農協改革、ICAも危惧 グリーン会長インタビュー2015年2月25日
日本協同組合連絡協議会(JJC)が国際協同組合同盟(ICA)との連携セミナーを2月12日、東京都内で開いた。テーマは「協同組合の役割と規制改革の影響」。来日したICAのポーリン・グリーン会長とジャン=ルイ・バンセル理事らは同セミナーで講演するとともに、単協訪問、農水省表敬、外国特派員協会での記者会見なども行い、「農協改革」についての情報収集とともに、ICAとしての基本姿勢も発信した。グリーン会長は農協改革について「協同組合の成長にさらに資するような、決してダメージを与えることのない結論を望みたい」などと話しICAとして連携を表明した。
協同組合は誰のもの?
離日する直前の2月13日、グリーン会長に話を聞いた。会長は協同組合とは組合員のものであることを改めて認識すべきだとして、農協法改正案など改革の具体化にあたっては政府はJAグループとさらに協議をすることを望みたいなどと話した。
――今回の訪日の感想をお聞かせください。
(農協改革の)動きの詳細について聞ける機会となりました。政府の関係者とも話ができました。
はっきりしたことは、まだ詰めなければいけないことがたくさんあるということです。これからもJA全中が政府と協議をしていくときに、国際的な経験を提供できると思いました。
また、非常によく分かったことは萬歳会長、そしてJAグループが未来に向けて達成したい(農業所得の向上や地域貢献などの)目的です。ほかの協同組合もJAグループをサポートしていることもよく分かりました。
◆悪魔は細部に棲んでいる 一方で、安倍総理は施政方針演説できわめてはっきりと、かつ大胆に(農協改革を断行すると)言っていました。ただ、それはわれわれを勇気づけるものではなかったと思います。妥協を許さない厳しいもので、首相にはディスカッションや妥協しようという姿勢は感じられませんでした。これについては私の受け止め方が間違っていることを望みますが…。
英国には、悪魔は細部に棲んでいる、ということわざがあります。単協のみなさんとも話しましたが、まだ納得しておらず詳細について聞きたいと思っていることが分かりました。ですから、具体化に向けたディスカッションでは政府がきちんとJAグループと話をすることを望みます。
――改めて「協同組合」とはどういうものと考えるべきでしょうか。
協同組合とは、彼らのもの、つまり、組合員のものだということです。60年、70年の間に組合員が得てきた便益、支援といったものを失わないようにするには、組合員がこのことを政府に対して言っていく必要があります。組合員が得てきた便益とは、たとえば営農指導や販売・購買事業であり、病院、葬祭、ファマーズ・マーケット、信用、共済事業などなどで、私たちにはこうした事業が必要で、私たちは支持しているんだと言わなければなりません。JA全中のリーダーシップだけで、組合員の支持なしには議論に勝つことはできません。
(写真)
小泉昭男副大臣(左)を表敬訪問したグリーン会長、バンセル氏
◆意思決定は組合員に
――今回の農協改革では農協に対する監査が問題にされたり、あるいは経営のプロを理事に入れるべきといった点も問題になっています。今後、どう考えるべきでしょうか。
協同組合は普通の人たちが所有している組織で会社とは違います。これを理解しなければなりません。
組合員にとっては、協同組合というものが協同組合として運営されているかどうか、そのためのきちんとしたガバナンスが働いているか、理事の選出がきちんと行われているか、などが重要です。
商業的な監査法人は数字のことしか指摘しません。しかし、協同組合の場合、組合員はそれ以上のことを知りたいと思っています。もしJA全中のように独自の監査システムを持っているのであれば組合の状態はどうか、統治がきちんと働いているかなどについてコメントできます。
これが、きちんと協同組合が運営されているという安心を組合員に与えるものなのです。協同組合のなかでのチェック・アンド・バランスは大事なことで、これを外してしまったら組合員が満足しなくなり、事業がきちんと行われているのかどうかについて懸念が高まるでしょう。
協同組合にとって重要なことは組合員の声が意思決定のトップにまで届くということです。世界中の協同組合で経営のプロという人が理事会に入ることはありますが、意思決定にあたっては組合員が基本的には支配的でなければなりません。それが大事な原則です。
これは、これから日本で議論しなければいけないことです。私たちが気にしているのは協同組合原則に従っているかどうかです。すなわち、組合員によって所有されコントロールされるか、です。
詳細は日本で議論してもらわなければなりませんが、その結果出てきた最終的な合意が協同組合原則を尊重しているかということについて、ICAとしても確認していく必要があると思っています。
(写真)
2月12日のセミナーの様子
(関連記事)
・「所得向上と地域活性化、着実に」萬歳全中会長(2015.02.25)
・農協を「分割して統治せよ」という暴挙(2015.02.09)
・交渉状況開示を TPPで萬歳会長(2015.02.09)
・【農協改革】再検討を政府・与党に要請 全中(2015.02.06)
・神を信じた人も、信じなかった人も(2015.02.02)
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
変革恐れずチャレンジを JA共済連入会式2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日