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トランプ再登場、どうする日本の防衛と食料 田代洋一・横浜国大名誉教授2025年1月30日

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トランプ氏の再登場により、米国の覇権争いは新たな局面を迎え、日本の立ち位置も問われている。防衛だけでなく、食料安全保障の観点から日本はどのように対応すべきか。横浜国大名誉教授の田代洋一氏に寄稿してもらった。

トランプ再登場

ホワイトハウスWebサイト(https://www.whitehouse.gov/)より

ホワイトハウスWebサイト(https://www.whitehouse.gov/)より

大統領に返り咲いたトランプは、初登場の時とは全く異なる状況にある(表1)。2016年、彼は勝つことは勝ったが、州ごとに選挙人を総取りできるという合衆国特有の選挙制度のおかげであり、総得票数では民主党クリントンに負けていた。それが今回は総得票数でも勝ち、名実ともに大統領になった。米国国民は、トランプの言動、人柄、性癖等を承知したうえで、それでも彼を選んだ。その意味で「米国はトランプに代表される国」になった。

米国国民はなぜトランプを選んだのか。バイデン政権によるコロナ対策の厖大(ぼうだい)な財政支出がインフレを引き起こし、多くの人びとの生活困難を強め、深刻化していた経済格差の亀裂をさらに深めたからだ。

近年の米国大統領選挙結果

近年の米国大統領選挙結果

戦後の歴史を振り返ると、米国は、冷戦期に多くの国と軍事同盟を結び、覇権国家として「世界の警官」を任じてきた。この米国による「平和」の下で日独等が超高度成長し、その結果、米国は工業の国際競争力を失った。

そこで変動相場制下で基軸通貨としての特権を利用してドルを刷りまくり、過剰マネーが世界中を駆け回って稼げるようするために、新自由主義的グローバル化を追求した。

こうして米国はモノづくりの国から金ころがしの国に転じ、今や、金融等の対人サービスを除く物質生産(鉱工農、建設、交通)がGDPのたった2割の国になってしまった。米国は21世紀に入り死亡率上昇、平均余命低下、高い乳幼児死亡率等で凋落に向かっている(E・トッド『西洋の敗北』)。

代わって中国が世界のモノづくり等を一手に引き受けて急成長し、今や米国の覇権を脅かすに至った。その時に登場したのが1期目のトランプだった。

覇権の争奪戦

2期目のトランプの主張は大統領就任演説に明確である(1月22日朝刊各紙)。曰く「非常に明快に米国を第一にする」、「米国は再び製造国になる」(これは正しいが不可能)、「グリーンニューディール政策、電気自動車の普及を撤回」「米国民を豊かにするために関税を課す」「外国歳入庁、政府効率化省を設立」「性別は男女の二つのみ」「世界がこれまで見たことがない最強の軍隊を再構築」(これは2回も)、グリーンランドやパナマ運河の取り戻し、WHO(世界保健機構)や地球温暖化に対するパリ協定等からの離脱。そして「米国は不可能を可能にする」と宣言する。

なお、トランプは関税を切り札にするなど、反新自由主義のポーズをとるが、それは「取引」の道具に過ぎず、本質は新自由主義的であることは閣僚構成からも明らかだ。

そもそもグローバリゼーション(地球を一つに結んで地球的課題に取り組む)とグローバリズム(世界覇権主義)を分けて考える必要がある。トランプは地球温暖化やWHOを通じる新型感染症防止といったグローバル課題を放棄して「米国第一」を追求し、「世界の警官」はやめるが(言い出したのはオバマ)、「最強の軍隊」すなわち「力による平和」を追求することで覇権国家たり続けようとする(グローバリズム)。

米国がグローバル課題に背を向けるのに対し、習近平は地球温暖化防止や自由貿易の促進を口にして米国に取って代わろうとし、米国が求めるロシアへの経済制裁にグローバル・サウスは必ずしも従わない。中ロはグローバル・サウスへの接近を通じて覇権を狙う。

では米国がどうやって覇権を維持するのか。それは、米国の軍事力に依存する弱みを持つ日欧等の同盟国に対して収奪を強め(対中国赤字を上回る対同盟国貿易赤字を減らす)、覇権(最強の軍隊)コストの負担を押し付け(GDP比3~5%)、同盟国への監視を強めることによってだ。

田代洋一・横浜国大名誉教授

田代洋一・横浜国大名誉教授

日米安保を相対化する

ここでようやく本題に入る。北東アジアにおいて韓国の政治不安が高まる中で、米国にとって覇権争いの最前線にたつ同盟国としての日本の価値が高まっている。

トランプは「ディール(取引)」を至上とするが、それは「恫喝」の言い換えに過ぎない。トランプはやくざの「脅し役」と「すかし役」の一人二役を演じる。そして恫喝は米国に弱みをもつ国に対して最も有効である。

それが日本だ。米国の「核の傘」、日米安保に防衛を委ねているからだ。マスコミ論調は、それを大前提として、トランプの下での同盟強化を訴える。しかし、米国が覇権国家からずり落ちつつある時、そして中国の超音速ミサイルが空母による台湾等防衛を時代遅れにしつつある時、「米国第一」とは「米国防衛第一」のことであり、米国は自国の危険を冒してまで他国を守る気はない。どころか日本(の米軍基地)は最初の攻撃対象になる。

世界の将来は覇権国家の交代か、それとも多極化か。前者が平和裏に進行する保証は無い。日本は欧州やアジアとの連携を強め、世界の多極化、覇権支配の食い止めに貢献すべきだ。

国を守る元は食料と国土

米国の対日要求は、冷戦時には「アンポか牛肉か」の二択(安保で日本を守る代わりに牛肉を自由化しろ)だったが、今や「アンポも牛肉も」の両方になった。

それに対して石破茂首相は、要求される前から防衛予算の増大を口にしている。これはもう「ディール」以前の問題だ。2025年度当初予算案では、防衛関係予算は前年度から9.4%増だが(一般会計の7.5%)、農林水産予算は0.1%増にとどまる。これが、新基本法を改定するという最後のカードを切ったあげくの結果だ。一般会計予算に占める割合は1.9%とついに2%を割った。これでは国内生産の増大による食料安全保障の強化は望めず、結果的に「アンポも牛肉も」に応えることになりかねない。

1期目のトランプは、TPPから離脱して日本を二国間交渉に追い込み、日米貿易協定を結んだ。しかしそこでの市場開放の水準はTPPを超えるものではなく、とくに牛豚肉のセーフガード発動基準やコメが交渉外だったことは米国に強い不満を残した。

ロシアが農産物の純輸出国化する一方で、米国はいずれ輸入国に転じる。トランプの対中国高関税は大豆で報復され、米国は市場を失った。再度の高関税は米国の農産物輸出市場をさらに狭め、同盟国への輸出圧力を強めるだろう。

地球温暖化の中で日本はいよいよ災害列島化した。「国を守る」とは防衛予算の突出的増大なのか、それとも食料自給率向上や国土保全を軸にして食料安全保障を強めることなのか。トランプの再登場は、それを考える機会を日本に与えてくれた。

冒頭「米国はトランプに代表される国」になったとしたが、それは間違いだ。トランプとハリスの得票率差はたったの1.5ポイント。日本がトランプに唯々諾々と従うことは、米国を変えることにもつながらない。

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