食料自給力を指標化 新基本計画骨子示す 農水省2015年2月27日
今年3月に閣議決定される予定の新たな食料・農業・農村基本計画では、これまでの食料自給率目標に加えて、食料の潜在生産能力を示す「食料自給力指標」が盛り込まれる。また、農業者の所得向上目標をどうも盛り込むかも焦点となっている。農水省は2月13日に開催された食農審企画部会(第16回)に基本計画の骨子を示した。
食料自給力について、農水省は「その時点におけるわが国の食料の潜在生産能力を評価する指標」と説明している。指標を示す意義について、豊かな食生活が維持できている一方、食料の潜在生産能力の低下も懸念される状況にあることから、食料について国民が認識を深めることを促進できるなどとしている。
農水省は英国が食料自給力を試算していることから、これを参考に指標化することにしている。英国では国内生産のみで国民1人1日あたりに供給できるカロリーを作付け品目別にいくつかのパターンに分けて示している。
日本もこれを参考に農地を最大限活用することを前提にして、栄養バランスを考慮して主要穀物(米、小麦、大豆)を中心にした作付けパターンから、いも類を中心に熱量効率を最大化した作付けパターンまで4つを示す方針だ。
ただ、いも類を中心に作付けすれば供給可能なカロリーは高くなると考えられるが、現在の食生活とはかけ離れたもので国民に実感され正しく理解されるかどうか、企画部会でも指摘が出ている。 また、試算の前提は▽生産転換に要する期間は考慮しない、▽必要な労働力は確保されている、▽飼料以外の生産資材などの生産要素と施設などは確保・機能維持されていることが前提となっている。こうした前提を置いた現実とは切り離された条件で試算されたものという理解を広めることも課題になる。
そのほか関連指標として農地・農業用水等の資源の状態やや農業就業者なども示す。また過去からの食料自給力の推移も示す方針だ。食料自給率と同じように年に一度、指標として示される見込みだ。
一方、食料自給率目標はこれまでと同様、カロリーベースと金額ベースで目標を設定する。具体的な数値はまだ示されていないが、前回の基本計画で設定したカロリーベース50%の目標は現在の40%と大きくかい離していることから「実現可能性」を考慮した数値を設定すべきとの考え方が強調されている。
現行計画の検証を
食料自給率目標の設定をはじめ企画部会では「現行計画の総括」や「施策の評価」を新たな基本計画にはしっかり書き込むべきとの意見が多く出されている。
そのほか今回の基本計画は人口減少に向かうなかでの基本計画という視点を打ち出し、農業人口の減少の深刻化を見据えて、人材育成・確保策をしっかり盛り込むべきといった意見も出ている。また、自給率向上のために国民の食料消費の課題も重要だが、農業生産力の課題に重点を置くべきとの指摘もある。合わせて飼料用米生産を安定して継続させるための基本計画での位置づけも期待されている。
2月中にも新基本計画の原案が示される予定となっている。
【新基本計画の骨子】
(情勢評価)
○高齢化や人口減少による国内市場の縮小、農地の維持管理等が懸念。
○新興国の経済成長などので世界の食料需給への影響。
○消費者ニーズの多様化○高齢化、企業参入など農業構造の変化。
(施策の基本視点)
○農業・食品産業の成長産業化。
○中長期的視点で経営展開できるよう施策の安定性確保。
○マーケットインの発想で消費者ニーズに対応等。○農業者の所得向上と農村のにぎわいの創出。 (目標・展望)
○食料自給率目標、自給力指標、農地面積見通し、構造展望、経営展望等
(講ずべき施策)
○食品の安全と消費者の信頼確保。
○グローバルマーケットの戦略的な開拓。
○女性の能力発揮。
○担い手への経営安定対策の推進・検討。
○地域資源活用による雇用と所得の創出。
○多様な分野との連携等。
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