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なし崩し的譲歩許さん! TPP集会に3500人2013年12月6日

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国民の声を無視した交渉

 JAグループや全漁連、全森連など9団体で構成する「TPPから『食と暮らし・いのち』を守り『国会決議の実現』を求める実行委員会」は12月3日、東京の日比谷野外音楽堂で「TPP決議の実現を求める国民集会」を開催。全国から3500人が参加した。集会では、「国の主権を損なうようなISD条項は認めてはならない」、重用5品目の聖域の確保は「極めて重たい約束であり、必ず実現されなければ」ならないとした集会決議を満場一致で可決。集会後には、「TPP反対」、「日本の医療制度を守ろう」、「農業者の声に耳を傾けろ」などのプラカードを掲げ、首相官邸前、国会前でのデモ行進を行った。

全国から3000人以上が結集。TPP反対を訴えた。

(写真)

全国から3500人以上が結集。TPP反対を訴えた。

◆国会決議こそ国民との約束

萬歳章会長  TPPに反対するこうした全国集会は、10月2日に続いての開催となった。2カ月という短い期間で開催したことについて萬歳章JA全中会長は、「再び結集しなければならない緊急の事態」になったためだと説明した。
 というのも、一部報道などで12月7日から始まったシンガポールでの年内最後の閣僚級会合で、政府は、米国からの要求を受け入れ、自民党や衆参農林水産委員会での決議を無視した「なし崩し的な譲歩」による「実質合意」をするのではないかと報じられているためだ。こうした妥結は、国民の声を無視し、国家主権や人権を侵害するものだとして、改めて国会決議の実現を強く求めようと開催された。
 実行委員会代表の萬歳章JA全中会長は、重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源)の聖域が確保されないと判断した場合は「脱退も辞さない」とした自民党や衆参農林水産委員会での決議は「国民との約束」であり、「必ず守るとの覚悟をもってもらいたい。なし崩し的な譲歩をすることがないよう要望する」と出席した国会議員らに訴えかけるとともに、「これからも引き続き食、暮らし、いのちを次代へつなげるための運動を徹底していく」との強い決意を述べた。

(写真)
萬歳章会長

◆秘密交渉、海外でも紛糾

加藤房子さん 集会では、TPPに対する強い懸念を表明している3団体の代表が連帯のあいさつを行い、それぞれ専門家的視点からTPPの問題点を指摘した。また、全国各地で農林水産業業を営む7人の生産者によるリレーメッセージでは、現場からの怒りと不安の声があがった。 TPP交渉で大きな問題となっているのは、秘密交渉で行われており、交渉内容がまったく明らかにされていない点だ。集会では特定秘密保護法案との関連を指摘し、強く批判する声もあった。
並木一寅氏 国民的議論や十分な情報公開を経ないまま拙速に進められているTPP交渉について、「われわれ消費者にとってTPPはどういう影響があるのか、まったく理解できない。生活を脅かす恐れのある交渉を公表もせずにすすめていいのか」(加藤房子・宮城県生協連常務)、「今日、会場に来たくても来られない人がいっぱいいる。これだけの反対を無視して、なぜ早急に妥結をめざすのか」(並木一寅・JA千葉青年部委員長)など疑問の声が相次いだ。
醍醐聰氏 また、連帯のあいさつで東大名誉教授の醍醐聰氏は「米国内では11月、与党民主党の議員201人のうちの151人が連名で、議会との協議をないがしろにしてTPP交渉を進めるオバマ政権を厳しく批判した。参加国間でも、項目によっては12カ国のうち10カ国が反対を表明しているものもあり、年内妥結どころではない」と、日本国内だけでなく海外でも多くの問題が噴出している現状を紹介した。

(写真)
(上から)加藤房子さん、並木一寅氏、醍醐聰氏

◆国家主権踏みにじるISD

浅田克己氏 集会で強調されたのは、ISD条項への懸念だ。
 日本生協連の浅田克己会長は、ISD条項によって「食の安心安全、農業の保全や食料自給率の向上、協同組合が活動するのに必要な制度などが今より後退してはならない」との危機感を示した。
小川千枝子さん 香川県農協女性部の小川千枝子さんも「残留農薬の規制など食の安全を守る制度が緩められれば、子どもたちに安心して与えられる食べ物がなくなる」と子どもを持つ親としての率直な不安を述べた。

中野和子氏

 弁護士の中野和子氏はISD条項による訴訟の問題点を指摘。「日本国内なら裁判は3回受けられるが、ISDの訴訟はたった1回。そのうえ何億円という莫大な費用がかかる。しかも、その裁判が行われる国際仲裁機関は投資家たちがつくった機関であり、最初から国が負けるのは明らか。投資家の自由を拡大するTPPは、国家主権を無視し、人権を侵害する」と強く批判した。

(写真)
(上から)浅田克己氏、小川千枝子さん、中野和子氏

◆国益の損失は必至

小澤朋子さん TPPで農林水産業が壊滅すれば、これら産業がもつ多面的機能が失われ、同時に関連産業や農山漁村も大きな打撃を受ける。そのため、TPPに参加すること自体が国益を損なう行為だという指摘も多い。
 沖縄県南大東島でサトウキビをつくる小澤朋子さんは、「(離島のサトウキビ農業は)島の定住生活を守り、国土保全にも貢献する唯一の方法だ」。

重田利男氏

 福井県で漁業を営む重田利男さんは、「輸入品による水産物価格の低迷で、すでに漁業は危機的状況にある。さらに自由化がすすみ多くの漁業者がダメになれば、関連産業とあわせて浜に大きな打撃となる。そうなれば、漁業がもつ海洋の国境監視や環境保全、海難救助などの機能も失われる」。
土山誠氏 石川県金沢森林組合の土山誠さんは、「日本の国土の7割は森林。これらの整備や環境保護のためには持続可能な林業が必要だ。合板、製材の関税撤廃は、山村地域の荒廃とさらなる木材自給率の低下を生む」と批判した。
齊藤和弘氏 また、北海道の酪農家・齊藤和弘さんは、「関税が撤廃されれば、国内酪農は崩壊する。そのような未来ならば、子どもに牧場を引き継いでほしいという、ささやかな願いすら適わなくなる」との不安を述べた。

(写真)
(上から)小澤朋子さん、重田利男氏、土山誠氏、齊藤和弘氏

◆与党の説明、終始“守る”

 こうした訴えに対し、政党代表としてあいさつした自民党の石破茂幹事長は「国会の決議は極めて重い」「重要5品目は必ず守る、国民皆保険は必ず守る、これらの約束は必ず守る」、公明党の石田祝稔農林水産部会長も「国益を第一に考え、全力で国会決議を守る。与党としての責任を果たす」など、2カ月前の集会とほぼ同じ答弁に終始し、会場からは時折批判の声があがった。
 野党からは、民主党の小川勝也ネクスト農林水産大臣が「日米が共同で発展途上国にISD条項を押し付けようとしている」、共産党の志位和夫幹部会委員長が「国会決議を無視し、秘密交渉で公約破りをしていいのか」と政府の姿勢を批判した。


集会での登壇者は次の通り(敬称略)。

【連帯あいさつ】
▽浅田克己・日本生協連会長
▽醍醐聰・東大名誉教授、TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会呼びかけ人
▽中野和子・弁護士、TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長

【リレーメッセージ】
▽齊藤和弘・酪農、北海道農協青年部協議会副会長(北海道)
▽加藤房子・宮城県生協連常務理事(宮城県)
▽重田利男・漁業、JF全国漁青連理事(福井県)
▽小川千枝子・香川県農協女性部フレッシュミズ部会長(香川県)
▽土山誠・林業、金沢森林組合(石川県)
▽小澤朋子・サトウキビ農家(沖縄県)
▽並木一寅・米農家、千葉県農協青年部協議会委員長(千葉県)

【政党代表】
▽石破茂・自民党幹事長
▽石田祝稔・公明党農林水産部会長
▽小川勝也・民主党ネクスト農林水産大臣
▽志位和夫・共産党幹部会委員長

TPP決議の実現を求める国民集会決議

 私たちは、これまで3年にわたってTPPから食と暮らし・いのちを守る運動を展開してきました。食料安全保障、食の安全・安心に関する規制や基準、国民皆保険制度などを守り抜くとともに、国民の生命や財産に直結し、国の主権を損なうようなISD条項は認めてはならないというのが、私たちの共通の思いです。

 TPP交渉は、11月下旬に首席交渉官会合が行われるなど、年内妥結を目指した交渉が続けられています。政府による情報開示が十分でないなか、輸出国が重要品目の関税撤廃を強く求めていると報じられ、なし崩し的な譲歩が行われるのではないかと、生産現場の不安が高まっています。

 自民党および衆参農林水産委員会が「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目を除外又は再協議の対象とする」と決議したことは、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と確認したうえで交渉に参加した経過からも、極めて重たい約束であり、必ず実現されなければなりません。

 国内林業は、木材輸入の自由化により大きな影響を受けました。そのなかで、合板・製材の関税は、温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備の取組みに不可欠です。また、漁業補助金は、持続的漁業の発展や震災復興のために、何としても堅持されなければなりません。

 これらの内容は、わが国がTPP交渉に参加するにあたって、自民党や衆参農林水産委員会が確認した決議のなかに明確に位置付けられた国民との約束です。私たちは、これらの決議が実現するものと固く信じています。

 私たちも、次世代のためにも、日本の食と暮らし・いのちを守るという目標の実現に向けて、引き続き、徹底して運動していく決意です。

以上、決議します。

平成25年12月3日
TPP決議の実現を求める国民集会

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