【TPP】TPP対策委員会のとりまとめ報告2013年3月14日
自民党のTPP対策委員会で3月13日に報告された各グループのとりまとめを掲載する。
【TPP対策委員会第一グループとりまとめ報告】
平成25年3月12日
TPP交渉参加に関するTPP対策委員会第一グループは3月8日及び11日に会合を行い、外交関連事項において仮に交渉参加を決断する場合に踏まえるべき点について集中的に議論を行ったところ、主に以下のような意見があった。
●各国の交渉団の体制やTPPの交渉方式を十分に踏まえ、「GDP世界三位の国力を活かせる強いチーム」を編成し、しっかりとした体制で交渉に臨むべき。
●今後、党としては、議員外交を活発化するとともに、情報収集を強化するとの観点から、与党としてもTPP交渉参加国等を訪問して情報収集を行うべき。
●現参加国と我が国が締結している既存のEPA/FTAや、交渉中の日豪EPA等との関係、また、他のTPP交渉参加国間の既存のEPA/FTAの内容も踏まえつつ、交渉を進めるべき。
●通商交渉において守りに徹するのではなく、攻めるべき点は攻めるべきとの観点から、ジョーンズ法や米国の国内補助金について議論をした。他の交渉国にも我が国として攻めるべきと考えられる点があるところ、不公正貿易報告書や日米経済調和対話で我が国が主張している点も踏まえつつ、我が国として各国に対して攻めるべき点は攻めるべき。
●メディアの関係で、放送法上の外資規制やいわゆる再販制度につき議論し、外資規制については、諸外国にも類似の制度があることが確認された。いずれにせよ、現時点でTPPの関係では、本件が必ずしも議論されているわけではないとの確認がなされた。
●強い日米経済と、日米の緊密な信頼関係が、アジア太平洋地域の発展に不可欠であるという大きな絵姿を、TPP交渉の基本的な認識に据えるべき。
●TPPで議論されている分野ごとに、我が国の位置づけを確認し、どの国と連携を組むことが出来るのか戦略を持つべきとの意見があった。
●政府と与党が一つのポジションで戦うとの観点から、政府をきちんと支援できる体制を作るべき。
●その他、交渉参加及び条文案入手のタイミング、ルール作りに間に合うのか、合意済みの点について再協議出来るのか、漁業補助金や経済影響試算等についても質疑応答が行われた。
以上
◇ ◇
【TPP検討委員会第二グループ】
[5]ISD条項
・ISD条項は、我が国企業による新興国投資の安定性・安全性を高める利点がある。他方で、司法制度が整備された先進国間では本来必須のものではなく、むしろ、我が国が訴えられる危険性が高まる可能性、国内投資家に比して海外投資家を過度に利する恐れを包含している。
・この点、我が国は、TPP交渉参加11か国中の新興国との間では、既に投資協定あるいは投資協定を含む経済連携協定を有しており、TPP交渉の中でISD条項を勝ち取らねばならない必然性を現時点では有しておらず、ISD条項の除外を前提に交渉に臨むべきである。
・仮に、ISD条項が不可避となる場合には、濫訴防止策や明確かつ合理的な付託基準を求めるべきである。
[6]政府調達・金融サービス
〈政府調達〉
・我が国は、既にWTO政府調達協定に加盟しており、当該協定に加盟していない国々の政府調達を開放させる意味で、TPPにおける政府調達協定には、一定のメリットがある。
・ただし、我が国の対象範囲だけが広範なものとならないこと、歴史的経緯からWTO政府調達協定の対象となっているJRやNTTは、TPPでは対象となる根拠を失っていることを確認すべきである。
・また、政府調達の対象金額については、今後国土強靭化政策により公共事業の発注額が増えることなども踏まえつつ、参加国に共通に適用される単一のものとするか否かにかかわらず、現状維持を前提とすること。
〈金融サービス〉
・金融サービス分野については、外資出資規制や進出形態の制限など、交渉参加国のうち特に新興国市場へのアクセス確保を目指すべきである。
・郵貯、かんぽ、共済については、既に民間金融機関と同等の規制のもとに置かれているうえに、地域の雇用確保といった大きな社会的役割も有しており、不当な開放要求には応じないこと。
・なお、我が国は世界に冠たる金融自由化先進国であるが、その結果として、日本の保険会社の海外投資が18%に対して、外資保険会社は50%を海外に投資しているなどの状況も見られることから、国内の貴重な金融資産をできるかぎり国内に還流させる施策・仕組みについて政府において真剣に検討すること。
○公営企業等と民間企業の競争条件
・交渉参加国中のいくつかの国々の国営企業をめぐって議論があるとの情報があるが、国営企業の定義を明確化する必要がある。
・JT、NTT等は、競争上の観点ではなく、それぞれの政策上の観点から国による株式保有が行われているものであり、その特性をきちっと踏まえた議論を行うこと。
○事務所開設規制、資格相互承認等
・公認会計士、税理士をはじめとした資格制度について、我が国の特性を踏まえること。
○なお、総論として、TPPにおいて守るべき国益は、他の二国間協議や国内の政策論議の中でも守られるべきであること、脱退規定の導入を交渉における必須条件とすべきこと、戦略論として、我が党として示した条件については、英訳してアメリカ議会にも送付すべきとの意見があったことを付記する。
◇ ◇
【TPP対策委員会 第3グループ(厚生労働)で出た論点】
H25.3.12
(医療保険制度)
○我が国の公的医療保険制度の根幹である国民皆保険制度を堅持することや、混合診療の全面解禁や営利企業の医療参入を認めないことなど、我が国の安心・安全な医療が損なわれないように対応すること。
(医薬品)
○医薬品価格ひいては医療費全体の高騰をまねくような薬価制度の改悪を受け入れることがないようにすること。
(食の安心、安全)
○WTO・SPS協定で認められた食品安全に関する措置を実施する権利の行使を妨げるような提案は受け入れないよう対応すること。また、科学的根拠に基づき我が国の食品の安全が保たれるように対応すること。
(医師、看護師等の資格の相互承認)
○医師、看護師等の資格制度は、必要な専門的な知識や能力を踏まえて設けられているものであり、その制度趣旨を踏まえ、資格の相互承認には慎重に対応すること。
(その他)
○いわゆる「攻めるべき分野」については、政府において、考えを精査し、交渉の過程においてしかるべく働きかけるべきであること。
○なお、ISD条項などを通して、我が国の医療保険制度が脅かされることのないよう対応すること。
◇ ◇
【TPP対策委員会第4グループとりまとめ】
○日本農業の現状とあるべき姿
長期的な世界の食料需給のひっ迫、国内においては、高齢化の進展、地域経済の疲弊等の厳しい状況の中で、農林水産業が、将来にわたって国の礎となり、今後も若者が参入し、持続的に発展できるよう、農林水産業者をはじめ関係者が一丸となって取り組んでいかなければならない。このため、従来の枠にとらわれず、構造改革の加速化と耕作放棄地の解消、食料自給率の向上、集落営農の推進など多様な担い手の育成、国際競争力の強化や輸出の飛躍的拡大、新規需要米の拡大をはじめ需要に応じた生産構造の実現を図り、豊作の喜びが実感でき、消費者・国民にも支持される力強く安定的な農林水産業と多面的機能が発揮できる農山漁村の実現を図る。
○TPPでの日本の主張
地理的制約等から、構造改革や輸出の促進等を最大限行っても、生産性の向上や新規需要の開拓には限界があり、仮に我が国農林水産業が各国との競争にさらされれば、一次産業に壊滅的な打撃を与えることは必至である。そもそも国民の生存権に関わる食料安全保障・多面的機能維持の理念と市場経済の原則とは一線を画すべきである。
我が国は、これまでのEPA/FTA交渉において、多くの重要品目について必要な国境措置等を堅持してきたところであり、TPP交渉参加の是非の判断に当たって、多様な農業の共存を実現するためにも、守り抜くべき国益について、以下のとおり確認する必要がある。
米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象となること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない。
また、国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること。
○漁業補助金
漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること。仮に漁業補助金につき規律が設けられるとしても、過剰漁獲を招くものに限定し、漁港整備や所得支援など、持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、更には震災復興に必要なものが確保されるようにすること。
○食の安全安心の基準
残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、BSE基準等において、食の安全安心及び食料の安定生産が損なわれないこととし、政府及び農業者もこの実施に努めること。
○ミニマムアクセス米
国内外の情勢の変化にかんがみ、ミニマムアクセス米の対応について検討していくこと。
なお、仮にTPP交渉に参加した場合であっても、以上の農林水産分野におけるコアとなる主張が受け入れられない場合には、TPP交渉から脱退も辞さないものとすること。
◇ ◇
【TPP対策委員会 第5グループとりまとめ】
1.日本の産業政策として目指すべきこと
日本が成長するために、海外の成長を取り込むインフラの整備が求められている。
具体的に、実現すべきことは次の通りである。第一に、国内外無差別のグローバル・サプライチェーンの一層の高度化・強靭化によって、日本のものづくり力を高めること。第二に、我が国中堅・中小企業が国際的に活動する際の共通のプラットフォームをつくること。第三に、クールジャパンをはじめソフト分野で日本の強みを発揮できるサービス業の海外展開を支援することである。
2.工業製品の高関税品目への対応など
(1)工業製品のTPP各国関税等
TPP交渉参加国の中には、乗用車、トラック、液晶テレビ、蓄電池などに対して高い関税を課している国が多い。一方で、日本の鉱工業品等の関税率は極めて低い水準であり、例えば、貿易加重平均関税率ではTPP交渉参加11か国と比較するとシンガポールに次いで低い。したがって、日本としては我が国の製品に対する高い関税障壁の撤廃を求めるべきであり、自由貿易の理念に反する工業製品の数値目標は受け入れるべきでない。
(2)日米の自動車問題等(安全基準・環境基準・数値目標等)
自動車に関しては、米国は日本の技術基準および認証手続きや規制策定過程の不透明性
などを非関税障壁と捉えているが、米国車の日本国内販売がふるわないのは、投入車種数やディーラー数が少なく、米メーカーの営業努力不足も否定できない。そこで日本は、関
税の撤廃を求めると同時に、排ガス規制、安全基準等の原則をまげないこと、軽自動車の存続を図ること等を主張すべきである。
3.成長著しいアジア太平洋地域でのルールづくり
域内において共通のルールをつくり、貿易や投資のバリアフリー化を実現することで、将来に亘って我が国の国益の増大を図る基盤をつくるべきである。
具体的には、広域的で企業にとって使いやすい原産地規則の実現、出店規制の緩和によ
る日本企業の海外展開支援、デジタル製品に関税を賦課しないルールの整備、模倣品・違法コピー等の取締り厳格化によるブランド力強化、不当な環境・労働規制の緩和の防止、交渉参加国の政府調達市場の開放、投資リスクの軽減、税関手続きの統一化・簡素化による企業負担の軽減などのためのルールづくりにより、貿易や投資を促進し、わが国企業の成長を支援すべきである。
4.米国産シェールガスの輸出・入
シェールガスの確保は我が国のエネルギー政策にとって極めて重要であり、米国の天然ガス法に基づく輸出制限がFTA締結国に対して実態上緩和されることを念頭に、米国からのシェールガス輸入を促進するために日本はTPPに参加すべきとの議論があるが、シェールガスの輸入については、現在すでに米国との交渉が進められており、TPP交渉参加とは切り離して、推進すべきである。
以上
◇ ◇
【TPP21作業分野に対する検討会での議論結果】
平成25年3月13日
TPP21作業分野に対する検討会
TPP協定は、非関税分野や新しい分野を含む包括的な協定とすることが目標とされている。そのため、TPP協定交渉では、関税の撤廃・削減に関する議論のみならず、21に及ぶ広範な分野での交渉が行われている。
我が国は、現時点では交渉に参加しておらず、このため得られる情報は、交渉議長国による発表や各国への聞き取りによる間接的なものに限られているが、その中で、本検討会は、各班合同で、政府からの現状報告も含め、短い期間で可能な限りの議論を行い、今後仮に我が国が交渉参加する場合に、攻めるべき、また守るべき国益について、別紙のとおり取りまとめた。
なお、今後、我が国がTPP交渉に参加することとなる場合には、本検討会としては、政府に対して、それぞれの交渉分野について可能な限りの情報公開を求めるとともに、我が国の国益を最大限確保すべく、議論を重ね、引き続き政府に対して提言を行っていきたい。
◇ ◇
【我が国がTPP交渉に参加する場合、攻めるべき、また守るべき国益】
第1班
11.一時的入国
日本人ビジネスマンが外国に入国・一時的に滞在する際の手続の迅速化・簡素化・法的安定性を増進するべき。
18.制度的事項
協定の運用等の政府間協議機関の設置により、ビジネス環境の向上につなげるべき。
20.協力
協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に対する税関手続き、知的財産権保護等の技術支援や人材育成といった分野での協力を通じ、日本企業のビジネス環境整備につなげるべき。
21.分野横断的事項
既に交渉が完結しているといわれる中小企業による協定利用促進の分野は、我が国の中小企業にとっても有益な内容を含むものと考えられるが、他の分野の内容は不明であり、今後慎重に対応していくべき。
第2班
○WTO協定でも合意のある分野については、日本が既に約束している高いスタンダードを各国に求めていくという観点が重要。
2.原産地規則
日本企業が成長著しいアジア太平洋地域において効率的な域内のサプライチェーンを構築できるよう、利便性の高い原産地規則とすることを目指すべき。
7.政府調達
我が国は既にWTO政府調達協定を締結して、国、地方の公共調達を広く開放しており、同協定末参加の他のTPP交渉参加国に対して我が国として積極的に開放を求めるべきである。なお、TPPにおいては、政府調達の対象機関及び基準額等について公平性が確保されるべき。
12.金融サービス
かんぽや共済について、何らかの制度変更等を求められる場合には留意が必要である一方、民間保険会社等金融機関の海外進出に当たっての外資規制等参入障壁の撤廃を図るべき。
15.投資
ISDS条項について、日本企業が海外進出する際には国益となり得るが、条項が入る場合には、濫訴の防止や審理の透明性、対象限定等にかかる規定を置き、適切な利用がされるよう求めるべき。
第3班
4.SPS(衛生植物検疫)
WTO・SPS協定上認められている権利が損なわれないようにするべき。
残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務等、食の安全・安心に関わる議論は、二国問で協議される可能性も含め、しっかりと議論の推移を見守る必要がある。
17.労働
途上国において、貿易等のために自国の労働基準を緩和して物品を生産する等のいわゆる労働ダンピングへの対応をしっかり行うべき。
第4班
1-1.市場アクセス(農業)
農林水産業、農山漁村は、国民の安全・安心な生活に不可欠な、食料安全保障確保、多面的機能発揮という重要な役割を有している。このため、農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう、関税撤廃することなく、除外又は再協議の対象とすること。重要品目をしっかりと守っていく必要がある。
16.環境
これまで我が国が締結しているEPA・FTAでは、貿易や投資の促進を理由として環境基準を緩和しないことが規定されているものが大宗であり、この点注意が必要であること。
環境分野は、日本の強みを発揮できる分野である。我が国産業界が高い国際競争力を持つ環境物品・サービス分野において輸出・投資が促進されることは我が国の国益につながること、協定に参加する国々全体の環境基準が底上げされれば「地球益」になることから、ルール作りに積極的に取り組むべきではないか。
過剰漁獲を招く漁業補助金を禁止すべきとの議論があると聞いているが、漁業補助金については、乱獲防止・子々孫々にわたる資源の持続的な利用、水産業・漁村の多面的機能の発揮、更には震災復興にも不可欠なことから、国としての政策決定権を維持すること。
第5班
○総じて「攻め」の分野が多く、以下を踏まえつつ、我が国の国益をしっかりと主張していくべき。
1-2.市場アクセス(工業)
我が国にとって利益となる大切な分野であり、積極的に相手国の関税や貿易障壁の撤廃を要求すべき。
1-3.市場アクセス(繊維)
積極的に障壁の撤廃を要求すべき。
5.TBT(貿易の技術的障害)
相手国に貿易の障害となる規格・認証がある場合は、撤廃を要求すべきである一方、我が国の歴史的・文化的背景のあるような安全基準、環境基準等はしつかり守るべき。
8.知的財産
高い水準の知的財産保護制度を有する我が国の制度を途上国に拡げることや、知的財産(営業秘密を含む)保護強化のための取り締まりの実効性を高めること。地理的表示やフォークロアなどの新しい分野については、十分な検討が必要である。
9.競争
まずは高いレベルでのルール構築を目指すべき。ただし、国営企業に関するルールについては、我が国の独立行政法人等の扱いがどのようになるのか等について十分留意するべきである一方で、今後、国営企業のある国へ日本企業が進出する上で競争条件を確保することにもなるため、攻守両面にわたり十分に検討すべき。
10.越境サービス
我が国がより進んでいるサービス貿易の自由化を目指して積極的な議論が必要である一方、ネガティブリスト方式の活用に当たっては、守るべきサービス産業分野をしっかりと検討すべき。
13.電気通信
我が国にとって強い分野であり積極的に障壁の撤廃を要求すべき。
14.電子商取引
爆発的な成長が期待される電子商取引の分野について高いレベルの内容を目指し、我が国企業にとって有利となる電子商取引環境の整備に努めるべき。
以上
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