独では協同組合が主役 再生可能エネルギーシンポ2014年3月26日
JC総研と農林中金総合研究所は19日、東京都内で「地域から取り組む再生可能エネルギー」のテーマでシンポジウムを開いた。ドイツの協同組合による地域エネルギー利用の事例と日本の木質バイオマス、太陽光利用の事例発表をもとに、地域自立型の取り組みに協同組合がどのような役割を果たすことができるかを探った。
ドイツの取り組みは、同国のエネルギー協同組合設立に指導的な役割を果たしているアグロクラフト社専務のミヒャエル・ディーステル氏、ドイツ協同組合・ライファイゼン協会ディレクターのアンドレアス・ヴィーク氏が報告。
原発廃止を決めたドイツにおける地域エネルギーの利用は、地域の住民が出資して協同組合をつくり、太陽光やバイオマス、風力などでつくったエネルギーを地元で使うことを基本とするもので、アグロクラフト社のあるレーン・グラプフェルト郡(37の地方自治体からなり、人口約8万7000人)で、40のエネルギー協同組合がある。いわば集中発電から分散型発電への転換である。
「このエネルギーシステムへの転換は、農村地帯にとってまたとないチャンス」と、ディーステル氏は指摘する。
協同組合である意味は、住民みんなの出資をあおぎ、発電による利益をだれもが得るようにすることにある。「地域エネルギーの利用は、それによって利益を得るものと、そうでないものを分けるものであってはならない」と言う。
いま、この協同組合がエネルギーだけでなく、村営の宿泊施設、売店、介護施設、別荘などの運営にまで広がっている。もともとドイツの農村にはライファイゼン協同組合があったが、その理念を忘れ勝ちだった。ディーステル氏は「われわれは新しいことをやるのではない。ライファイゼンの理念を呼び起こし、それに従って動いただけだ。協同組合というすばらしい理念が、エネルギーという新しい視点でよみがえった。協同組合は理想的かつ経済的組織だ」と話した。
ドイツにおけるこうしたエネルギー協同組合は、5、6年急速に増えており、2008年の67が、13年には717と、10倍以上に増えた。環境保全・原子力エネルギーの段階的廃止と地域価値創造推進が大きな設立の動機となっている。
協同組合の全国組織であるライファイゼン協会のヴィーク氏はエネルギー協同組合のメリットとして、[1]異なる関係者の利益調整、[2]合意形成。[3]地域の価値創出、[4]社会的公正(出資金が少額でも、誰でも参加できる)、[5]メンバーニーズへの対応(必要以上つくらない)、[6]安定性(管理システムがきちんとしており、透明性が確保されている)、[7]持続可能性の7つを上げる。
「協同組合の組織を使って、さまざまなアイデアが実現できる」と協同組合の理念と組織を高く評価する。
日本の取り組みは、木質バイオマス利用の北海道下川町、太陽光を使った市民の寄付による市民協同発電所を設置した長野県飯田市の例が報告された。
下川町は循環型森林づくりから始まり、バイオマスボイラー導入による公共施設への熱供給、育苗などのビジネス創造による雇用の創出など、持続可能な新しい地域社会づくりに取り組んでいる。
また飯田市では、エネルギーの地産地消を理念とする「NPO法人南信州おひさま進歩」が共同発電所設置に取り組み、市民の募金によるファンド、地域金融機関のプロジェクト・ファイナンスなどで、さまざまな再生エネルギー利用の事業を支援する仕組みをつくっている。
(写真)
ドイツの協同組合の取り組みを例に、再生可能エネルギー利用について意見交換したシンポジウム
(関連記事)
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