東電、土壌汚染対策費用は一切認めず2013年4月2日
東電福島第一原発事故で受けた土壌汚染の現状回復費用などをADR(裁判外紛争解決手続)によって東電に求めてきた福島県の米農家が4月1日に記者会見し、これまでの東電からの回答結果などを明らかにした。請求が認められなかったとして今後は裁判で福島の農地の現状回復を求めていく方針だ。
◆認められたのは営業損害のみ
申し立てをしていたのは鈴木博之さん(福島県大玉村)、武田利和さん(福島県猪苗代町、福島県稲作経営者会議会長)、渡邊永治さん(福島県二本松市)。専業農家で福島県稲作経営者会議に所属している。
申立ては昨年4月に原子力損害賠償紛争解決センターに行った。訴えの柱は放射性物質で汚染された福島県の農地土壌の現状回復。 ただし、ADRでは金額に換算できる事項として申立てする必要があることから、土壌汚染現状回復のための費用、除染作業のための機械の購入費用、放射性物質等の一時保管場所の建設費用などの「仮払い」や、放射性物質低減のためのカリウム購入費用などを損害賠償として認めるよう請求、これまで7回の口頭審理を行ってきた。
その結果、東電が認めたのは営業損害(米の単価値下がり分)の一部と放射能検査(土壌・米・人)に要した費用など一部にとどまった。
土壌汚染現状回復費用は、国の責任で除染作業を行うことになっているとして請求を認めなかったほか、除染機械や放射線防護対策対応機械(キャビン付きコンバイン等)、カリウム散布機械、米貯蔵庫改修のための費用などは「必要性・合理性が確認できない」うえに「新たな資産取得に当たる」として東電は拒否した。
(写真)
東京・霞ヶ関の農林水産省内で記者会見する左から渡邊永治さん、武田利和さん、鈴木博之さんと花澤俊之弁護士
◆最大の課題は土壌汚染対策
基本的には営業損害とこれまでに放射能対策に要した費用の一部は認めたものの、今後、自らの手で土壌を回復したり、放射性物質の保管場所を建設するなどの費用は一切認めない方針を示したことになる。米が売れないなか、農業経営存続のための運転資金の借り入れに要した費用についても東電は拒否の方針だったが、1日の口頭審理で紛争解決センターは認めるように求め、これらを含め今月下旬にも和解案が示される見込みとなっているという。
和解案を認めれば訴えの一部については賠償金が支払われることになるが、武田さんらは「基本的に営業損害が認められただけ。もっとも重要な土壌汚染をどうするのかはまったく無視された」と話す。
福島の農業にとって土壌汚染対策は最大の課題で「その対策を明らかにして将来ビジョンをつくらないと後継者は出てこない」(渡邊さん)、「現場では農業者が逃げ出している」(鈴木さん)と訴え「福島の場合は復興ではなく、まず“後始末”をどこの誰がやるのかが問題」と強調した。
3人は今後、「農地の現状回復」を求めて訴訟を起こす方針。賛同者が広がれば原告団も結成した裁判に訴える考えだ。
(写真)
東京・霞ヶ関の農林水産省内で記者会見する左から渡邊永治さん、武田利和さん、鈴木博之さんと花澤俊之弁護士
(関連記事)
・放射能汚染への万全の対策を 畜産審議会で意見(2012.02.17)
・現地からのレポート・福島県―世界に類なき放射能汚染 この人災をどう克服するか 福島大学経済経営学類准教授・小山良太(2012.01.17)
・5000ベクレル以上は避難区域以外で9地点 農地土壌の放射性物質汚染(2011.09.07)
・【シリーズ・原賠審「中間指針」を考える】第1回 「中間指針」をめぐる論点(2011.08.19)
・重金属、オイルボール、放射能・・・土壌汚染をどう取り除くか 土づくり推進フォーラム(2011.08.18)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 埼玉県2024年11月5日
-
【特殊報】二ホンナシに「ニホンナシハモグリダニ」県内で初めて確認 佐賀県2024年11月5日
-
【注意報】トマトに「トマト黄化葉巻病」 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年11月5日
-
肥料費 28%増 米生産費 8年ぶりに10a13万円台 23年産米2024年11月5日
-
9割方が成約したクリスタルの取引会【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月5日
-
愛媛で豚熱 国内94例目 四国で初2024年11月5日
-
「ちんたいグランプリ2024」で準グランプリ受賞 ジェイエーアメニティーハウス2024年11月5日
-
生産量日本一 茨城県産「れんこん」30日まで期間限定で販売中 JAタウン2024年11月5日
-
「秋のまるごと豊橋フェア」7日から全農直営飲食店舗で開催 JA全農2024年11月5日
-
SAXES乾燥機・光選別機向けキャンペーンを実施 分析サービス「コメドック」無料お試しも サタケ2024年11月5日
-
中古農機具の買取販売専門店「農機具王」決算セール開催中 リンク2024年11月5日
-
ニッポン全国めん遊記「冬・年越しそばを噛みしめて」160人にプレゼント 全乾麺2024年11月5日
-
【人事異動】J-オイルミルズ(11月1日付)2024年11月5日
-
「起農みらい塾」食のイベント会場で学びの成果を披露 JAグループ広島2024年11月5日
-
グループの特例子会社2社を合併 クボタ2024年11月5日
-
病害虫対策を支援 農業向けアプリ「FAAM」をアップデート 11月中旬に配信2024年11月5日
-
乳の価値再発見「ジャパンミルクコングレス」最新のミルク研究を発表 Jミルク2024年11月5日
-
日本酒を鍋料理と合わせて楽しむ「鍋&SAKE」キャンペーン実施 日本酒造組合中央会2024年11月5日
-
宅配インフラ活用 家に居ながらフードドライブに協力 パルシステム千葉2024年11月5日
-
草刈りは手放しで AI+自律走行「MAIRAVO」コンセプト機発表 オカネツ工業2024年11月5日