「農協は農業関係に専念を」 西川農相2014年11月12日
西川公也農相は11月11日に会見で農協改革について「農協は農業者の所得増大のために専念してほしい」と指摘、JAグループが自己改革の方向として改めて打ち出した「農業振興と地域振興が一体となった取り組み」と、考え方に相違があるとの認識を示した。
農業協同組合が現在地域で果たしている役割をめぐり、現場の組合員と根本的に食い違う認識で農協改革が検討されるおそれもあり、注視が必要だ。
◆監査、あり方で相違
JA全中の萬歳章会長らは11月7日、6日に決めたJAグループの自己改革について西川農相に説明した。その後、西川農相は記者団に対して政府側の考えとずれがあることを表明していたが、11日の会見では▽全中の監査権限、▽農業者の職能組合としての農協の2点に政府との相違点があることを示した。
西川農相は「官房長官とは常々意見交換をし、官邸の考え方も聞いている」としたうえで、監査については「官邸側では強制的な監査権限、農協法上のものは置かなくていい、こういう考え方に変わりありません」と話した。
中央会制度については「自律的な新たな制度でスタートすることを与党も決めた、官邸も決めた」が、「ちょっと解釈がお互いに自分の都合のいいように解釈している面はある」とし、「官邸側はあくまでも農協法に基づく強制的な監査権限はないほうが単位農協の活動の自由度が高まるだろう、こういう判断をしている」と強調した。
◆“地域組合”は認めず
全中の組織形態については一般社団法人化を官邸が判断しているかどうか「申し上げる立場に今のところない」としたうえで、「監査権限が持てなくなったらどういうあり方がいいのか、やはり与党のみなさんとも相談しなければならない」としたが、官邸側の意向は「強制的な監査権限を農協法上与えない、これは終始一貫変わってません」と強調した。
また、相違点としてJAグループの自己改革では「地域全体のあり方も農協が引き受けるみたいな話が書かれておりましたが、そこは行政のやる話と農協がやる話と一緒にしないほうが農協の役目はぼけないでいいだろう。農業生産に特化してほしい、こういうことでお願いしたい」と述べた。
◆与党と官邸 議論にズレ?
JAグループは農協が地域組合の性格も持つとして地域振興の役割にも全力を尽くすと改革方向を打ち出した。
西川農相をはじめ官邸の認識とも異なることも示されたが、6月に与党の論議をとりまとめた森山裕現TPP対策委員長(前農協問題PT座長)は本紙の今年7月インタビューで「農協改革の目的は、やはり農家の所得向上、もうひとつは地域サービスの安定的な提供をどう農協が果たしていくか」と述べているほか、「自民党で一時、地域マネジメント法人を作って地域政策をそっちで受け持ってはどうかという議論をしたこともあった。現実にはなかなか難しい。農業が多面的な機能を果たし続けるという意味からも、そこは農協にがんばってもらうことがいいのでは」と話している。
こうした認識をふまえ、今後の与党内の議論が注視される。
(関連記事)
・「農協改革」テーマに研究会 農協研究会(2014.11.11)
・政府の規制改革に異議 協同組合学会(2014.11.11)
・JAの"大義"発信を 新世紀JA研究会顧問・福間莞爾(2014.11.06)
・地方創生担う中央会を JA代表が自民会合で主張(2014.11.06)
・中央会解体はJA潰し JAは何を主張すべきか 石田正昭・三重大学招へい教授(2014.11.05)
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日