【TPP】8月4日から日米協議2014年7月29日
TPP交渉について米国のオバマ大統領は11月10日から北京で開かれるAPEC首脳会議に合わせて首脳会合を開きたいとの意向を示しているが、JA全中の分析などによると、米国の中間選挙前に交渉参加国が譲歩し合って大筋合意をめざす状況にはないとの見方が有力になっている。こうしたなか、日米協議は7月に続き8月4、5日にワシントンで開かれる。
◆打開策見えず
日米二国間協議は7月1日に東京で、14、15日にワシントンで開催され、TPP政府対策本部の大江首席交渉官代理とカトラー次席通商代表代行が農産物の市場アクセスで実務者協議を行った。
大江首席交渉官代理は7月15日、「霧が晴れてきた。一時は見えなくなった頂上が見え始めた」、「ここ数ヶ月の間にまとめないと他国ともまとまらない」と話し、合意への意欲を示した。
しかし、同じ時期に行われた自動車分野の非関税障壁に関する日米並行協議で外務省の森経済外交担当大使は7月18日、「まだまだ難しい論点が残されている」と話した。 一方で7月3日から12日までカナダのオタワで首席交渉官会合が開かれた。市場アクセス交渉、政府調達、労働、知的財産などで政治判断を必要としない論点で協議が行われたといわれる。
会合後に鶴岡首席交渉官は「まだまだどう打開していくのかが見えている状況ではない」と多くの課題が残されていることを示すとともに、次回の閣僚会合について「日程を決めるということは、あまりにも現実とかけ離れた議論になることだと各国とも共有している」と話し、合意できなかったことを明らかにした。
◆米国は「いじめっ子」
米国では、オバマ政権が安易な妥協をするのではないかとの警戒感から、日米協議の争点とされる畜産・酪農団体から日本に対して農産物の関税撤廃を求める声が相次いでいる。共和党からは農業団体の主張に即してTPP交渉の妥結よりも前にTPA(大統領貿易促進権限)法案を成立させ、米国の強硬な主張を実現させるべきとの主張も出ている。
一方で強硬な米国の姿勢に対しては、カナダのリッツ農業・農産食品大臣は6月のインタビューで「学校でのいじめっ子のようだ」と批判したという。また、「カナダにとっての乳製品、鶏卵、鶏肉の重要性は、米国の砂糖や綿花と変わらない」と話し、センシティブ品目の譲歩には強い難色を示した。
ニュージーランド(NZ)のキー首相は6月の講演で「日本抜きで前に進まなければならないかもしれない」と日本抜きの妥結も示唆したが、7月7日の日・NZ首脳会談では日本の重要5品目について「ある程度現実的に考えなければならない」と述べた。また、交渉妥結についても「米国の中間選挙前にはないだろう」とも見方を示した。 豪州のロブ貿易・投資大臣は6月の段階だが「共和党関係者は年内は妥結できないとみている」との見通しを語っているという。
◇
このように米国の中間選挙前に大筋合意をめざす状況にないのが有力な見方になっている。また、中間選挙後もTPA法が成立しない限り米国は交渉を進められないだろうとの見方も強い。
ただ、4月の日米首脳会談で日米両国が早期妥結に向けて参加国に働きかけるとしたことから、日米協議で実質的な進展があればTPP交渉全体が前進する可能性も否定できない。
JAグループは引き続き徹底した情報収集と発信を継続していくことにしている。
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