農協改革で日本政府と連携 米国商工会議所2014年9月18日
在日米国商工会議所は同会議所の正式の意見書として今年5月、「JAグループは日本の農業を強化しかつ日本の経済成長に資する形で組織改革を行うべき」を公表している。JAグループの金融事業の規制強化を求めるなどの内容で、同意見書の有効期限を来年5月までとし、今後、日本政府と規制改革会議と「緊密に連携し成功に向けて...支援を行う準備を整えている」と強調している。農協改革に米国経済界の意向が透けてみえる。
◆員外利用制約を提言
意見書をまとめたのは在日米国商工会議所の保険委員会と銀行・金融・キャピタルマーケット委員会。
JAグループの金融事業をターゲットに、一定割合の員外利用が認められていること、准組合員制度があること、JAグループ全体に独占禁止法の特例が適用されていることなどを挙げ、他の金融機関と平等な競争関係が確立されなければ、員外利用などを制約すべきと提言している。
さらに日本政府に対して「JAグループの金融事業への優遇措置は政府が日本の金融・資本市場の健全な育成を促進する能力を損ない、金融改革の下でこれまで達成した成果を脅かすことになる」と強調している。
◆JAの革新プラン批判
そのうえで規制改革会議の農業WGが5月に准組合員の事業利用を正組合員の2分の1以下とすべきと意見をまとめたことについて、同意見書は「歓迎」を表明、金融庁規制下の金融機関と平等な競争環境を整えるさらなる措置をとるよう求めている。
外資系金融機関の利益追求要求なのだが、今回は農協改革にからめて「JAグループは本来の使命に専念し農業を成長分野に発展させることに貢献すべき」と訴える。ただし、JAグループの「営農・経済革新プラン」については批判する。 その批判のポイントは、たとえば地域づくりのための「農業・地域を支えるパートナーの拡大」といった取り組みだ。これを「准組合員の拡大等歪んだ構成員体系が一層進む恐れがある」と指摘。農業振興などに関心はなく、まさに農協改革の議論をきっかけに市場を獲得しようとする外資系金融機関の不満と本音が表れているといえる。
同意見書は日本政府も農業改革は経済成長に欠かせないと言っているではないかとばかりに農協改革の必要性を強調してはいるが、その日本政府は「世界でいちばん企業が活躍しやすい国」も成長戦略に掲げる。同意見書の結びは「日本政府および規制改革会議と緊密に連携し、成功に向けてプロセス全体を通じて支援を行う準備を整えている」だ。農協改革に米国経済界の意向が働いていることも注視しなければならない。
(関連記事)
・【農業改革、その狙いと背景】農業への参入企業が食料生産を担うか? 小池恒男・滋賀県立大学名誉教授(2014.09.10)
・【農業改革、その狙いと背景】米輸出に「日本農業の希望」はない 大泉一貫氏の「稲作偏重農政」への反論 村田武・九州大学名誉教授、愛媛大学客員教授(2014.09.02)
・【農業改革、その狙いと背景】暮らしに向けられる規制改革「ドリルの刃」 増田佳昭・滋賀県立大学教授(2014.08.08)
・【農業改革、その狙いと背景】農政・農協「改悪」の正体 鈴木宣弘・東京大学教授(2014.08.04)
・農協改革とJAグループの取り組み 冨士重夫・JA全中専務理事に聞く(2014.07.11)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日