TPP「引き続き総力挙げて反対」 JA全中通常総会での会長所信2013年3月8日
JA全中は第59回通常総会を3月8日、都内で開き、萬歳章JA全中会長が所信を述べた。
開会のあいさつで萬歳章JA全中会長はJAグループが直面する重要課題について(1)TPP交渉参加問題への対応(2)農政改革への対応(3)地域のライフライン機能発揮にむけた取り組み(4)JA経営の基盤強化に向けた取り組み(5)国民の食料・農業・JAに対する理解醸成にむけた取り組み―の5点を挙げた。
(1)では、「われわれの暮らしやいのちなどさまざまな分野に影響を及ぼし、わが国の仕組みや基準を一変しかねない極めて重大な問題であるにもかかわらず、徹底した情報開示や国民的議論が行われず国民が納得できないまま政府が拙速に交渉参加に突き進むことは断固として反対」だとして、引き続き組織の総力を挙げて徹底した運動を展開していくと強調した。
(2)では、持続可能な農業の実現に向け、東日本大震災の教訓を踏まえた農業復権の具体化、自給率向上運動に取り組む必要があるとして▽原発事故に伴う損害への万全な賠償、▽水田農業・畜産・酪農計画の確立、▽安全・安心な農畜産物の供給、生産体制の構築、▽地域営農ビジョン運動を通じた農地フル活用と新たな地域農業の担い手の育成、▽6次産業化の促進による販売事業戦略の展開などへの取り組みを挙げた。
(3)では組合員・地域住民が豊かで暮らしやすい地域社会の実現に向け、食農教育や都市・農村交流事業の展開、医療・介護事業による地域セーフティネットの構築、将来の脱原発に向けた循環型社会の構築をめざすとした。
来賓の江藤拓農水副大臣は林芳正農相の祝辞を代読し「先日、萬歳会長からTPP交渉参加におけるJAグループの考え方に対する申し入れをいただき意見交換させていただいた。その際、安倍総理に、これは非常にセンシティブな問題であるので慎重に丁寧に対応するよう要請するとともに、中長期的に重要品目が守られる安心感があることが重要であると説明し、総理もそれを承知した旨を萬歳会長に伝えた。
農業団体だけでなく地方工業団体などからも不安な声が多数寄せられているなかで、与党では守り抜くべき国益の議論が行われている。わが国の農業と国民の食料を守る責任者である農林水産大臣としてこのような議論を踏まえ、皆様方の意見を十分にうかがいながら対応していく」と述べた。
また、全国農業会議所の二田孝治会長は「TPP問題は大変緊迫している。いったい重要品目とは何を指すのか、このことをまず明らかにしてもらいたい。国益とは単なるGDP上昇の数字に示されたものではない」と述べ、ともにこの難局を乗り越えていくとしたほか、日本生協連の浅田克己会長は「お互い大事にしてきたことを学びあいながら次代につなぐことのできる協同を一緒つくっていきたい」などと述べた。
総会では「TPP交渉参加断固反対に関する特別決議」を満場一致で採択した。
(写真)
開会のあいさつで所信を述べる萬歳全中会長
【TPP交渉参加断固反対に関する特別決議】
安倍総理は、日米首脳会談後の記者会見で、TPP交渉が「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」との認識を示した。
首脳会議の共同声明は、TPPの特徴である「聖域なき関税撤廃」を前提にしたものとしか理解できず、政権公約で示された6項目の判断基準が満たされたとも考えられない。このようななかで、拙速に交渉参加に突き進むことには断固として反対である。
政府が、あくまで「聖域なき関税撤廃が前提ではない」という認識に立つのであれば、米、麦、牛肉、乳製品、甘味資源作物など、我が国農業における重要品目の除外が担保されなければならない。
TPP交渉は、農業だけの問題ではない。ISD、食の安全・安心、医療、保険など、我が国の在りようを一変させる重大な問題を含むものであり、政権公約としての6項目全てが確実に遵守されなければ、国民との約束を果たしたことにはならない。
政府は、こうした我々の主張や与党の方針等をふまえ、守るべき国益をいかにして守っていくか、明確な方針を国民に示さなければならない。
我々は、今後とも、広範な国民各層の連携を深め、日本の食と暮らし・いのちを守るため、組織の総力を挙げて徹底して運動していく所存である。
以上、決議する。
(関連記事)
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