農協改革で討議 新世紀JA研究会がセミナー2014年6月27日
自主的JA運動を確認将来像を探る
JA組合長や連合会の役員らの相互研鑚、情報交換を目的とする新世紀JA研究会(代表:藤尾東泉・JAいわて中央組合長)は6月18、19日、千葉県浦安市で第16回セミナーを開いた。全国から約180人が参加し、都市農業と都市農協の役割のほか、農協改革やTPPをめぐる最近の動向についての講演や意見交換を行い、JAとして対応すべきことなどを大会アピールで確認した。
◆「JAのあり方は、組合員の意思で決める」
セミナーでは藤尾代表が、「協同組合は本来弱者の集まりで、その相互扶助の精神は3.11の東日本大震災で実証された。規制改革会議にはこれが通じない。JAのあり方は組合員の意思で決めるもの。セミナーでこれを示したい」とあいさつ。今日の農協をめぐる情勢のもとでセミナーを開く意義を強調した。
新世紀JA研究会のセミナーは年2回、JA持ち回りで開催しており、今回は千葉県JAいちかわでテーマは、「都市農業を守る都市型農協?次世代へつなぐ都市農業への役割と地域社会への貢献?」。
JAいちかわは、都心から30km圏内にあり、管内は都市化が進んでいるが、果樹、野菜の栽培も盛んな地域。「市川のなし」、「船橋にんじん」が地域団体商標(地域ブランド)を取得しており、これを活用した農商工の連携による商品開発にも力を入れるとともに、ドバイ、タイ、マレーシアなど、梨の海外輸出にも積極的に取り組んでいる。
またスポーツを通じて職場の一体感を育てるとともに、渉外担当者などによる野球部の試合は、応援を通じて地域の利用者との接点になっており、JAへの市民理解を深める活動に一つになっている。小泉勉組合長は「地域ブランドを活用した地産地消に努めるとともに、い(生命)ち(地域)か(環境)わ(和)を大切にして協同活動を通じて地域社会に貢献する」と決意を述べた。
農協改革については、自民党農林部会長の齋藤健・衆議院議員、同じく自民党の山田俊男・参議院議員が、それぞれ規制改革会議ワーキンググループの案を押し返したことを報告し、JAグループによる自主的な農協改革の必要性を指摘した。
(写真)
農協改革など今日的な問題で議論したセミナー
◆中央会は行政の補完的機能もつ
農水省経営局協同組織課の山北幸康課長は、講演でやはり現在の農協改革について話し、改革の背景にある環境の変化を強調。特に中央会制度については、昭和29年の農協法改正時の成り立ちに触れ、「行政の補完的機能として生まれた組織であり、そのため連合会や単位農協を指導する権限も与えられた。これまで頑張ってきたが、今は個々の農協が力をつけており、その必要がなくなったためだ」と説明した。
また、TPPの問題では柴山桂太・滋賀大学経済学部准教授が講演で、「グローバルの時代は終わっており、TPPは時代と逆行している」と指摘。輸出でなく、「国民にいかに安全で安心な食料を確保するか、世界的な食料不足が予想されるなかで、30年、50年先を見通した自給率の向上が必要」と、食料安全保障の重要性を強調した。
最後に大会アピールを採択(本文下参照)し、JAいちかわの農産物直売所「ふなっこ畑」を視察した。なお次回のセミナーは今秋、愛知県JA愛知東で開く予定。
【大会アピール】
1.規制改革会議の農業・農協改革案に対する明確な対応と農業振興対策を進めよう。
(1)6月13日に農協の見直しを盛り込んだ答申が規制改革会議から提出された。
企業の農業参入、中央会制度の見直し、全農の株式会社化の検討、信用・共済事業の事業譲渡、准組合員の利用制限など協同組合否定の農業・農協改革答申に対して明確で抜本的な方針を策定し、自主的なJA運動を進める。とくに中央会について、JA・県域・全国域において、中央会監査と連動した比較優位の協同組合らしい特色ある個別経営指導を強化する。
(2)米政策の見直し、戸別所得補償の廃止、企業の農業参入拡大、農地中間管理機構の設置など農政の抜本的転換に対応し、中長期の各JAの地域特性を生かした農業生産への関与など自主的で革新的な地域農業振興計画を策定し実践する。また多面的な役割を持つ都市農業の強化をはかる。
(3)6次化を具現化するJA・連合組織直営の全国的なモデル農場の建設を進める。
2.TPPについて国益を損なう交渉を阻止しよう。
国民との約束である自民党および衆参農林水産委員会が決議した「農林水産分野の重要5品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さない」とする約束を守るとともに、「食料の安定供給」「農業の多面的機能の発揮」などの取り組みについて国民とともに運動を継続する。
3.東日本大震災・脱原発への対応を進めよう
東日本大震災の復旧・復興支援に引き続き取り組むとともに、JAグループとして、放射能汚染による農産物風評被害問題やバイオマス・太陽光など再生可能エネルギーの活用など脱原発に向けた循環型社会づくりへの取り組みを積極的に進める。
4.農畜産物を消費税対象外にしよう
軽減税率・非課税対象品目の設定など社会的弱者への配慮がなされていない。とりわけ生活必需品である農畜産物の生産・販売にかかわる消費税についてはゼロ税率とするよう取り組む。
5.「貯金保険制度」の掛金凍結を図ろう
JAバンク支援基金の掛金凍結に続き、「貯金保険制度」の掛金凍結をめざす
(注)1.JAバンク支援金1203億円、県相互援助積立金1208億円 2.農水産業協同組合貯金保険制度3332億円(対象預貯金残高93兆円:24年度、保険料率0.015%:25年度、保険料収入131億円:25年度)
6.協同組合理念の理解を促進しよう
協同組合理念への理解を深めるため、JAは組合員との関係を総点検し関係性を強化するとともに、組合員・役職員の学習活動を更に強化する。また、多くの国民とともに農業・協同に関する学習活動を強化する。
以上 決議する。
平成26年6月19日
新世紀JA研究会 第16回JAいちかわ大会
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