【TPP】対策委員会の決議 問われる党内議論2013年3月14日
自民党のTPP対策委員会は3月13日夜、「TPP対策に関する決議」を採択した。各グループ会合のとりまとめ報告とともに、14日夕の外交・経済連携本部で正式に了承する。
◆「脱退も辞さない」で歯止め
決議ではTPPに関する6項目の選挙公約を「国民との直接の約束であり党として必ず守らなければならない」とした。そのうえでかりに交渉に参加する場合は、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目などと、これまで営々と築きあげてきた国民皆保険制度などの「聖域」を「死活的利益」として、その確保を最優先することを求めた。さらに「それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」ことを盛り込んだ。
原案では「脱退も辞さない覚悟で交渉に当たる」とされていたが、13日の会合では「気持ちの問題を言ってはだめだ」との意見が出て、「脱退も辞さないものとする」との強い表現に修正された。
また、2月27日に党の外交・経済連携調査会が採択した、守り抜くべき国益とその対処方針の明確化を求めた「決議」も遵守することを求めた。ここも当初は「尊重すること」とされたいたが、「遵守」に修正され了承された。
ただ、その一方で▽今TPP交渉に参加しなければアジア太平洋地域の成長を十分に取り込むことができず、国際社会における地位を保つことはできなくなるのではないか、▽わが国にとって日米関係が外交の基軸であることにかんがみ、米国との一層の経済的連携を深めるべき、などの「大きな声もある」などと盛り込んでいる。 この記述について出席議員からは「この意見はどのグループからも出ていないのではないか」と決議文で「大きな声もある」、「声も大きい」などとしていることに異論も出たが、修正等はされなかった。
(写真は委員会の冒頭であいさつする石破幹事長)
◆どこをどう読めば?
もっとも問題なのは、決議文の冒頭部分だろう。
そこでは安倍総理とオバマ大統領が日米首脳会談でTPPに関する共同声明を発表し、「聖域なき関税撤廃が前提でないことが文書で確認された」と明記している。
この問題については「共同声明はどこからどう読んでも前提はあくまで聖域なき関税撤廃だ」(みどりの風・舟山康江政策調査会長の12日緊急集会でのあいさつ)といった批判のほか、JAグループも萬歳章JA全中会長が繰り返し「関税撤廃を前提にしたものとしか理解できない」と強調してきた。
なによりも日米首脳会談後の党内の議論でも「共同声明には『TPP交渉参加に際し、一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない』とあるが『聖域』とは書いていない。要は交渉次第ということ。何も変わっていないではないか」(武部新衆院議員)といった指摘が出ていた。
この点についての議論が深まったとは思えないが最終的には党は政府と認識を一致させ「これは安倍新政権による日本外交の成果」と持ち上げた。
「聖域なき関税撤廃が前提でないことが文書で確認された」という決議を了承したのであれば、自民党の全国会議員には、「どこをどう読んでも聖域なき関税撤廃が前提としか思えない」共同声明の「どこをどう読めば」「前提でないことが確認されているのか」、国民に説明する責任がある。
(写真)
終了後、記者会見に臨む委員会幹部ら
(関連記事)
・【TPP】自民党TPP対策委員会の決議 (13.03.14)
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・【TPP】主張受け入れられない場合は「脱退」を (13.03.13)
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