【23年を振り返って】気候危機!温暖化から沸騰化へ①食と農に影響必至 立花義裕三重大教授×谷口信和東大名誉教授2023年12月20日
今年の「酷暑」は農業にも大きな被害をもたらし、国連のグテーレス事務総長は地球は「沸騰化」の時代に入ったと警鐘を鳴らした。気候危機は、食料生産への打撃は言うまでもなく、災害や地域紛争の要因ともなる。2023年を振り返る対談企画は「今、地球では何が起きているのか」を話し合ってもらった。
海水温上昇で深刻化
大変な年だった2023年
谷口 「100年に一度」の異常気象や災害が頻発し、「異常が異常でなくなった」感があります。それに対して有効な手が打たれているのかも気がかりです。農業でいうと、農水省が「みどりの食料システム戦略」を動かし、来年1月に開かれる通常国会では食料・農業・農村基本法改正案も提出予定ですが、特に気候変動に関しては切迫感、緊張感がどうも乏しい。こうした現状をどう打開するかを話し合いたいと思います。
まず、「2010年から北半球で気候のレジームシフト(気候要素が数十年間隔で急激に変化すること)が起きた」という先生の研究成果をお話しいただけますか。
三重大学教授 立花義裕氏
立花 毎年のような猛暑や大雨も、それはたまたまで、また元に戻ると思っている人が多いと思うんです。でも、そうじゃない。冷夏が一度起きると農業には大打撃ですが、しかし、暑いという研究は多かったのですが、「なぜ冷夏が起きないか」の研究はなかった。
そこで、気候ががらっと変わったんじゃないかと仮説を立てて調べたら、2010年より前は寒い夏、暑い夏が交互に起きていたのですが、2010年を境に冷夏がパタッと起きなくなった。
日本だけなのか。なぜそうなったかを地球規模で調べてみると、偏西風の蛇行が激しくなっていたのです。
谷口 歴史的にみると、1850年頃のアイルランド飢饉が先進国最後の飢饉なんです。そこで困った人たちがたくさん米国へと流れていった。それと匹敵することが、今後起きるかもしれません。
立花 異常気象が何年も続くと食料の問題が起きる。食べられないとなると、戦争でなくても小競り合いが起きる。異常気象が連続的に起きると国同士の関係も不安定になるのです。それが2010年以降起こり続けています。
谷口 分かった時、どきっとしましたか。
立花 びっくりしましたよ。これはすごい、インパクトあるなと。気候が大きく変わることをぼくらは気候のレジームシフトと呼んでいます。2010年も観測史上最高の暑さだったんですけど、その後もそれに近い暑さが続き、今年(23年)さらに来た。
2010年を境に海面水温もガッと上がった。海水温が変わると魚の種類も変わりますから、食に関係するものが陸も海も大きく変わったのがこの年です。
気象が変わっても海が変わらなければ元に戻るのですが、海が変わると気候も変わり、元には戻らない。
東京大学名誉教授 谷口信和氏
谷口 閾値(いきち)、元に戻らない変化が生じる境界の値を超えてしまった?
立花 と思います。
谷口 中国の経済成長とも関係していると思っています。というのは、日本が西ドイツを抜いて1968年に米国の次の経済大国になってから、たかだか40年で一挙に中国が来た。大きい国で、排出されるCO2の量も膨大です。
立花 おっしゃるように、中国はいま世界で一番CO2出してますからね。
谷口 上海やハルピンに行って驚いたのはホテルの外に出られなかったことです。スモッグがすごくて。住民は家に空気清浄機をつけ、子どもは外で遊ばない。
立花 昔は日本もそうでしたね。CO2の量に気温が比例するわけじゃなくて、いったんCO2が増えると、たとえばシベリアの凍土が融けると地面が出ます。地面が出ると太陽光を吸収するから温度が上がっていく。凍土に入っていたメタンも大気中に出てきます。ですので「閾値を超えると、加速度的に温度が上がっていく」ことが理論ではわかっていたんですが、それが現実化したのが2010年だと思います。
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