TPP、「影響試算」は参加判断の材料ではないとの認識 林農相2013年2月22日
林芳正農相は2月22日の記者会見で、政府が統一して示そうとしているTPP交渉で求められる合意を受け入れた場合の「影響試算」について、「これがなければ交渉参加の判断ができないという性格のものではない」と述べ、参加判断は政権公約で掲げた6項目であることを強調した。
これまで影響試算は前政権時に農水省、経産省、内閣府が示している。農水省は関税を撤廃した場合、農林水産物の生産額は4兆5000億円減少し、カロリーベースの食料自給率は13%にまで低下するとの試算を示していた。現在は政府としての統一的な影響試算を示す作業が進められているとみられている。
この影響試算について林農相は会見で「交渉に入った場合にどういう影響が出るかということ。入るか入らないか、それはかねがね示している6項目がある。それが公約でありわれわれの考え方だから、あれに基づいてどう判断するかということ」と話したほか、「いろいろな判断の前にこの試算があることが望ましいか言われれば望ましいと思うが、これが必要条件であると申し上げてきたのではない」と述べた。
試算については「事務的に急いでやってもらっているがまだ確定版が出てこない」、「試算はなるべく早く出す」と述べるにとどまり、提示時期の見通しは示さなかった。
一方、日米首脳会談については「総理がきちっと大統領とお話になってまずは聖域なき関税撤廃が前提となるか否かを確認する。まずそのことを確認できるかどうか。その会談結果をふまえて米国政府の立場や参加した場合の影響を精査していく、これが必要になると思う」と述べたが、会談結果によっては影響試算とそれに基づく議論を経ないまま、参加判断する可能性も考えられる。
その参加判断基準となる公約は
(1)聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対。
(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険は守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうようなISD条項(投資家対国家紛争解決手続き)は合意しない。
(6)政府調達・金融サービス等はわが国の特性をふまえる――の6項目だ。
このうち安倍首相は(1)に関して今回の首脳会談で、聖域があるかないか感触を確かめるとの発言を繰り返してきた。この点について「聖域なき関税撤廃を前提にする限り」とは「交渉参加前に例外を勝ち取れるという確約」なのか、「交渉の結果、例外を勝ち取る可能性がある」との意味も含まれるのかとの質問が出た。
これに対して林農相は「これはもうこういう文言で公約している。その文言以上でも以下でもない」、「こういう解釈であるとか、そういう解釈はよくないということを申し上げることは適切でないと思う」と述べるにとどまった。
(関連記事)
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