農業者の労災加入を JAの支援体制呼びかけ2015年1月28日
JA全中が農作業安全の研修会
増える農作業事故を防ぐため、JAグループは、組織を挙げて農作業安全対策に取り組んでいる。JA全中は1月26日、東京・大手町のJAビルで、JAの担当者を対象に「農作業安全・労災保険対策推進研修会」を開き、特に先進的な取り組みを行っているJAグループ鹿児島の事例報告をもとに意見交換した。全国のJAから、担当者など80人が参加した。
◆最優秀賞は北海道農作業安全運動推進本部
研修会に併せて平成26年度農作業危険個所改善コンクール受賞組織の表彰を行った。農水省やJAの全国組織からなる全国農作業事故防止対策連絡協議会主催のコンクールで、農作業安全について、成果のあった具体的な活動を表彰し、農作業の安全についての意識を高めようというもの。
今年度は北海道農作業安全運動推進本部(札幌市)、農事組合法人さわだ(新潟県)、JA鹿児島県中央会担い手・法人サポートセンターおよびJAそお鹿児島農家経営対策部(TAF)など、11組織が表彰された。(文末に受賞組織一覧)。
受賞団体の一つ、JAグループ鹿児島のサポートセンターは中央会・各連等の職員15人で構成され、担い手・法人への巡回と、営農対策の2つの機能を持つ。このセンターが中心となって中央会内に労働保険事務組合、同労災保険加入組合を設置し、各JAの労災担当者と連携して農作業事故の掌握、保険制度加入手続き等に当たっている。
労災保険は、労働者を雇い入れている農業経営者には原則として加入が義務付けられているが、個人経営者や農事組合法人の農業従事者は、特別加入団体として、任意加入になっている。
同県JAグループの取り組みを支援している社会保険労務士の飯伏純也氏は、「一般農家を加入対象にするという視点がなく、また内部にしっかりとした事務処理体制が確立されていなかった」と、これまでの問題点を指摘する。
(写真)
農作業安全・労災保険対策の研修会
◆JAにはリスクも負担もない
農事組合法人の場合、実際の作業者は法人の組合員であり、労災の対象は雇用者だと考えられてきた面が強い。このため同サポートセンターは、大規模法人組合員を定例巡回し、特に労災保険強制適用となる法人経営、常時5人以上雇用の農家などに対し、労災加入を呼び掛けてきた。
JAそお鹿児島は、平成10年に設置したTAF(営農経済渉外担当)が、15年間で12万件あまりの農家巡回を行い、43経営、222人の加入を達成した。これは同県農協労働保険事務組合の全加入者数の29%に当たる。なお、平成26年12月末の鹿児島県全体の加入は9JA176農家で、加入者は767人となった。
こうした取組みの結果、同事務組合加入者の労働災害は3年間で44件発生し、うち42件が労災に認定。同センター営農企画課の桐原章課長は「事務組合に加入すると、JAにリスクがあるように考えていると勘違いもあるようだが、リスクも負担もない。要はトップの決断にある」と、未加入のJAに加入を働きかける考えだ。
◇
【平成26年度農作業危険個所改善コンクール受賞組織】
○最優秀賞
北海道農作業安全運動推進本部(札幌市)
○優秀賞
農事組合法人さわだ
○特別表彰
JA鹿児島中央会担い手・法人サポートセンター、JAそお鹿児島農家経営対策部(TAF)
○優良賞
▽JAいなば(富山県)
▽JAとぴあ浜松(静岡県)
▽才川七営農組合(富山県南砺市)
▽JA熊本経済連
▽JAみやぎ仙南 角田市農業機械士会
▽JA埼玉中央(埼玉県)
▽愛知県農作業安全対策推進協議会
○特別賞
江刺地域農業機械銀行受託者協議会(岩手県奥州市)
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