が海洋放出の凍結などをアピールすることが批判されるという動きもあったと聞きます。どう考えますか。

僕もかつてテレビ番組で「汚染水」と発言した際、ある国会議員から"風評加害者"だと名指しで罵られたことがあります。処理水を汚染水というと「中国の手先か」などと批判する人もいますが、"風評"を含めた加害・被害を生み出している真の原因は何か。それは廃炉の見通しすらつかない事故原発であり、とりかえしのつかない原発事故であり、なのにごまかしや詭弁を連ねて被害と真摯に向き合わない政府と電力会社でしょう。地元で必死で声を上げている人を批判したり、言葉狩りのようなものにうつつを抜かすより、問題の根幹である原発政策や事故原因をつくった政府や電力会社の罪にきっちりと目を向けるべきです。

円卓会議は非常に重要 成田に学ぶべき先例も

一方、福島大学の研究者らが訴えている円卓会議の呼びかけは僕も非常に重要な試みだと考えています。以前取材したことがあるのですが、激しい反対運動が起きた成田空港問題をめぐっても1993年から円卓会議が開かれ、そこに至る過程では隅谷三喜男さんや宇沢弘文さんといった世界的学者が仲立ちをし、反対派や国、空港公団、地元自治体といった面々が一堂に会して話し合い、対立を乗り越えて地元振興の道を探りました。福島の事故はある意味でそれを上回る深い傷ですから、福島大学の研究者らの呼びかけに呼応し、10年どころか50年、100年先までを見据えて福島をどうするか、僕たちはどこで何を間違えたのか、そして政府や東電の責任をどう問うか、そうしたことごとを徹底して議論し、未来の福島を真摯に構築することはとても大切だと思います。

真摯に福島と向き合い声上げる責任

――福島でそうした場が求められる一方、原発から離れた地域に住む住民は、改めて原発事故の被害を受けた福島の再生にどう向き合うべきとお考えですか。

いまさら言うまでもなく、首都圏などで暮らすわれわれがある種の繁栄や利便性を享受する裏側で、過疎地に原発という巨大発電装置を押しつけてきた状況があったわけです。そして福島ではとりかえしのつかない大事故が起き、いまも地元住民や農業者、漁業者らが塗炭の苦しみに喘いでいる。その現実から目をそむけず、決して忘れず、福島と地元の人びとに対してできることはなんでもするしかない。福島の食材を積極的に食べ、機会あれば現地に赴き、地元の人びとの声に耳を傾け、真摯に粘り強く福島と向きあい続ける。同時に、それを政府や東電に徹底して求め、おかしな政治にははっきりと声をあげ、必要なら転換と退場を迫る。それは僕たちの責任なのです。

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