【TPP】11月中旬に党内意見を集約 自民党2013年10月11日
インドネシアのバリ島で行われたTPP首脳会合で年内妥結に合意したことを受けて、自民党は10月10日、重要5品目を含めたすべての農林水産品について、国会や党の「決議を守り抜くことを前提に検証していく」ことを決めた。年内妥結を前提に11月中旬にも党内の方針を決める見込みだ。
◆西川委員長の釈明
バリで行われたTPP閣僚会合と首脳会合には、自民党の西川公也TPP対策委員長と森山裕副委員長も現地入りした。
西川委員長は甘利明経済再生担当大臣(TPP担当)と会談を終えた10月6日、記者団に対して「重要5品目の586についてどんなことができるのかできないのか、検証しなければならない」と語った。さらに記者団から「5品目の切り崩しを行うということか」と問われ「検証しなければならない。ただし、抜くことを前提にするのではない。どういうようにするかまだ分からないが、農業を守るのは大切な問題。どうすれば農業を守り切れるのか、検討する必要がある」などと話した。 10日に開かれた自民党の外交・経済連携本部・TPP対策委員会合同会議では西川委員長への批判や発言の真意を問う声が相次いだ。 西川委員長は、「抜くこと(=関税撤廃を認める品目とすること)が前提ではない。586品目を検証して本当に必要なんだと理解しないと交渉はできない」などと釈明した。
また、これまでのEPA協定ですでに関税削減・撤廃を約束した液状卵などの例をあげ、TPP参加の11カ国に対しても同じように、市場開放すれば輸入量が急増する懸念がある品目について検証する必要があることを強調した。さらに、これまでのEPAで関税撤廃したことがない834品目のうち、米、麦、乳製品などの重要品目586を除いた残り248品目についても検証する必要があると話した。
交渉が年内妥結をめざすなら11月には農産物についての日本政府の対応方針を決めなければならないとの見方を示し「あと1カ月しかない。この時期に検証することに何の問題もない。そのうえで全部守るという結論がほしいということだ」と説明した。
◆決議守るのが前提
しかし、疑問や批判は止まない。
「政府の監視役でバリに行ったのではないか。それなら精査するとか、落としどころを探るとか言うべきではない。党に対する信頼の失墜は計り知れない」。
「どういう背景でこういうことになったのか。なし崩し的な譲歩はないことを改めて決議すべきだ」、「そもそも政府が(関税品目の検証結果を)把握しているべきで、この段階で検証するのはナンセンス」などの意見が上がった。
これらの意見に対して西川委員長は「政府は交渉で必ず攻められる。これ以上は下げさせない、とするためには検証が必要」、「全体の検証をしていなくて交渉になるのか」などと応えた。
石破幹事長も西川委員長を擁護。「(西川発言について)米は守るが乳製品は譲るんですね、と思った人がいっぱいいるのではないか。そう聞こえるような報道だった。
タリフラインて何ですかという質問を受けた。5品目というと5つしかないと思っている人はたくさんいる。そうではない。ただ、(タリフラインが)なぜそうなっているか、状況がどうなっているかをきちんと把握をしたうえで交渉に臨むのであって、これから2国間交渉がはじまっていくときに、それぞれ(のタリフライン)がどうなっているかまったく分からなければ交渉になるわけがないということ。関税撤廃を前提とするものではない」などと述べた。
◆自由化率90%後半に応じるのか
結局、会合では「決議を守り抜くことを前提にこれから本格化する2国間協議の進捗状況も含め、全体の状況をみながら検証を進める」という提案を了承した。この検証には農産物のタリフラインの検証も含まれる。
今後は西川委員長を中心に検証が進められる見込みで、11月中旬には党内の意見をまとめる。年内妥結となれば、具体的にはクリスマス前に閣僚会合が開かれることを見込み、そこで妥結するにはそれまでに1カ月間の交渉期間が必要だと判断したためだ。タリフラインごとに検証を積み重ねてとりまとめれば、それは交渉で各国に提示する自由化率ということになる。
重要5品目(タリフラインで586品目)を守れば自由化率は93.5%。しかし、参加国は90%代後半を要求しているとされ、それに応じるとすれば結局、何を譲るかという話になりかねない。
こうした流れに踏み込んだことについて党内には「米国と交渉もしていないのになぜ検証など始めるのか」「もともと政府に対して情報開示が足りないと批判していたのに、なぜ党で検証などできるのか」、「そもそも大規模な米国と豪州の農業と日本農業を自由化率で論じるという土俵に乗ってしまったこと自体がおかしい」と批判する声もある。
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