【農協改革】中央会制度、検証抜きの結論は理不尽2014年6月19日
今後の議論「組織主導で」全中の冨士専務
JA全中の冨士重夫専務は6月13日東京都内で開かれた農政ジャーナリストの会の勉強会に講師として招かれ、農協改革をめぐるJAグループの今後の取り組みと規制改革会議の答申などについての考えを話した。
◆実態に即し議論を
この日は規制改革会議が安倍首相に答申を行った。「答申」に盛り込まれた「農業協同組合の見直し」のうち、中央会については「農協法上の中央会制度は……現行の制度から自律的な新たな制度に移行する」とされた。しかし、これは自民党の考えをふまえたもので、5月にとりまとめた規制改革会議の「意見」では中央会制度の廃止となっていた。
冨士専務は「農家の所得を向上させ農業を強くさせるにはどういう事業をやっていくのか、農協はどうサポートするのか、見直す規制は何かという議論をしていたと思っていたら、組織形態の変更や中央会制度の廃止(を提言)。まさに理不尽」と批判した。
しかし、答申を受け取った安倍総理は規制改革会議の委員に対して「とりわけ中央会については、農業、地域の農協を活性化させるためにどうあるべきか、ゼロベースで考え直すことが必要。改革が単なる看板の書き換えに終わることは決してない」などと発言。また、林農相も同日の記者会見で「(中央会)制度発足時との状況変化をふまえるという以上、現在の中央会制度とはかなり違うものになると、考えている」と話した。
こうした発言についても「まったく個別項目ごとに議論されていない。監査や経営指導、代表調整機能など、一つ一つの事業についてこれは時代に合わせて変えるべきだ、見直すべきだということがまったくない。なくなったらどうなるかという議論もされていない」と指摘。答申では「農協組織内での検討もふまえて」とされていることから「われわれ自分たちのなかで検証、点検してどう再構築をしていくかを議論したうえで法改正につなげていくということが根底にある」と強調した。 中央会制度の検証すべき点としては、単協の数が少なくなったからといっても経済のグローバル化による経営リスクの高まりや、さらに東日本大震災など県域を超えた災害等の発生リスクなどの時代環境も重要だと指摘した。
◆暮らしと農業は一体
また、今回の改革論議では、単協の自主性を中央会の画一的な指導が縛っている実態に反する主張がなされたが、冨士専務は「行政庁が財務処理基準例や模範定款例など一律に指導し、それをサポートするのが中央会だとしてきた。単協を縛ってきたのは行政庁ではないか。その意味で行政との関係もまったく議論されていない」と話した。 今回の改革は単協の経済事業改革に主眼を置き、組織・事業の見直しを迫るものだ。これに対しては自らの改革も求められるが、冨士専務はJAは地域の暮らしに関わる事業も展開していることを強調し「農業を基軸とした地域の農業協同組合がわれわれのコンセプト。暮らしと農業は一体となったものだと思っている。暮らしの安定、農業の安定、それを協同組合で運営できないかというのが理念。そこに改めて挑戦するということではないか」と改革論議に向けての視点を語った。
(関連記事)
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