【TPP反対声明】9つの産業別労働組合2013年3月19日
3月15日、安倍首相は会見を開き、「TPP交渉参加を決断した」と表明した。これに対し、JA全中の萬歳章会長は「強い憤りをもって抗議」するとの会見を開いたが、JAグループのそのほかの団体も相次いで抗議声明を発表した。JAcomでは、各JAグループ関連団体の抗議文を原文のまま紹介する。
【フード連合、国公連合、全国農団労、日教組、全水道、全労金、森林労連、建設連合、労済労連】
9つの産業分野ごとに大きな懸念
安倍総理は3月15日、先の日米首脳会談後の「共同声明」を受けてTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を表明した。
TPPの交渉分野は農産物や工業製品をはじめ、医療や金融、サービス分野、知的財産、投資、政府調達など21分野におよび、あらゆる分野で貿易障壁をなくすことを原則としている。それに対して安倍総理が強調する「守られた聖域」の内容は極めて具体性に欠き、国民生活に対する懸念は払拭されてはいない。
私たちはそれぞれの産業分野に働く労働者として、政府に対してTPPに関する以下の懸念を表明する。また、アメリカ議会の参加承認に向けた事前協議内容や交渉内容等について情報を開示し、国民的な議論を尽くすことを求めるものである。
1.国民の生命や健康にかかわる懸念
安倍総理率いる自民党は、選挙公約並びにTPP交渉参加に対する基本方針」で、「国民皆保険制度を守る」としているが、混合診療の全面解禁など皆保険制度が骨抜きにされる懸念がある。現在でも、日本の公的医療制度に対して米国からは市場原理の導入が求められており、TPPに参加することで「いつでも」「誰でも」同質の医療を受けられる仕組みが崩壊する恐れがある。
同様に、農産物の収穫後の農薬使用規制や遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃を求められる可能性も高く、食の安全・安心が大きく揺らぐ懸念もある。
また、コメ・乳製品・牛肉・砂糖・麦をはじめとする農畜産物の関税問題に関しては、「最終的な結果は交渉で決定する」と極めて不透明な状況となっている。このまま交渉に参加することは国内の食料自給率・自給力を引き下げ、食料安全保障の面からも国民生活に重大な影響を与えることを懸念せざるを得ない。
2.雇用と勤労者の生活にかかわる懸念
TPPに参加することで関税が撤廃された場合、農業生産だけでなく国産農畜産物を原料とする食品加工・流通業、そしてそれらに携わる多くの労働者の雇用に深刻な影響を与えることが懸念される。さらに肥料・農薬や農機具メーカーなど周辺産業の雇用にも大きな影響を及ぼすことも想定される。
また、政府調達では調達基準額の引き下げや地方公共団体への範囲拡大など、公共事業に対する外国企業参入のさらなる開放を招くことになる。公共事業への外資参入は雇用と地方経済に深刻な影響を与えるだけでなく、公共インフラの安全性に関しても重大な懸念が生じる可能性がある。
3.共助と地域が崩壊する懸念
現在、日本では農協・漁協・森林組合など第一次産業の協同組合をはじめ、生活協同組合、さちに労働者自主福祉としての労働金庫など、様々な協同組織が金融・共済・流通サービスをひろく提供することで勤労者の生活をサポートしている。協同組合とその事業は連合がめざす「働くことを軸とする安心社会」に不可欠な存在だといえる。
しかし、「簡保や共済は非関税障壁であり撤廃すべき」という米国の「要望」に象徴されるように、TPPではこれらの協同組織や簡保などに対して外資との競争条件でイコールフィッティングが求められる可能性が極めて高い。このことで、生産者・労働者・生活者の共助が崩壊し、共生と地域コミュニティの衰退をもたらすことも大きな懸念材料である。
4.ISD条項によって国の主権が損なわれる懸念
TPP交渉ではグローバル企業が「得るべき利益が得られなかった」として進出先の政府を訴え、規制や政策を変更させることを可能とするISD条項が議論されている。
米国通商代表部は「外国貿易障壁報告書」で国民生活に不可欠な日本国内の制度やルールを「非関税障壁」だとして強く撤廃を求めており、TPPでISD条項が運用されることになれば、安全・健康・福祉・環境ばかりでなく労働規制までわが国の基準で決定することのできない治外法権をもたらす危険性をはらんでいる。
私たちは政府に対して、広く情報を開示して国民的議論を尽くすと共に、その中で以上に指摘した懸念を払拭することを強く求めるものである。
2013年3月15日
日本食品関連産業労働組合総連合会(フード連合)
国公関連労働組合連合会(国公連合)
全国農林漁業団体職員労働組合連合(全国農団労)
日本教職員組合(日教組)
全日本水道労働組合(全水道)
全国労働金庫労働組合連合会(全労金)
全日本森林林業木材関連産業労働組合連合会(森林労連)
建設連合(建設連合)
全国労済労働組合連合会(労済労連)
以上
◇
JAグループ、そのほかの団体の反対・抗議声明は下のリンクからご覧になれます。
○JAグループと関連団体
・【JA全中】TPP「強い憤りをもって抗議」 JA全中・萬歳会長が緊急会見
・【全国農政連】169人の与党議員を、交渉参加反対で推薦している
・【全農協労連】多国籍大企業の利益のため、国民のいのち、暮らし、地域、雇用が犠牲になる
○その他団体
・【農民連】聖域を守ることも、脱退することすらもできるはずがない
・【日本医師会】公的医療保険制度は、参入障壁として提訴される
・【全国保険医団体連合会】医療が営利化・市場化され、国民皆保険制度は機能しなくなる
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日