農業者の所得向上、JA経済事業を支援2015年3月25日
JA全農27年度事業計画
JA全農は、平成27年度の事業計画を決めた。
27年度事業計画の基本的な考え方は、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を受けて策定したJAグループ自己改革のなかで、農業者の所得向上および生産基盤の維持・拡大ならびにJA経済事業の支援に資する全農の基本的な戦略として明確化された、
▽プロダクトアウトからマーケットインへ事業を転換
▽生産から販売までのトータルコスト低減の取り組み
▽農産物生産にかかる多様化する農業者ニーズへの柔軟な対応
にもとづいて、国産農畜産物の消費拡大に向けて、新しい食べ方や加工商品の開発・提案、業態別実需者ニーズに即した商品の提案、広域共同利用施設の設置、新しい産地づくりができる体系的な人材の育成などを補強し、今次3か年計画の最終年度でもあり、実践を加速させていくことにしている。
◆取扱高4兆7600億円
事業別の主な実施具体策は以下の通り。
【米穀農産事業】
販売力の強化として、米の需給が緩和基調にあるなか、▽播種前・収穫前・複数年の事前契約や中食・外食の大手実需者との直接契約の拡大。県産にこだわらない精米取引きなど個別申込取引拡充に取り組む。
また、需給変動に大きく影響されない安定取引きの構築に向けた大手実需者とJAを結ぶ業務用米の多収穫品種の契約栽培的取引の拡大にも取り組む。
そのほか、付加価値をつけたパールライス精米販売の拡大、インターネット通販や小口業務向け販売など消費者接近型事業を強化する。
飼料用米については、JAと連携して大規模生産者などを中心にした飼料用米の生産提案に取り組むとともに、JA・生産者の価格変動リスクを軽減するため、生産者からの直接買取を実施する。
計画目標としては
▽大手実需者との播種前・収穫前・複数年契約27年産米140万トン(26年産見込91万トン)
▽パールライス精米販売(JAグループ卸計)80万トン(26年度見込73万トン)
▽大規模生産者対応強化や精米販売拡大を通じた取扱数量300万トン(26年産見込280万トン)
▽飼料用米の取扱60万トン(26年見込7万トン)
▽国産でん粉の取扱22万トン(同20万トン)
【園芸事業】
生協、量販店、食品メーカー、加工・業務事業者など、実需者ニーズにもとづいた生産提案・支援や契約取引など、マーケットインを起点とした事業への転換を加速する。
また、カット野菜や惣菜など輸入品が一定のシェアを占める分野については、原料野菜の供給対策として、この5月に稼働予定の(株)グリーンメッセージへの安定供給や県域を越えたブロックごとの実需者開拓を進めていく。同時に、グループ会社や提携先企業を通じたカット野菜やチルド野菜など加工事業への積極的な展開を図っていくことにしている。
さらに、加工・業務用ニーズに応じた適正品種の選定や栽培暦の提供、農作業受委託や肥料・農薬・資材のセット提案など、営農・生産資材部門と連携した総合的な生産支援を強化する。
そのほか、全農グループ直販事業の機能強化と取扱拡大や国産成果物の消費拡大にも引き続き取り組んでいく。
直販事業の事業分量目標は3100億円(26年見込3000億円)、加工・業務向け青果物の取扱400億円(同370億円)となっている。
【営農販売企画】
農業生産基盤の維持・拡大に向けて、大規模営農における経営モデルの水平展開など省力・低コスト・生産性向上に資する営農関連技術の開発・普及に取組むとともに、飼料用米の生産流通対策の確立をはかる。また、地域生産振興の促進に向けた人材育成プランの策定と営農支援体制の整備に取組む。
JAグループの総合力発揮に向け、TACの活動の高度化をはかり、マーケットインを起点とした生産・販売のマッチング、大規模担い手経営への事業対応を強化する。
販売力強化では、全農グループ直販会社5社と連携して売上拡大(26年の6420億円から6700億円へ)をはかるとともに、輸出の拡大(同44億円から50億円へ)に取組む。
【生産資材事業】
トータル生産コストの低減に向けて、土壌診断にもとづく効率的な施肥や鉄コーティング湛水直播栽培など、省力・低コストを支援する技術・資材の普及をすすめる。
また、物流の広域化による低コスト流通体制の構築や肥料満車・フレコン直送、担い手直送規格農薬など担い手への個別対応を強化する。
そのほか、トマト栽培実証施設「ゆめファーム全農」を通じた大規模・高度な施設栽培技術のノウハウの蓄積や農機やプラントの検定・認証制度の整備などを通じて、生産現場のニーズに応える人材育成にも積極的に取り組んでいく。
【畜産事業】
系統産地基盤を活かした特徴商品の拡大や外食店舗の多店舗化など、消費者に直接訴求する販売事業を強化する。また、海外では、国・地域別販売戦略を策定し「全農和牛」の輸出を拡大する。
生産面では、生産性を向上させる革新的な技術の開発・普及をすすめるとともに、海外現地法人を活用した集荷・保管能力の拡充、海外サプライヤーとの提携強化をはかり、飼料原料の調達力を強化する。
酪農では、総合乳価の維持・向上に向けて生乳の広域調整など全国的な需給調整機能を強化するほか、牛乳・乳製品の販売力強化に取組む。
【生活関連事業】
地域のくらしを支援するライフライン店舗対応、ネット宅配事業による買い物支援の強化、コンパクトセルフSSの設置促進など地域ニーズに応じた商品・サービスの提案を拡充する。
国産原料にこだわった全農ブランド商品の開発・販売チャネルの拡大に取組む。また、Aコープ店舗に直売所を併設した新業態店舗の出店拡大をすすめる。
また総合エネルギー事業の確立に向けて、電力小売事業にも取組む。
【取扱計画】
以上のような各事業の取り組みによる、27年度の取扱計画は、営農・生産資材事業の取扱いは増加するが、米の販売価格や燃料価格の低下などにより、全体の取扱高は4兆7600億円となっている。各事業ごとの取扱高は以下の通り。
▽米穀事業:8126億円(前年比94%)
▽園芸事業:1兆1323億円(同98%)
▽畜産事業:1兆0884億円(同98%)
▽営農・生産資材事業:8693億円(同102%)
▽生活関連事業:8565億円(同86%)
▽合計:4兆7681億円(同95%)
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