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【ドイツの有機農業を訪ねて】第1回 ビオラント農場クレッポルト 手厚い公的助成金 山口和宏・鳥取環境大学准教授2024年10月23日

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9月下旬の「ドイツの農村スタディツアー」で、国際農民組織ビア・カンペシーナに加盟する中小農民団体「農民的農業のための作業共同体」(AbL)本部と、それに参加する有機農家2戸を訪問する機会を提た。有機農家2戸はいずれもドイツ南部バイエルン州の州都ミュンヘンの北郊にあって、ドイツ最大の有機農業連盟「ビオラント」に加盟し、ミュンヘン市民にいわば地産地消型で有機産品を供給する経営である。ドイツの有機農業について、3回にわたって報告する。執筆担当は、第1回「ビオラント農場クレッポルト」は公立鳥取環境大学の山口和宏准教授、第2回「連帯農業カルトッフェル・コンビナート」は徳島大学の橋本直史講師、第3回「ドイツ最大の有機農業連盟ビオラントの有機農業基準」は農林中金総合研究所の河原林孝由基主席研究員である。(村田武特別編集委員)

伝統的有畜複合を守る有機農場

クレッポルト氏(中央)とその両親

クレッポルト氏(中央)とその両親

経営主のクレッポルト氏は43歳で、農場を10年前に相続している。父親の代からAbLの会員で、農場の有機農場化は40年前にさかのぼる。

周辺農家の離農で農場の経営面積は120haに増えた。半分は小作地である。耕地は100ha、草地が20haである。

栽培されている作物は、小麦・ディンケル(スペルト小麦)・ライ麦・大豆(食用)・トウモロコシ(実取り)で、畜産は肉牛繁殖が主で、50頭の「まだら牛」(バイエルン州独特の茶色がまだらに混じる乳肉兼用種で、ホルスタインよりやや小型)を飼育している。父の代は、黒牛(スコットランド系のアンガス種)だけであったが、徐々に飼育が楽な「まだら牛」に転換している。牛は牛舎と草地を自由に行き来する。牛舎の牛ふん尿は堆肥化され、農地に撒布される。堆肥はこの牛ふん堆肥に加えて、残りは植物と鶏ふんである。有機鶏ふんが25%混入されており、近くの有機養鶏場と連携している。化学肥料はいっさい使っていない。堆肥の余剰分は、近隣のビオラント加盟農家に供給している。

まだら牛の放牧

まだら牛の放牧

耕地利用の基本は、牧草(クローバ)2年間→小麦→実取りトウモロコシ(実を取った残りは土にすき込む)→大豆という輪作体系であるが、天候や市場状況によって、柔軟に対応している。輪作のポイントは、穀物作の間にマメ科をはさむということにある。除草剤も殺虫・殺菌剤もまったく使われていない。収穫した穀物は、父が30年前に作った300tの乾燥施設で乾燥・保管される。自家製粉後の小麦のもみ殻は畜舎の敷料に利用されている。

農作業の労働力は、経営主本人が中心で、研修生と農繁期にはアルバイトを雇用することでまかなっている。トラクターは父の代からのも合わせて10台もあるが、コンバイン収穫はマシーネンリンク(機械サークル)に委託している。有機栽培にともなう生産コストは、慣行農法に比較してそれほど高いわけではない。というのも、慣行農法で必要な2回の化学肥料撒布と1ha当たり3ユーロの農薬が有機では不要である。必要なのは、畝立てと播種の作業時間の手間だけである。

堆肥舎

堆肥舎

農場内販売店を加えて有機作物の有利販売

小麦の場合、慣行農法では1ha当たり10tの収量をめざすが、有機農法ではたんぱく質の高いものをめざすので収量は低く、6~8tである。しかし、小麦の販売価格は、通常は100kg当たり20ユーロ(1ユーロ150円では3千円)であるが、有機小麦は同40ユーロ程度になる。この農場では、自家乾燥した小麦を25kg単位で、パン屋や加工業者に直接販売(25kg35ユーロ)している。

農場内店舗は、木・金・土の3日間の営業である。有機穀物類、牛肉、野菜に加えて、近隣の有機農業連盟ビオラント会員の農場の産品(牛乳・チーズ・ワインなど)を加えて、品ぞろえされている。近隣集落やミュンヘン市民にとって、貴重な有機産品店舗になっている。

山口和宏・鳥取環境大学准教授山口和宏・鳥取環境大学准教授

州やEUの補助金が支える有機農業

インフレの進行は有機農業にとって悩ましい。有機産品の高価格にともなう消費者離れが避けがたい。ディスカウント・スーパーの低廉有機産品に消費者が流れていることもある。

いまひとつは、気候変動である。この地域の年間平均降水量は安定的に850ミリで、ドイツ国内では降水量は多い方だ。ところが、近年では、降水量が年によって大変不安定で、去年・一昨年は干ばつ、今年は大雨に見舞われている。地域内で野菜やジャガイモを生産している農家のなかには、すでに灌漑(かんがい)施設の設置に投資している農家もある。クレッポルト農場も灌漑施設の導入を迫られる可能性がある。

経営主のクレッポルトさんは「これまでのところ、有機農業は経営的に安定している」という。ただし、年間の休暇はわずか6日だという。しかも、経営の安定を支えているのは、バイエルン州やEUの補助金である。バイエルン州の環境農業特別支払い1ha300ユーロに加えてEUの直接支払い同300ユーロ、合計すると1ha当たり600ユーロを受け取っている。120ha経営のクレッポルト農場が受け取る助成金は合計7万2000ユーロ(1080万円)にのぼる。これは同農場の農業所得の半分近くになるであろう。EU域内でイタリアに次ぐ有機農業大国ドイツの有機農業も、公的助成金に支えられているのである。

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