【TPP反対声明】農民連2013年3月18日
3月15日、安倍首相は会見を開き、「TPP交渉参加を決断した」と表明した。これに対し、全国の各団体が一斉に抗議声明を発表した。JAcomでは、各団体の抗議文を原文のまま紹介する。
【農民運動全国連合会】
聖域を守ることも、脱退することも
できるはずがない
TPP交渉への参加表明に抗議し、
撤回を要求する
2013年3月15日
農民運動全国連合会
会長 白石淳一
一、安倍首相は本日、国民の強い反対を黙殺し、公約を裏切ってTPP交渉への参加を表明した。
安倍首相は、あたかも交渉で国益を守れるかのように強調したが、「守るべきものを守れない」がTPPである。「日本を取り戻す」どころか「日本を売り渡す」安倍政権の参加表明に強い怒りをこめて抗議し、撤回を要求する。
一、安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」というが、これは全くの欺瞞である。日米首脳会談で発表された「日米共同声明」は、「TPPのアウトライン」に示された「高い水準の協定を達成する」ことを日本に求めている。これは、関税と非関税障壁の全面的な撤廃をアメリカに誓約したことにほかならない。それは、アメリカ政府が「共同声明」後に農業界に「日本は全ての農産物関税を撤廃するという米国の目的を理解した」と説明し、業界が歓迎していると伝えられていることからも明らかである。
TPPは自民党自身が総選挙で掲げざるを得なかったように、医療や食の安全、官公需発注、ISD条項など多岐に及ぶが、これらは何ら守られる保障がない。アメリカと強欲な多国籍企業の儲けのためのルールが押し付けられることは明白である。
一、さらに重大なのは、新たに参加する国には対等に交渉する権利が与えられていないことである。2012年12月にTPP交渉に新たに参加したメキシコとカナダは[1]事前に交渉テキストを見ることも、[2]すでに確定した項目に対する修正を求めることも認められず、新たな提案もできない、[3]将来、ある交渉分野について9カ国が合意した場合、その合意に従う、[4]交渉を打ち切る権利を放棄する――という条件を誓約して参加が認められた。この問題を国会で追及された安倍首相は、「判然としない」「ぼやっとしている」とごまかしたが、否定できなかった。3月4日から13日までシンガポールで行われた第16回TPP交渉の席で、米国の貿易担当官は同様の条件で「日本と合意している」と発言したことも明らかになっている。
自民党は、農産物5品目や国民皆保険制度などの聖域確保を優先し、それができない場合はTPP交渉から脱退も辞さないと決議し、安倍首相の参加表明を後押ししたが、聖域を守ることも、脱退することもできるはずがない。公約違反をごまかすためのものでしかない。「国益」を主張する機会さえ与えられず、アメリカなど9カ国の「合意」が押し付けられるだけである。
一、政府は、TPP参加表明とあわせて影響試算を発表した。試算によれば、輸出拡大などで10年後に国内総生産(GDP)を0.66%押し上げ、3兆2000億円の経済効果があるとし、米など主要な農産品の関税撤廃で農業生産額が3兆円減少するとしている。試算の内容は信憑性が乏しいといわなければならないが、農業生産が壊滅的影響を受けることだけは明白であり、“農業生産が破壊されても輸出が増えて相殺されるからかまわない”という農業犠牲の立場が貫かれていることは絶対に容認できない。
一、安倍首相はTPP交渉参加を表明したが、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、他のTPP交渉参加国との2国間協議と承認も残されている。かりに交渉が妥結し、協定がまとまったとしても国会での批准手続きも必要である。
たたかいはこれからである。農民連は、TPP交渉反対の一致点での共同を草の根をかきわけて広げに広げ、断固阻止するために奮闘するものである。
以上
◇
JAグループ、そのほかの団体の反対・抗議声明は下のリンクからご覧になれます
○JAグループと関連団体
・【JA全中】TPP「強い憤りをもって抗議」 JA全中・萬歳会長が緊急会見
・【全国農政連】169人の与党議員を、交渉参加反対で推薦している
・【全農協労連】多国籍大企業の利益のため、国民のいのち、暮らし、地域、雇用が犠牲になる
○その他団体
・【農民連】聖域を守ることも、脱退することすらもできるはずがない
・【日本医師会】公的医療保険制度は、参入障壁として提訴される
・【全国保険医団体連合会】医療が営利化・市場化され、国民皆保険制度は機能しなくなる
・【パルシステム生活協同組合連合会】日本が積み上げてきた食と農の先進性を引き降ろす
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日