TPP対抗軸の構築を 協同組合学会がシンポ2013年10月9日
日本協同組合学会は10月6日、東京で開いた第33回大会で、「TPPをはじめとするグローバリズムと協同組合を考える」特別シンポジウムを開いた。韓国協同組合学会の会長の兎瑛均(ウ・ヨンキュン)・尚志大学教授が韓米FTAと協同組合の対抗について、日本協同組学会会長の関英昭・青山学院大学名誉教授が、TPP参加の影響と協同組合連携の必要性についてそれぞれ問題提起。両氏とも、新自由主義のもとで必然的に発生する貧困問題、地域格差、失業問題などの矛盾に対抗するため、協同組合活性化の必要性を強調した。
◆FTAで韓国社会が分裂
兎教授は韓米FTAの農業への影響について、「初期の関税引き下げ率が小さくて、まだその影響ははっきり現れていないが、引き下げ率が徐々に大きくなるにつれて農産物の被害品目や規模も拡大していく」と指摘。特に畜産物のうち、差別化が進んでいない豚肉、鶏肉などの品目と、出荷期が重なるオレンジ、チェリーなどの輸入増を懸念する。
すでに影響が出ている分野について、同教授は経済と社会の両極化の深化を挙げる。貧富の格差、大企業による市場支配、農村の空洞化、都市と農村の格差拡大などである。
これに対して協同組合陣営の反応は鈍い。その程度は従来からの協同組合的性格と、国との関係および予想される被害の大きさによって異なるという。しかしその立場にかかわらず「それに直接応じて、具体的で、かつまとまった対策を出しているところはほとんどない」と嘆く。
ただ、韓国の協同組合セクターの新しい動きとして、2012協同組合基本法が制定された。これで金融や保険業を除いたあらゆる業種や分野で、5人以上が集まって、協同組合としての基本的な要件さえそろえば届け出と設立登記だけで設立できるようになった。
このため、今年7月までの7カ月で設立された協同組合は2039に達する。兎教授は「零細な個別事業者や労働者および脆弱階層の組織化が生まれる契機を基本法が与えてくれた。その意味でFTAを含む新自由主義の矛盾と両極化に対抗する協同組合セクターのもっとも強力な礎石になり得る」と評価する。
(写真)
兎瑛均(ウ・ヨンキュン)教授
◆契約の体をなさないTPP
関名誉教授は法律学者の視点から、グローバル化を商業の無国籍化から説き、その必然性から説く。
しかし「日本のグローバル化は、極端にいうとアメリカ化だ」という。つまりアメリカのルールを日本に導入することになるというわけだ。
また条約について、通常「契約自由の原則」が前提であり、そのためには?契約するかしないかの自由(契約締結の自由)?契約の相手方選択の自由?契約方法に関する自由?契約の内容に関する自由、の4つの自由があるという。この視点からは、情報が制限され、最大の相手国はアメリカ1国という状況のTPPは契約とはいえないと指摘する。
また、法律はその国の歴史、文化、伝統(慣習)、言語、民族、自然環境などの影響を受けている。「こうした一国の形に関わる事柄や影響が急激な場合は、国民の理解と時間をかけて進めるべきものだ」ともいう。その意味で情報の少ないなかでのISD条項の採用を危惧する。
その上でTPPに対する日本の協同組合の課題と任務として、?声を大にしてTPPの抱えている問題点を訴える?TPP参加に備えて準備することを挙げる。具体的には「協同組合は人と人の助け合い組織であり、これを強化する。併せて資本の論理(強欲主義)に惑わされない対抗軸を用意すること」と訴えた。
(写真)
関英昭名誉教授
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