コミュニティで就労支援を JC総研公開研究会2013年4月25日
JC総研は4月13日、「格差・貧困等社会的排除の克服」で公開研究会を開いた。このテーマは同総研が取り組んでいる研究課題で、今回で2回目。子どもや若者の貧困問題、地域や就労の場づくり、就労の支援事業のあり方などで意見交換した。
研究会では、さいたまユースサポートネット代表の青砥恭氏が「地域社会から子ども・若者たちの孤立と貧困を考える」で報告。同ネットは埼玉県上尾、桶川市を中心に学習支援教室を運営している。
集まるのは、貧困や親の無職、母子(父子)家庭など、親や家庭に問題を抱えている世帯やいじめ、不登校など学校でうまくいっていない子どもたちだ。
(写真は公開研究会の様子)
◆学びを通した場づくり
学習支援員や教室アシスタントを含め、主に学生のボランティアがこれを支援する。
教室は何でも聞いてもらえ、安心でき、自分を表現でき、自尊心を回復できる場である。青砥代表は「学びを通じた居場所づくり」という。
こうした人のつながりの中から、自己肯定感を回復させ、「自分も社会の一員として役にたてる存在ではないかという実感をもってもらい、若い市民として町を担う存在になってもらう」ことをめざしている。
一方、こうした子どもたちは、貧困や教育放棄など、親の子育ての段階から問題のあるケースが多い。いわゆる「貧困の連鎖」である。
◆貧困の連鎖断ち切る
従って幼児から青年期まででなく、次の子育てが始まる20歳を過ぎてからも関わりを持つように、地域コミュニティとつながった取り組みが必要だと指摘する。
このためには地域コミュニティで就労するのが最適だが、その活動の一つに、自ら仕事を創出する労働者協働組合の取り組みがある。日本労働者協働組合連合会(ワーカーズコープ)の古村伸宏専務が「支援からケアへ 協同労働で展開するコミュニティ就労」で報告した。
同コープは、地域再生・まちづくりのため、、[1]働くもの同士の協同、[2]利用者・家族との協同、[3]地域との協同、の3つの協同を取り組むべき課題として挙げる。
つまり支援する、支援されるという関係を超えた協同のあり方を追求するものだ。「一方向型の支援でなく、双方向型のケアで。それによって支援対象者の自立を促すことが重要」と指摘する。
◆地域資源で産業興し
報告の中で企業組合労働センター兵庫県但馬地域福祉事業所の取り組みを報告。同事業所は耕作放棄地や森(木材)などの地域資源を利用して仕事づくりを進めている。
菜の花や山菜の栽培、漬物加工、ドジョウ・タニシの養殖のほか、林地残材、竹の加工、養蜂まで行う。さらにBDF(バイオディーゼル)の利用、小水力発電など自治体と連携したエネルギーケアのまちづくりをめざす。
◆実効性に欠ける日本
格差や貧困による社会的排除を克服するためには、まず失業状態をなくすことである。就労支援で先進国であるフランスの政策を大阪市立大学の福原宏幸が報告した。
同教授は、フランスと比較し、日本の「生活困窮者自立促進モデル事業」などの支援事業は、就労希望者のニーズにあった多様な中間就労の場が確保されていない。このためせっかく訓練で獲得した能力に見合う職業が紹介されないなどの問題点があり、「枠組みだけで細かい詰めができていない。また、制度設計に権利・義務という観点が示されていない」と指摘する。
質問と討議の中では、
日本は社会的排除克服の政策で遅れており、特に中間的就労で一般企業につなぐ視点にNPO、作業所、労協などの地域社会ネットワークづくりが大切、多重債務者支援などに取り組む生協が出始めているが就労支援はもっとコミュニティにコミットが必要、などの指摘があった。
(関連記事)
・国産畜産物志向増える JC総研の消費者調査(2013.04.04)
・格差、貧困にどう立ち向かうか JC総研(2013.04.02)
・野菜・果物を食べる頻度増える JC総研の消費行動調査(2012.12.03)
・大きく低下、単身男性と若年層の野菜摂食 JC総研の消費行動調査(2011.11.28)
・食育ソムリエ養成の通信教育が堅調 JC総研の認定者増える(2012.11.20)
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日
-
「JPFA植物工場国際シンポジウム」9月1、2日に開催 植物工場研究会2025年4月2日