自治体主体の交付金制度を 全国町村会が提言2014年9月11日
農村の新たな価値創生へ
農村の新たな可能性を追求しようと、全国町村会は9月8日、「農業・農村政策のあり方についての提言 都市・農村共生社会の創造?田園回帰の時代を迎えて?」を発表した。少子化を防ぐ砦、再生可能エネルギーの利用、災害時のバックアップなど、農村の持つ価値を見直し、あるべき姿を実現しようというもので、国と自治体のパートナーシップを確立するなかで、地域の農政を地方自治体が主体的に取り組むため、しばりのない「農村価値創生交付金制度」(仮称)の創設などを提案している。
◆あるべき農村の姿 5つの条件
全国町村会は2013年8月に「今後の農林漁業・農山漁村のあり方に関する研究会」を設け、大きな変革期を迎えている農業政策について検討し、この結果を提言としてまとめた。
背景には高齢化、人口減少、後継者不足、そして農業所得の減少と、厳しさの増す農村にあって、農村回帰の新しい潮流が生まれていることがある。農産物直売所の増加やグリーンツーリズム、地域資源を見直す地元学の定着など、農村の潜在的な価値を再評価し活用しようという動きが強まっている。
提言では、あるべき農村の姿として、[1]地域資源を有効活用した農業が持続的に行われていること、[2]循環型社会であること、[3]集落の機能が維持され、開かれていること、[4]若者や女性が活躍できる場であること、[5]都市との交流が継続していることの5つの条件を挙げる。
(写真)
「農業・農村政策のあり方につえての提言」を発表する全国町村会(東京都千代田区全国町村会館で)
◆「地域農業マネジャー」の設置を
これを実現するための政策は、国が担う「競争条件整備政策」と、自治体が担う「農村価値創生政策」を分け、それぞれの役割を明確にするよう提案。つまり自治体が土地、農業経営、多面的機能、6次産業化、食農教育・環境教育、都市住民・消費者との交流などに関する政策を担い、国は関税の設定・維持、直接支払制度の設計、経営安定政策、基幹的用排水路の整備・保全、食品の安全・安心確保や食品表示の制度構築などを担当する。いわばハードとソフトの政策を分けたものだといえる。
こうした自治体の政策を実現するための財源として提案する農村価値創生交付金は、従来の国庫補助の仕組みから移行する制度として位置づける。また、自治体が、交付金を主体的に使い、政策を遂行ための「地域農業マネジャー」の設置も提案している。
◆町村自ら政策立案能力高めよ
全国町村会の藤原忠彦会長は「地域の資源や知恵を生かせば、農村に活力を呼び戻せる」と、提言の実現に期待する。
また研究会の座長をつとめ、提案をまとめた小田切徳美・明治大学教授は農村価値創生交付金制度創設の提案について、「町村自らの政策立案能力を問われることにもなり、農村と共に歩んできた町村の“覚悟”の表明でもある」と、町村(長)の決意を求めた。
※提言全文は、全国町村会ホームページで公開されている。
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