【23年を振り返って】気候危機!温暖化から沸騰化へ④深刻な気候の極端化 立花義裕三重大教授×谷口信和東大名誉教授2023年12月20日
今年の「酷暑」は農業にも大きな被害をもたらし、国連のグテーレス事務総長は地球は「沸騰化」の時代に入ったと警鐘を鳴らした。気候危機は、食料生産への打撃は言うまでもなく、災害や地域紛争の要因ともなる。2023年を振り返る対談企画は「今、地球では何が起きているのか」を話し合ってもらった。
深刻な気候の極端化
谷口 観察網の不備ではないんですか。
立花 おっしゃる通りで、最近は人工衛星でかなりわかってきたのですが、海水温は、表面はわかっても深いところには衛星のセンサーが届きません。最近は異常気象がしょっちゅう起こるので、なかなか研究が追い付かないのです。
三重大学教授 立花義裕氏
谷口 研究者を増やすしかないじゃないですか。国も予算を付けて。
立花 そう思います。これだけ気候危機なのに、気候問題を扱える研究者は少ない。特に日本は異常気象が起きやすいので、もっと力を入れるべきです。
谷口 それが一番の国際貢献だと思います。日本の研究は残念ながら地盤沈下し、インドにももうすぐ抜かれますが、もし勝てるとすれば総体としての底の高さでしょう。それをベースにして「アジア・モンスーン地帯のことは任せてください」と。
立花 北米とは違いますからね。小学校、中学校まではいいんだけど、高校に行き、特に3年生になると受験一辺倒で、入試に出ない気候は勉強しない。
谷口 先生も新しいことは教えられません。だから、学校の先生をもっと休ませて、大学に通って最先端の研究にふれる時間を作ればいいんですよ。
立花 それはいいですね。日本は明治以来の教育の積み重ねで裾野は広がっているので、もうちょっと力を入れれば、アジアの他の国より全然強いですよ。
輻射熱で感じる温度
東京大学名誉教授 谷口信和氏
谷口 ところで、私は栃木県で乳牛を500頭ほど飼っている牧場のお手伝いをしています。牧場から毎日、乳量や乳脂率などのデータが送られてくるので見ていますが、牧場でも暑さ対策に苦労しています。今年はファンを最新のものに換えたのですが、コンバーター用のIC不足で設置したファンが回らない。また、気温の日較差が大きいと牛も辛いかと思ったのですが、どうもそうじゃない。日中の高温でバテても明け方に冷えてくると回復するようです。
立花 外気温も大事なんですけど、牛舎の温度も大事です。動物の感じる温度は気温ではなく放射、赤外線放射なんです。屋根が鉄製だと天井が50度になり輻射(ふくしゃ)熱がくるので、熱容量が大きい建材に変えることも考えられます。金属はダメです。そうした考えから、近年は工場の建材も変わりつつあります。
谷口 ありがとうございます。重要な知見が得られました。ところで中山間地域では平地との標高差を生かすことで、小さな畑や田んぼが息を吹き返す可能性があると思うのですが。
立花 いいアイデアですね。
谷口 中山間地といっても地元の人が住んでいるのはせいぜい標高400メートルくらいまでです。700メートルを超えると、住む人も少なく気象に関する知見がほぼない。標高700メートルの長野の高原と帯広の平地の気象条件が似ていて、植生では白樺が出てきます。これまではどちらかというと「中山間地はお荷物」という発想が多かったけど、気候危機のなか、これからは新たなフロンティアとして見直したいと思います。
立花 いい考えです。山を削って畑に、というのはよくないけど、中山間地は耕作放棄地が多く、その活用が期待されます。
【23年を振り返って】気候危機!温暖化から沸騰化へ⑤今後10年で将来左右 立花義裕三重大教授×谷口信和東大名誉教授 へ続く
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