【TPP】米国大統領は無権代理人? 権限に疑問2013年4月17日
米国のオバマ大統領には、現在、通商交渉を一括して締結できる権限が失われていることから日米協議やTPP交渉で合意した事項が米国議会によって「ひっくり返されるのではないか」との疑問が自民党内からも出ている。また、米国議会自身もUSTR(米通商代表部)が権限がないのに権限があるふりをして通商交渉にあたっていると議会報告書で批判しているという。4月16日の自民党のTPP対策委員会でもこの問題が取り上げられ、近く日本政府として米国大統領やUSTRの権限について見解を明らかにさせる方針だ。
◆大統領貿易促進権限(TPA)法は2007年に失効
この問題は「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が4月10日に開いた意見交換会で、TPPを法律面から批判している岩月浩二弁護士も指摘した。
岩月氏は「2002年の大統領貿易促進権限(TPA)法は米国議会が採択した法律。今、失効しているのは議会の同意が取れないから失効しているということ。理由はTPA法が米国の国益追求にとって十分ではないと議会が理解しているから」と指摘した。
TPA法について16日の自民党TPP対策委員会で片上慶一・外務省経済局長は「通商交渉の結果を議会に対して修正しないでイエスか、ノーか、それだけを議会の権限とすることを認める法律」と説明した。
02年TPA法には通商交渉の目標として「米国における経済成長を助長し生活水準を引き上げ、完全雇用を促進すること」、「米国の輸出品に対する市場機会を減少させ、または米国の貿易を歪曲するような…外国政府の関税・非関税障壁や政策、慣行などは削減または撤廃させることによって、米国の輸出品の競争的市場機会を拡大」などと明記されている。このような目的が遂行できる合意内容であれば議会は修正せず大統領が「イエスか、ノーか」を問うことができることになる。
◆オバマ大統領の発言はその場限りの可能性
このTPA法は2007年に失効した。理由はWTO(世界貿易機関)のドーハラウンドがその年の8月に決裂したから。岩月弁護士が指摘するのは、このTPA失効が影響した韓米FTAだ。韓米FTAは06年に交渉が開始され07年4月に締結した。しかし、10年12月には追加交渉が行われいる。岩月弁護士によると、TPAが失効しているため、米自動車業界の不満を背景に議会が合意内容の見直しを要求したから。その結果、環境規制などで韓国は米国にさらに譲歩を余儀なくされたという。
外務省の片上局長は「TPA法がないと事実上、米国の議会は通らないということ。TPP交渉も最終的に妥結する際には米国の行政府としてTPA法を議会に通すことが不可欠。TPA法は失効しているが、今後のTPA法を通してもらう配慮から法律はないが、TPA法に定められている90日ルールを厳格に適用しているのが現状では」と説明する。 一方、岩月弁護士は、韓米FTAの例をふまえると、TPPで議会が大統領に与えようとしているのは「02年のTPA法以上の極めて厳しい内容になるということは決まっているだろう。しかしあたかも交渉しているかのふりをしているのが日米両政府だ。
ただ、日本政府には交渉の締結権限があるから言質は取られる、つまり、法律的な約束をしたことになる。一方でオバマ大統領はただの無権代理人が言いたいように言っているだけ。その場限りの話でしかないのではないか」と強調する。
この問題については自民党の森山裕・TPP交渉における国益を守り抜く会会長も米国議会が報告書で「TPAがないのにあるふりをしている」とUSTRを批判していると指摘した。
西川公也・TPP対策委員会委員長は「これまでは実質的な権限があると聞いていたが、この際はっきりさせたい」と述べた。
(写真)
日米首脳会談でオバマ大統領と握手する安倍総理(首相官邸ホームページより)
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