「TPPは産業空洞化を促進」 自民党・小里農林部会長2013年2月13日
自民党の農林水産戦略調査会の農林水産貿易対策委員会が2月12日に開かれた。政府からTPPへの対応状況について説明を受け議論した。
自民党の農林水産戦略調査会(中谷元会長)は、総合農政・貿易調査会を改称し林産物の調査会と合わせて設置されたもので、農林水産政策を全般的に議論する。同会の下に設置されたのがこの日開かれた農林水産貿易対策委員会。委員長には衆議院議員で「TPP交渉参加の即時撤回を求める会」会長の森山裕氏が就任している。 調査会の中谷元会長はこの委員会について「わが国の農産物の自由化、輸出も含め対外的な貿易問題について幅広く議論するため設置した。
本来なら自由化交渉はWTO(世界貿易機関)という全世界の協議の場があって、そこで世界共通のルールを作ってきた。現在はEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)が進み、またTPP(環太平洋連携協定)の議論も進んでいるが、経済のブロック化から第1次、第2次大戦になったように世界共通の国際ルールが崩れつつあるのではないかと個人的には心配している。
TPPだけの議論が一人歩きするのではなくて、現行の制度でも多くの不安を抱えている方々がたくさんいる。この場でしっかりと議論し意見をまとめて間違いのない農政ができるようお願いしたい」などと述べた。
この日の委員会ではTPPの現状について農水省などから説明を受けた後、議論をしたがTPPについての基本認識を問う意見が相次いだ。
党の農業基本政策検討PTの宮腰光寛座長は、民主党菅政権時に当時の前原外相が「日本のGDPにおける第1次産業の割合は1.5%。1.5%を守るために98.5%が犠牲になっている」という発言を取り上げ、欧米でも1%台であることなどを改めて指摘し「(前原発言の背景にはTPPを推進してきた)外務省に98.5%が犠牲になっているという意識が根っこにあるのではないか。改めてもらいたい」と強調した。
また、小里泰弘農林部会長はTPPがめざす例外なき関税撤廃と投資環境の整備について、これは海外に進出しようとする輸出企業にとっては工場の海外移転などの利益があるものの、「工場移転で国内から雇用が奪われ、また、ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)で市場もこじ開けられる。国内産業はふんだりけったり」と問題を指摘、TPPに参加しなければ産業が空洞化すると推進論者が主張するのとは逆に「TPPに参加すると産業が空洞化する」と指摘した。
これに対して経済産業省の担当者は組み立て工場が海外移転をしても「日本国内から部品など中間材の輸出増も考えられる。必ずしも空洞化に直結しないのではないか」と説明した。
小里部会長は委員会終了後、この経産省の説明について「中間財では輸出増にはならない。むしろ国内から国内工場に供給したほうがコストは安く雇用にもつながる。TPP参加のほうが産業空洞化につながる」と強調した。
そのほか委員会では安倍首相が国会で関税撤廃の例外が認められるかどうか、日米首脳会談の場で確認するとの趣旨の答弁をしていることについて「聖域なき関税撤廃に反対、という1項目だけが表に出るのがとてもあやうい」、「(TPPに対する選挙公約)6項目を守らなければ自民党に明日はないと考えるべき」などの意見も出た。
※TPPに関する自民党の6項目: (1)聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対、(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、(3)国民皆保険制度を守る、(4)食の安全安心の基準を守る、(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、(6)政府調達・金融サービス等は国の特性をふまえる。
(関連記事)
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