【能登半島地震 進まぬ再建】「創造的復興」生活後回し(1)京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年5月29日
今年1月1日に石川県輪島市などで最大震度7が観測された能登半島地震。今も多くの瓦礫が残り、水道もままならない場所が散見される。大規模被災のニュースも近年相次ぐように感じる。災害に対する備えは万全なのか、「能登半島地震からの復旧・復興――被災者の生活・生業の再建を進めるために」をテーマに地域経済学の視点から地震災害の現場を調査してきた京都橘大学教授の岡田知弘氏に寄稿してもらった。
"移住偏重"の様相に
塞がれたままの道路
進まない復旧作業
能登半島地震発災から早くも5カ月近くが経過した。いまも水道が復旧せず、多くの瓦礫が残り、公費解体が遅々として進まない能登半島被災地の姿に、被災者をはじめ多くの人々が心を痛めるとともに、なぜこのような事態が放置されているのか、疑問をもつ人も多いのではないだろうか。
私は阪神・淡路大震災以来、大きな地震災害の現場を調査し、地域経済学の視点から復興策について提言してきた。今回の能登半島地震の被災地には、2カ月後に初めて訪れたが、過去にない大きな衝撃と違和感を覚えずにはいられなかった。
それは、1000~1500年単位ともいわれる地殻変動や地盤の液状化による奥能登地方の街、農山漁村での大規模な被害状況や農地、農業施設の面的破壊を見たからだけではない。市街地や農山漁村を問わず、復旧作業に携わる人々や重機、家のかたづけをする被災者やボランティアの姿をほとんど見かけず、倒壊家屋等が打ち捨てられたままになっていたからである。
これは、災害の自然的側面での激しさだけでは説明できないものであり、明らかに災害に対する備えや災害時の対応をめぐる国や県の取り組みに問題があったといえる。
備えは万全だったのか
災害に対する備えという点では、国や県による地震想定は低く設定されたままであった。最大規模の地震でも死者7人、全壊建物120棟、避難者数約2780人と想定しており、現実の死者245人、全壊建物8248棟、最多避難者数約3万4000人を大幅に下回っていたのである。当然、避難所や食料・生活用品といった備蓄品も決定的に足りなかったといえよう。志賀原発の防災、避難路の安全対策も甘く、あわや大惨事を招くところであった。
さらに、石川県には、災害時の道路等の啓開計画が存在せず、県内外の土建業者が防災協定に基づいてすぐに駆け付けることができないという決定的な問題も生み出していた。
より構造的な問題として、県も推進した2000年代の「平成の大合併」があり、市町の職員数が大幅に減っていた。ちなみに2005年から20年の間に輪島市では29・9%、115人、珠洲市では28・8%、67人、そして七尾市では31・4%、138人の職員が減っている。県の土木・農林関係職員も同期間に4分の1も減少しており、災害対応力が大きく削減されていたのである。
この結果、災害対応については国や他の自治体からの派遣に依存し、現場ではボランティアの力を借りることになるが、石川県では当初から交通事情を理由に、ボランティアの流入を抑止する対応をとった。しかし、多くの専門家が指摘するように、ボランティアは行政の下請け業務をしているわけではなく、災害現場では必要不可欠な心のケアやコミュニティづくりを行う存在であり、その役割が発揮できていない点が問題となっている。
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