"介護食品とは何か" 農水省が「論点整理の会」設置2013年3月1日
高齢化の加速とともに介護人口が増加する中、今後「介護食品」のニーズはより高まることが予想される。そこで農水省は介護食品の現状や課題、今後の対応方向を考えていくため、医療関係者やホームヘルパー、学識経験者などを構成員に「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」を設置し、その第1回会合を2月27日に開いた。
現在500万人以上いるとされる要介護者などの人数から想定した介護食品市場のニーズは約2.5兆円と試算されるが、現時点での市場規模は約1000億円に留まっている。あいさつのなかで針原寿朗食料産業局長も「この2兆4000億円の差は家族の苦労の塊ではないか」と話し、この潜在的なニーズへの対応が課題となっていると強調した。しかし、現在「介護食品」には具体的な定義づけがないため、その用途や種類はさまざまで曖昧だ。
こうした介護食品のあり方を検討していくにあたって、まずは現在の論点を明らかにするため、同会では今後、「介護食品とは何か」という定義を含めて整理していく。
◆市販向けへのニーズ対応も
この日は委員それぞれの立場から現在の「介護食品」の課題や提案が出された。
現在、介護食品市場の8割強が業務向けとなっているが、在宅介護に対応した市販向けをすすめるべきとの意見が多数あった。
迫和子・日本栄養士会専務理事は「介護施設には管理栄養士がおり、一人ひとりの身体状況に応じた食事が提供されている。業務用ではなく在宅介護など一般向けですすめていくべきなのでは」と述べ、武見ゆかり・女子栄養大学大学院教授も在宅利用の推進を課題に挙げ、「高齢者の口腔状態を知り、適切な介護食品の利用につないでいくことが重要」だとして、そのためには“介護食とは何か”という「モノ」としての基準づくりと合わせて、適切な利用を判断する仕組みづくりを強化していく必要性を強調した。
また、在宅での利用を中心に考えると「完成品ではなく調味だけ自分でできる半加工品のような商品にニーズがあるのではないか。自分の手を加えるといった身体活動が脳の活性化にもいいこともわかっている」と述べた。
そのほか、介護食品にもより安全で新鮮なものを求めたいとして「地産地消と介護食がつながってほしい」、また、食事のバラエティも求められるとして「原価が高い食材は介護食品に取り入れられにくい。畜産物のメニューなどもできるよう関係業界と連携してほしい」(ジャーナリスト・増田淳子氏)との意見もあった。
座長の岩元睦夫・日本フードスペシャリスト協会会長は委員から出された意見からみえてきた共通の問題点として(1)高齢者の栄養状態や食事状態を平均のデータで考えるのではなく個別対応していくことが必要、(2)認知度の低さ、(3)施設利用か在宅利用か、(4)定義の基準をどうするか(硬さや粘度などの数値評価だけでいいのか?)、(5)流動食や嚥下食などさまざま食品と制度がある中でどう定義していくか、の5点を挙げた。
第2回目は3月下旬に開き、6月までに論点をまとめる予定にしている。
(表)
10年で要介護認定者数は2倍以上に増加している(出典:厚労省 介護保険事業状況報告)
(関連記事)
・介護事業強化めざし介護用品販売店舗を開所 JAあしきた (2012.10.22)
・高齢者食宅配、2割拡大見込み 富士経済 (2012.08.14)
・市販用介護食の生産伸びる 日本介護食品協議会 (2012.07.25)
・高齢者のヤセは肥満より短命!? 「元気高齢者」をどう増やすか (2012.07.23)
重要な記事
最新の記事
-
2024年の農業就業者は180万人 前年比7万人減 総務省・労働力調査2025年1月31日
-
備蓄米の買い戻し条件付き売り渡しを諮問 農水省が食糧部会に2025年1月31日
-
殺処分対象911万羽 鳥インフルエンザ 国内48例目 愛知県で確認2025年1月31日
-
"人財"育てチームで改革(1) JAみえきた組合長 生川秀治氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年1月31日
-
"人財"育てチームで改革(2) JAみえきた組合長 生川秀治氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年1月31日
-
【世界の食料・協同組合は今】EU環境戦略の後退と戦略的対話 農中総研・平澤明彦氏2025年1月31日
-
【クローズアップ 畜産・酪農対策】生乳需給参加が事業要件 「欠陥」改正畜安法是正へ農水省方針2025年1月31日
-
(420)「いまトラ」をどう見るか【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年1月31日
-
GI取得「かづの牛」など農産物・加工品6産品 農水省2025年1月31日
-
いちご観光農園「熊本あしきた いちごの森」オープン 「ゆうべに」「恋みのり」食べ放題 JAあしきた2025年1月31日
-
シャキッと甘く 高級かんきつ「甘平」出荷始まる JAえひめ中央2025年1月31日
-
全国の魅力的な農畜産物・加工品が勢ぞろい JA全農が商談会2025年1月31日
-
岩手県から至高の牛肉を「いわて牛・いわちくフェア」2月1日から開催 JA全農2025年1月31日
-
「国産米粉メニューフェア」銀座みのりカフェ・みのる食堂で開催 JA全農2025年1月31日
-
「はこだて和牛」など味わえる「JA新はこだてフェア」2月1日から開催 JA全農2025年1月31日
-
「ニッポンの食」で応援 全日本卓球選手権大会(ダブルスの部)に特別協賛 JA全農2025年1月31日
-
蔵出しミカンの出荷始まる 食味良く大玉傾向 JAふくおか八女2025年1月31日
-
サカタのタネの春キャベツ「金系201号」発売60周年 JA全農かながわがPRイベント開催2025年1月31日
-
数量増、金額増 緑地・ゴルフ場向け農薬出荷実績 2024農薬年度2025年1月31日
-
北海道と熊本県内に無料RTKサービスの提供開始 HOSAC2025年1月31日