関税撤廃、大都市圏も影響甚大 TPP試算2013年7月19日
TPPに反対する大学教員でつくる影響試算作業チームは7月17日、輸入関税撤廃による都道府県別の生産・所得への影響試算を発表した。農林水産業の生産減少額は全国で3兆円を超え、それにともなう第2次、第3次産業への波及効果を合計すると全国計で11兆円を超える生産減となることが明らかとなった。東京でも1兆円を超え、愛知、兵庫・大阪なども減少額の上位に。大都市圏にも甚大な影響が及ぶことが分かった。所得ベースでも全国計で1.7兆円の減少となりデメリットが大きいことが示された。
全国で11兆円
東京都も1兆円超の生産減
◆影響は全国に広がる
一部の道府県で農林水産業への独自の試算が行われているが、試算した静岡大名誉教授の土居英二氏はこれを活用するととともに、試算を公表していない都府県については独自に試算した。
試算の結果、関税撤廃によって農林水産業の生産減少額は全国計で3兆1232億円に及ぶことが分かった。政府統一試算では2兆9700億円となっており、これよりも多かった。
今回の試算は、この農林水産業への影響を起点として、同一都道府県内の他産業への影響だけでなく、▽地域間相互の経済取引を通じた他の都道府県に与える影響▽他県から受ける影響、などの「跳ね返り効果」を計測した。農業生産が打撃を受ければ、たとえば肥料や農機具などの需要も減るがその製造地は全国に広がっている。こうした影響を計測したものだ。
その結果、第2次、3次産業へのマイナスの経済波及効果は全国計で11兆6918億円となった。農林水産業の生産減少額の3倍近くのが加わることになる。内訳は第2次産業で約3兆8000億円、第3次産業で約5兆2000億円となった。
都道府県別では北海道が1兆4000億円ともっとも多いが、次いで東京都が1兆900億円、兵庫県4600億円、愛知県4100億円などとなった。東京都は農林水産業の生産減少額としては31億円だが、他県の生産減少による影響が1兆円を超えるという試算結果だ。
◆所得も大きく減る
下表では生産減少額が3000億円以上の都道府県を網かけした。北海道・東北、南九州・沖縄という農林水産業が中心の地域で打撃が大きいことに加え、関東、中部、関西といった大都市部にも大きな影響が出ることが分かる。TPPは農業の関税撤廃だけが問題ではないが、関税撤廃に限っても大都市への影響が大きいといえそうだ。
また、岩手、宮城、福島の被災3県合計の生産減少額は1兆円を超す。復興への大きな打撃となることも示された。
試算では生産減少にともなう事業所得と家計所得の減少額も示した。それによると全国計で約4兆2000億円となった。一方、関税撤廃で物価が低下することによる実質家計所得は2兆4000億円。関税撤廃によるメリットよりも所得の減少額のほうが大きく、所得ベースの影響も1兆7000億円の減少という結果だ。 今回の試算では輸出増加による影響を含めていない。ただし、自動車関税の撤廃までの期間について長期間とすることが日米協議で合意されていることなどもふまえれば、輸出によるメリットは不明だともいえる。土居氏は関税撤廃を原則とするTPP協定は「トータルすれば失うもののほうが大きい」と強調した。
(関連記事)
・TPPや都市農業で要請 新世紀JA研究会(2013.07.12)
・GDP1兆3000億円減 鈴木教授のTPP影響試算(2013.06.19)
・孫崎享氏「TPP参加に歯止めを」 農協研究会(2013.06.10)
・【TPP】農業・食品の除外こそ国益 鈴木教授(2013.05.24)
・【TPP】全産業で10.5兆円減 大学教員の会試算(2013.05.24)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日