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【農協改革】安倍総理、農協改革に意欲2014年5月20日

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 安倍晋三総理は5月19日に開かれた産業競争力会議課題別会合に出席し、規制改革会議農業WGが14日に取りまとめた農協など農政改革についての意見を聞いたうえで、農協組織について「地域の農協が主役となり、それぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投球できるように抜本的に見直したい」と述べたうえで、農業委員会や農業生産法人の要件見直しなどと合わせ「3点の改革をセットで断行していく」と述べた。

◆林農相「問題意識は共有」

産業競争力会議課題別会合であいさつする安部首相(首相官邸ホームページより) この日の会合には規制改革会議の岡素之議長と農業WG(ワーキング・グループ)の金丸恭文座長が出席し、5月14日に同WGが取りまとめた「農業改革に関する意見」について金丸座長が報告した。
 この意見について規制改革担当の稲田朋美大臣は「競争力ある農業をつくるべく農業関係者へのヒアリングをふまえ、現場視察などを丁寧に行い真摯な議論で取りまとめられた。今後、3つの改革を一体的に進めていく必要がある。6月に向け議論し改革の実現を図る」と発言した。
 これに関連して林芳正農林水産大臣は「金丸座長の提案には、農水省として問題意識を共有している」、「農協の改革をはじめ規制改革会議の提案については稲田大臣とも相談しつつ進めたい」と述べた。
 会合では産業競争力会議農業分科会の新浪剛史主査が6月に改訂する政府の成長戦略に盛り込むべきとする農業改革案も説明した。基本は規模拡大と企業参入、企業の知見を活用した6次産業化と輸出の拡大などだ。酪農・畜産の付加価値向上策も示した。また、農地中間管理機構による農地集約や生産調整の廃止など、すでに決まっている政策の着実な実行も求めている。

(写真)
産業競争力会議課題別会合であいさつする安部首相(首相官邸ホームページより)

 

◆スピード感を強調

 こうした報告を受けた後の議論で、民間議員は「本日、農政改革の全体像が示されたが今後の課題は実現のスピード感。年央(6月)の成長戦略には具体的な目標、方法論、スケジュールが入るように進めていただきたい」、「農業生産法人の出資要件の緩和など改革のスピードを加速していくことが必要」と工程表を作成し改革を加速させることを政府に求めた。
 そのほか「輸出拡大のためには国際規格取得の促進が必要。ガラパゴス化とならないようにグローバルスタンダードに合致した規格の取得を進めるべき」、「日本の食品添加物を海外でも認めさせることにより、日本食品が海外に出られるようにしていくべき」などの意見も出された。
 麻生太郎副総理は、この日、報告された農協改革案などについて「農業の成長力強化のためのものであり、経営感覚を取り入れてもらう必要がある。ないものは外から経営感覚のある人を入れていくべき」と発言した。 安倍総理は会合の最後に発言。農業委員会、農業生産法人、農協の「3点の改革をセットで断行していく」と述べたほか「林農相には今が農政転換のラストチャンスとの認識のもと、改革について菅官房長官と調整し実行していただきたい」と“総理指示”をした。
 安倍総理が“改革を断行”と強調したことについて、TPP閣僚会合等に参加している甘利明大臣の代理でこの会合に出席した西村康稔内閣府副大臣は「これはもう相当強い決意で言われたものと思う。われわれもそれを受けてしっかりと調整していきたい」と述べた。 規制改革会議としては、14日とりまとめの農業WGの意見を、まだ本会議を開き正式に了承してはいない。また、規制改革会議として農業分野も含めた総理への答申は6月に行う。しかし、この日の会合では農業WG報告などを受けて政府の成長戦略の見直しに向けて「農業分野の材料は出そろった」(事務局)として改訂版成長戦略に盛り込む作業を進めるという。「スピード感」が強調され前のめりの議論が進んでいる。

 

★5月19日の産業競争力会議での安倍総理発言

 農業を競争力ある、魅力ある産業につくりかえ自律的に発展して地域経済を牽引する新たな成長産業にしていかなければならない。
 このためには経営マインドを持つ意欲ある新たな農業の担い手が次々と農業に積極的に参加し活躍できる環境を整備していくことが重要。地域の農業の担い手の経験と企業の知見が結合し、農地が最大限有効に活用されて力強い農業活動が展開されるように制度改革を進めたい。
 このため農業委員会の見直し、農地を所有できる法人の要件見直しについて具体化を図る。
 また、農業協同組合のあり方について、地域の農協が主役となり、それぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投球できるように抜本的に見直したい。以上の3点の改革をセットで断行していく。
 そして日本の農業の付加価値を高め、その市場を大きく広げていきたい。そのため次の3点に取り組みたい。
 まず1番目に6次産業化を加速するため農林水産業成長化ファンドを使いやすくし企業のノウハウを積極的に導入する。 2番目に酪農家が創意工夫を活かして付加価値の高いビジネスができるように指定団体との取引の見直しなどを通じて取引の多様化を図る。
 3点目として国際規格認証体制の強化を行うとともに、品目別輸出団体を整備してオールジャパン体制でのブランド強化を図り農水産品の輸出拡大を実現する。
 林農相には今が農政転換のラストチャンスとの認識のもと、以上の改革について菅官房長官と調整し実行していただいきたい。

 

○規制改革会議農業WGの「農業改革3つの柱」

【第1:農業委員会等の見直し】

(見直しの方向性)農業をめぐる社会経済の構造変化に対応して、農業委員会は、遊休農地対策や転用違反対策に重点を置き、これらの業務の積極的な展開を図る。
(1)農業委員の選挙・選任の見直し
 より実務的に機能する者を選任することができるよう、現在の選挙制度を廃止し、市町村長による選任に一元化。農業委員の人数を機動的な対応ができる規模に縮小するとともに、業務内容を見直し、その職務にふさわしい報酬を支払う。
(2)農地利用推進員の新設
 農地集約化や耕作放棄地の状況の調査など、農地の利用調整活動を行う農地利用推進員(仮称)の設置を法定化(1、2名を新規参入サポーターとして新規就農者のコンタクトをワンストップ化)。
(3)権利移動の在り方の見直し
 農地の賃貸借の権利移動は農業委員会の許可制から届出制に緩和。
(4)遊休農地対策・農地転用違反への対応
 遊休農地対策や農地転用違反の処分を実効的に支配するため、農業委員会が首長に対して職権発動を促す仕組みの構築。
(5)都道府県農業会議・全国農業会議所制度の廃止
 農業委員会の自主性・主体性を強化する観点から廃止。

【第2 農地を所有できる法人(農業生産法人)の見直し】
(見直しの方向性)長年にわたり耕作に従事してきた農業者の豊富で有益な経験と新しい世代や異なる地域・業種の知恵・技術・ノウハウをつなぐ。(1)事業要件・役員要件・構成員要件の見直し
▽事業要件(主たる事業が農業)は廃止
▽役員要件は「役員の過半の過半が農作業に従事」から「役員または重要な使用人のうち1人以上が農作業に従事」に緩和
▽構成員要件は農業関係者以外にも出資を認め、出資上限を1/2未満まで可とする。
(2)事業拡大への対応等
 次に掲げる事項を満たすものとして農業委員会の許可を得た法人(農事組合法人、株式会社のうち公開会社でないもの又は持分会社)には、退出に農業委員会の許可を要する等の規則を設けたうえで上記要件を不要とする。
▽一定の期間、農業生産を継続して実施していること
▽地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること。

【第3 農業協同組合の見直し】
(見直しの方向性)各農協が自主的に単独または連携して戦略を策定し、実効的に成果を上げることができる仕組みをつくる。不要なリスクや事務負担を軽減して経済事業の強化を図る。
(1)中央会制度の廃止
 単協が独自性を発揮し自主的に地域農業の発展に取り組むことができるよう「系統」を再構築するため農協法に基づく中央会制度を廃止。
(2)全農の株式会社化
 ガバナンスを高めグローバル市場における競争に参加するため全農を株式会社に転換。
(3)単協の専門化・健全化の推進
 単協が農産物販売等に全力投球し農業者の戦略的な支援を強化するため、信用事業は農林中央金庫(信用農業協同組合連合会)に移管(業務の中止、代理業への移行のいずれかを選択)、共済事業は代理業に移行。
(4)組織形態の弾力化
 単協・連合会組織の分割・再編や株式会社、生協、社会医療法人、社団法人等への転換をできるようにする。
(5)理事会の見直し
 理事への外部者の登用など多様化を図り、その過半が認定農業者及び地域内外の民間経営経験があり実績を有する者とする。


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