10年後の生産目標示す 農水省 果樹振興基本方針2015年5月7日
農水省は果樹振興基本方針を策定し、このほど公表した。それによると、10年後の果樹全体の生産量は約309万tで、現在より微増と想定。そのための栽培適地、果樹経営の指標などを示した。また適正数量の安定供給のため、産地間、産地と消費地の「連携」の必要性を強調している。
この基本方針は、果樹農業振興特別措置法に基づいて定めた今後の果樹農業の基本的な方向を示すもので、おおむね5年ごとに見直しを行っている。
果樹に対する基本的認識は、輸入果実の増大、食習慣の変化などで全体の生産量が減少する中で、品目・品種の多様化が進んでいること。また嗜好性の高い果実は供給量が増加した場合の価格下落が大きい半面、供給量が減っても価格への影響は小さいという特徴があり、今後、強力な産地間の連携が必要としている。
具体的には、(1)ブランド化、規模拡大、労働力の確保等、産地内の連携、(2)果実の消費・需要拡大のための産地と消費地の連携、(3)高品質果実を周年的に安定供給するための産地間連携、(4)生産・流通・加工・販売・輸出等の各分野間の連携―の4つの連携を挙げる。
その上で、果樹全体の平成37年度の生産目標を309万tと設定。これは現在の301万tに比べ8万tの増。いずれの品目もほぼ横ばいだが、主力品目ではリンゴ、ブドウ、モモ、柿がやや増えている。栽培面積は22万6000ha。生産性の向上で1万1000haの減少になっている。
これに併せてあるべき経営モデルを設定。それは消費ニーズの高い優良品目・品種を導入し、かん水やマルチシート等で先進的な技術を使い、さらに加工、直売所やインターネットを通じた販売等の6次産業化を組み合わせたものになっている。
例えば温州みかんの場合、極早生、早生、普通みかんの組み合わせで、マルチドリップかんがい等を導入した3.5haの経営を想定する。この経営の粗収入2262万円、経営費1446万円、所得816万円としている。
また生産者の高齢化に対しては、新規就農者の支援で対応。このため、国は就農のためのロードマップ「果樹経営キャリアプラン」(仮称)を策定し、それぞれのステップごとに、施策を有効に活用した場合に実現可能となる経営モデルを示す。
一方、消費・需要拡大では、「毎日くだもの200g運動」。「ファイブ・ア・デイ運動」などで、特に若い世代に果物消費を呼び掛ける。また利便性・値ごろ感等の消費者ニーズに対応したサプライチェーンの構築を挙げている。コンビニエンスストアにみられるような少量で安価な商品の多頻度購入への対応や地産地消と結びつけた学校給食への供給などに取り組む。
このほか、加工・業務用で国産果実の利用を挙げている。国内需要の約6割が輸入果実であり、その6割を果実加工品が占める。国は「加工・業務用国産果実生産・流通方針」(仮称)を策定し、果実加工品の国産シェアの拡大を目指す。
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