「関税撤廃はゴール」フロマンUSTR代表2013年8月21日
8月18日に来日した米国通商代表部のフロマン代表は19日、日本記者クラブで記者会見した。フロマン代表は、22日からのTPP(環太平洋連携協定)ブルネイ会合から本格化する農産品などの市場アクセス分野について「すべての国にセンシティビティはある」としながらも「すべての品目が交渉対象」、「関税撤廃はゴール」とも強調し、センシティビティの確保については「交渉で対応されるべき」と、あくまで交渉の結果であることを指摘した。また、年内妥結はオバマ大統領の最優先事項であり、10月のAPEC首脳会合が妥結に向けた「重要な節目になる」との認識も示した。
◆センシティビティ確保は交渉次第
フロマン代表はTPPについて会見で「目標は野心的で包括的で高いレベルの協定」と繰り返し強調した。
農産物について日本は重要5品目を関税撤廃から除外することを国会などで決議しているがフロマン代表は7月18日の米国下院の歳入委員会の公聴会で「日本の農業に関し、前もって除外することに同意したことはない」と発言。
この日の会見でも2月の日米首脳会談で「TPPは包括的ですべての製品で関税撤廃をするための交渉であるべきだと発表している」と話した。そのうえで「そうはいってもすべての国にセンシティビティがある。それは交渉を通して対応されるべき。すべての品目が交渉対象になり、お互いセンシティビティを交渉で、2国間協議で対応されるべき」とした。柔軟な交渉はあり得るとの姿勢を示したが、一方では「関税撤廃はゴール」とも強調した。
また、日本政府がブルネイ会合で自由化率を85%とする提案を行うとの一部報道については「最初のステップとしてはいいステップ。ただ、もっと野心的な合意をわれわれはめざしている」と話し、米国の自由化率のオファーは9月に提示する見込みで、それまでは2国間交渉を進めるとした。同時に米国議会ではTPA(貿易促進権限)をオバマ大統領に与える作業が「かなり進んでいる」とした。
(写真)
フロマンUSTR代表(8月19日日本記者クラブにて)
◆非関税措置の是正も強調
会見に先立つ講演ではTPP交渉と平行して行われる日米の2国間協議の意義を強調した。
フロマン代表は1980年代の終わりの学生時代に東京に1か月ほど滞在したことに触れ、当時の日本は好景気に沸いていたことを振り返った。そのころ米国は日本に感服する一方で「不公平だという思いもまん延していた」という。それは自らは提供しない輸出チャンスを日本は得ており「他の国の犠牲のうえに(日本の繁栄は)成り立っているという思い」だったと話し、さらに「この不公平感は2国間関係をむしばむ影響を持った」と指摘した。
そのうえで今回の2国間協議は「過去の貿易摩擦を乗り越え新たな貿易協力の局面に入る前例のない機会」と位置づけ、「日本市場の障壁は根強く残っている。自動車や保険、その他の非関税措置は成長とイノベーションを阻んでいる」などと話し「長年立ちはだかってきた深刻な課題を解決しなければならない」と強調。2国間協議成功はTPP交渉にとっても極めて重要な要素だと日本の対応を求めた。
今回のTPP交渉は、自動車分野や保険、医療など米国が日本に長年要求してきた規制緩和などを実現するためのものとの指摘は度々なされているが、フロマン代表は「両国の貿易関係をより健全な土俵に乗せるために今や行動を起こすとき」とまで述べ、公式の場でむしろ米国の狙いを強調したといえる。
また、TPP交渉の保秘義務について「なぜここまで秘密にする必要があるのか」との質問には「過去の貿易交渉よりもはるかに透明性が高い。議会、国民の代表、監視組織の人々とオープンなかたちで話をしている」などと述べ、米国は交渉状況を報告する体制を整えていると話した。
マイケル・フロマン米国通商代表
1962年カリフォルニア州生まれ。米プリンストン大学(公共政策・外交)、英オックスフォード大(博士、国際関係論)、米ハーバード大(法務博士)。財務長官首席補佐官(ルービン財務長官時)、シティグループ専務兼シティ保険社長、大統領次席補佐官など。オバマ大統領とはハーバード大ロースクールでクラスメート。
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